この『失敗の本質』という本は少し前に多分読まないだろう、と書いた記憶がある。
その理由は筆頭の著者の戸川良一の単行本がよくある忖度本だったことと、他の著者が組織経営論の研究者が多かったことに違和感を待ったからだ。
だが、戦争の実相を知る観点から如何なる作戦で戦争をしたのかを知るために、読まざるを得なくなり、渋々読んだ。
結果は「失敗の本質」論には程遠く、そもそもが「失敗を予定される作戦」による敗戦ということがわかった。
如何に酷い作戦で戦争をしたのか、そして、あまりに多くの犠牲者を出したことが、ただ虚しく悲しい。
この本の中の一例で云えば、沖縄戦の第三十二軍の牛島満司令官と長勇参謀長は独自作戦を立て、責任取った風に自決した。そして、大将と中将にそれぞれ没後昇進をした。
しかし、彼らの作戦による沖縄戦で、日本軍戦死者6万5000人と沖縄島民10万人の死はどうすればよいのだろうか、…。それらが失敗と片付けられない程のたった一つの個の人生を奪い、しかも、本土上陸の時間稼ぎのための戦争だったとしたら、…。
「参謀」という名の無謀で、無能な軍人「官僚」を大量生産したこの圀の軍人帝國制は唾棄に値する。
何処か、この圀の今の無能な東大官僚や無知な世襲議員の有様に似ている気がする。この圀には脱却する戦後レジームなんて抑々無かったのかもしれない。
一冊は鉛筆の線や書き込みで本の体を為さなくなったので、もう一冊を資料として残そうと思う。