木下道雄侍従次長は、些か頑張りすぎたのか、約7か月後の昭和21年5月にはお役御免になってしまう。その時、彼は天皇からインクスタンドとペンを賜った。
【木下道雄『側近日誌』より】
これを読んでいて、ふと思うことがあった。
木戸幸一が戦犯で収監される前に天皇との別れの際に「聖上御手ずから硯を賜り」と昭和20年12月10日の件に記されている。
これでは、天皇は硯を木戸にあげて、ペンを木下にあげたら、書くモノがなくなってしまうと思うのは、要らぬお世話というモノなのかもしれない。
敗戦後の一年間に、天皇は二人の古い側近と別れた。天皇にとって「木戸はどういう存在だったのだろうか」と、ふと想った。【次週へ】