日本人の多くは特定の信仰を持たない。「私は無宗教です」などと口にする人は少なくない。だが、それは単なる宗教的無関心・宗教的無知に過ぎない、と看破したのは勝田吉太郎氏だった。無神論とはそういうことではない。
あらゆる権威を否定した無神論者バクーニンの「神」に対する態度は、先の日本人とは程遠い。彼は、神との血みどろの格闘を経て、無神論という「信仰」を獲得したのだ。「神は死んだ」という警句で有名なニーチェも、そのフレーズが登場する『悦ばしき知識』を読めば、彼がどれほど宗教的な人間であったかがわかるだろう。
・・・と書いておきながら、自分はどうかと省みれば、今日まで特定の宗教にコミットしたことのない世俗的な人間だ。とはいえ、人知を超えたものの存在を感じたことは、ある。
高校の時、化学ができず文系に「転んだ」。塾講師のバイトで数学を教えることとなり、大慌てで吉田武氏の名著を買った。この本は、「オイラーの公式の導出」を目標として、そのために必要な道具を学習していくという体裁をとっている。懇切丁寧な内容は素人にもわかりやすかった。
鉛筆片手に読み進み、草木も眠る丑三つ時、いよいよオイラーの公式にたどり着いた。左辺のeとi、右辺のcosineとsineが、等号で結ばれている。それだけでも驚愕だが、θにπを代入すると・・・。感動よりも恐怖を覚えた。
僕もその発言の軽さに違和感を感じている一人です。その発言に裏に「神との格闘がない」という指摘はその通りだと思います。
ニーチェしかり、ウィトゲンシュタインしかり、無宗教を本気で唱える人は、だれよりも宗教的生活を送っているからおもしろいね
エリアーデの世界宗教史あたりはおもしろいよ。