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フランス革命の進路(1)

2015-11-16 00:00:22 | 政治史・思想史

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岩波ジュニア新書の中でも指折りの名著と言われる遅塚忠躬『フランス革命』[1997]を読み返す。シニアにも大変勉強になる。

 

旧体制Ancien Regimeの特徴は、(1)身分制、(2)領主が貢租を徴収する領主制、(3)統治権が国王に集中していた絶対王政にある。「身分制」「領主制」は騎士としての義務を果たす代わりに免税特権・貢租徴収権を認められていた中世の名残であり、絶対王政下においても秩序維持のために容認されていた。革命直前の18世紀フランスの人口は約2700万人。特権階級である聖職者(第一身分)は12万人、貴族(第二身分)は40万人。残り98%の平民(第三身分)のうち、全体の10%が都市ブルジョワ(貿易業者・金融業者・富裕な商工業者・大地主・知識人等)、都市民衆10%。全体の13%が農村ブルジョワ(広大な農場経営者。時に領主の年貢聴衆も請け負う)であり、資本主義の進展から成長著しく、65%の下層農民との貧富差は拡大していた。

ルイ14世以来の浪費、戦費、貴族たちへの年金支給に加え、アメリカ独立戦争(1775〜1781)への20億ルーブルの援助も加わり、革命前夜のフランス財政は破綻していた。財政総監カロンヌは身分を問わない貢租として「土地上納金」の創設を計画したが、1787年、貴族の意見を代表する「名士会議」がこれを拒否した。

ここで個人的に気になるフランス同時代人の生没年を。モンテスキュー1689生〜1755没、ヴォルテール1694生〜1778没、サド1740生〜1814没。啓蒙思想家最大の偶像ルソーは、1712年生まれ。フランス革命の思想的象徴とされ、ロベスピエールもその信奉者だった。フランス政府からは危険人物と、ローマ教皇庁からは異端と宣告され、孤独な隠遁の中、ヴォルテールと同じ1778年に生涯を終えている。

閑話休題。王権の制限を目論む貴族はさらに全国三部会の召集を要求し、1788年8月、ルイ16世は翌年5月の開会に同意した(貴族革命)。1789年、フランス全土では、地区ごと・身分ごとに議員選出のための選挙人集会が開かれた。同年1月に書かれたパンフレットとして、シェイエス神父の『第三身分とは何か』がある。選挙やこの時に作成された「陳情書」を通じて、第三身分が政治的に目覚めた。貴族は旧来どおり、身分別に会議を開いて各身分が1票ずつという採決方式を主張した。これに対して第三身分が異議を唱えたため、ルイ16世は、第三身分の議員倍増を承認した。

1789年5月5日、王宮のあるヴェルサイユで、1614年以来に全国三部会が開会された。選出された第三身分議員はもっぱらブルジョワの代表であった。第三身分議員が「身分別投票、身分別審議」を拒否したため最初から紛糾し、6月17日、第三身分議員は自らを「国民議会」と名乗り、6月20日、閉鎖されている議場に代えて球技場に集まり、憲法制定までは解散しないことを誓った。位の低い聖職者議員や自由主義貴族議員からも国民議会へと合流するものが増え、6月27日、国王は、貴族議員等に国民議会へ合流するよう勧告し、国民議会を承認した。7月9日、国民議会は憲法制定国民会議と改称し、憲法制定に着手した。

民衆は、三部会での貴族の失敗を見て、保守的な貴族が第三身分に武力での反撃を加えるだろうとの「貴族の陰謀」観を抱いた。現に、宮廷と保守的貴族は、18,000の軍隊をヴェルサイユに集結させ、武力で国民議会を解散させようと計画していた。7月14日、パリの民衆は蜂起し、専制の象徴とされていたバスティーユ監獄を占領した。民衆の「大恐怖」は地方にも波及し、農民たちが領主を襲撃して徴収台帳を焼き捨てたり、高利貸し等を襲う騒動が頻発した。この事態を見たブルジョワである第三身分議員は衝撃を受けた。

収拾を図るべく、8月4日夜の議会では、封建的諸特権の廃止が集団的熱狂の中で宣言された。8月5日から14日にかけて、身分制・領主制の廃止、地域的特権の廃止、官職売買の廃止が法令化され、旧体制は崩壊した。8月26日、自由主義貴族ラファイエットらが起草した「人及び市民の権利の宣言」が、国民議会で採択された。この17条からなる人権宣言は、各自由の宣言・旧体制からの主権原理の転換(国民主権)・モンテスキュー流の権力分立、を規定していた。

国王はこれら法令の裁可を遅らせた。10月4〜5日、パリ民衆がヴェルサイユに行進して宮殿に乱入し、国王一家をパリに連れ戻した(ヴェルサイユ行進)。ここに至って国王は、法令を承認するに至った。国王はパリ市民の監視下に置かれる。

 

勝田・山崎編『政治思想史入門』[1969]pp141-166

小笠原・小野・藤原『政治思想史』[1987]pp191-199

阿部照哉編『比較憲法入門』[1994]pp211-218

木下・木村・吉田編『詳説世界史研究』[1995]pp322-330

浅羽通明『右翼と左翼』[2006]pp49-75

中井・佐藤・渋谷・加藤・小澤『教養のための西洋史入門』[2007]pp171-177

佐藤賢一『フランス革命の肖像』[2010]ppp

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