ガンバレ健太!

手の離れた息子に叱咤されてるダメ親父の日記

「俺のせいだ」

2023年09月05日 12時50分47秒 | 息子
二年前の9月中旬、コロナワクチンの第一回接種が近づくにつれ、息子が不安を口にするようになった。
「何か嫌な予感がする。若者は打たんより打つほうがリスクあるんじゃないか」と言って直前にキャンセルした。私はまたいつものように神経質なこと言っとるなあと取り合わなかった。
今期終盤星を拾い12勝6敗で四位となり、次回二番手の好位置だったので、私は「ぐずぐず言っとらんで早く打ってきて将棋に集中しんか」とけしかけた。

一週間後接種したのだが、そのあとから胸の不調を訴えるようになった。
徐々に痛みが増し二週間経ったところで我慢できずに医者に駆け込んだ。診察の結果、すぐに総合病院に行くように言われ、手配してもらったタクシーで市民病院に向かった。

家にいた私は、息子が「市民病院に向かう」と電話があってからなかなか連絡がないことで不吉な予感がしてきた頃、「説明があるらしいで直ぐに病院に来て」と苦しそうな声で電話がきた。
私が病院に着くと深刻な雰囲気の中、私一人に循環器の医師の説明が始まった。「心筋炎です。すぐに入院してもらいます」と言われた。
まだ深刻さが分からなかった私は息子の将棋を説明し、「三週間後の対局は間に合いますか?」と聞くと、「そんなこと言っている場合ではないです。ここ二三日が山場です。劇症型心筋炎に進行したら、生死は半々です」

さっきまで元気でいたのに・・・。
慌ただしい中、息子は看護師に車いすを押されHCU(高度治療室)に入っていった。まだ実感のない私は「健太、頑張れよ」と言うのがやっとだった。

次はHCUの担当医による説明だった。同じような説明だったが、「こういう(コロナの)時期なので息子さんにはもう会ってもらえません。会えるのは退院した時です」と言われ気が動転した。
会えるのは治ったときかダメだったとき。もう息子と会えないと思ったら涙が出てきた。医師の前で泣いた。その姿に同情してくれたのか「最後に一度だけ会いますか?」と言ってくれた。
私は「妻にも会わせたい」と言って、次の日に会えることとなった。

家に帰ると仕事から帰ってきていた妻が、「どうして健太なの」と泣き崩れた。
お通夜みたいな日々が始まった。毎日夫婦で息子の将来を悲観しては泣き、過去を振り返っては泣いた。
とにかくどんな体になっても将棋ができなくなっても、生きて帰ってきて欲しい、それだけだった。

ウイルス感染による心筋炎は根本的な治療手術はなく、息子の生命力だけが頼りだった。
入院して二三日は一進一退だったが、四日目からは数値も明らかに改善に向かい本人の気分も優れてきた。
結局HCUに10日間、一般病棟に8日間の入院で後遺症もなく退院することができた。

退院してきた息子に「いつものように何も調べず打って来いって言って悪かった。俺のせいだ」と謝った。
息子は「いや、自分の判断で打ったし、もし最初にキャンセルせずに打っとれば、こんなことにならんかったかもしれん」と言ってくれた。






(決してワクチン接種を否定するものでも肯定するものでもありません)





最新の画像もっと見る

コメントを投稿