神とオイラー

2008-12-02 22:38:35 | 哲学・論理学

日本人の多くは特定の信仰を持たない。「私は無宗教です」などと口にする人は少なくない。だが、それは単なる宗教的無関心・宗教的無知に過ぎない、と看破したのは勝田吉太郎氏だった。無神論とはそういうことではない。

あらゆる権威を否定した無神論者バクーニンの「神」に対する態度は、先の日本人とは程遠い。彼は、神との血みどろの格闘を経て、無神論という「信仰」を獲得したのだ。「神は死んだ」という警句で有名なニーチェも、そのフレーズが登場する『悦ばしき知識』を読めば、彼がどれほど宗教的な人間であったかがわかるだろう。

・・・と書いておきながら、自分はどうかと省みれば、今日まで特定の宗教にコミットしたことのない世俗的な人間だ。とはいえ、人知を超えたものの存在を感じたことは、ある。

高校の時、化学ができず文系に「転んだ」。塾講師のバイトで数学を教えることとなり、大慌てで吉田武氏の名著を買った。この本は、「オイラーの公式の導出」を目標として、そのために必要な道具を学習していくという体裁をとっている。懇切丁寧な内容は素人にもわかりやすかった。

鉛筆片手に読み進み、草木も眠る丑三つ時、いよいよオイラーの公式にたどり着いた。左辺のeとi、右辺のcosineとsineが、等号で結ばれている。それだけでも驚愕だが、θにπを代入すると・・・。感動よりも恐怖を覚えた。

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3 コメント

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Unknown (うずはし)
2008-12-06 23:45:29
確かに日本人は、無宗教です、という人が多いね
僕もその発言の軽さに違和感を感じている一人です。その発言に裏に「神との格闘がない」という指摘はその通りだと思います。
ニーチェしかり、ウィトゲンシュタインしかり、無宗教を本気で唱える人は、だれよりも宗教的生活を送っているからおもしろいね
>うずはし君 (横井克俊)
2008-12-11 20:23:44
偉そうに言いながら僕も宗教的無知だけどね・・・。せめてもう少し神学のことを勉強したいです。何から読めばいいのかな?バルト?
Unknown (うずはし)
2008-12-14 23:31:13
バルトもいいけれど、少々マニアックかも。ロマ書講解だったかはおもしろいけど、入門としては微妙。

エリアーデの世界宗教史あたりはおもしろいよ。

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