貴社の場合,当該変形労働時間制が無効となる問題があります。
以下,順を追って説明します。
まず,1年単位の変形労働時間制を採用するためには,以下の要件を満たす必要があります。
① 労使協定で次の各事項を定めること
(1) 対象労働者の範囲
(2) 対象期間および起算日
(3) 特定期間
(4) 労働日および労働日ごとの労働時間
(5) 法定労働時間の総枠内であること
(6) 有効期間
② 労使協定を労働基準監督署長に届け出ること
③ 就業規則に1年単位の変形労働時間制の定めをおくこと
次に,労使協定を定める際には,
事業場の労働者の過半数の組織がある場合にはその労働組合,それがない場合には,
労働者の過半数を代表する者との書面によることが必要です。
そして,の場合には,手続の民主性を保障するため,以下の要件を満たさない場合には,その労使協定は無効となります。
1 過半数代表者は管理監督者ではあってはならないこと
2 過半数代表者が投票,挙手などの方法によって選出されていること
以上の説明を前提とすると,貴社は,②と③の要件は満たしているものの,①の労使協定の締結について,の場合に該当するにもかかわらず,2 過半数代表者が投票,挙手などの方法によって選出はされていないとのことですので,ご質問の回答は当該労使協定が無効となる問題があるということになります。
したがって,仮に労働者から割増賃金の支払いを請求された場合には,変形労働時間制を前提に賃金を算定することはできなくなります。つまり,労基法の原則どおり,1日8時間の法定労働時間,1週間40時間の法定労働時間を超えていた場合には,その分の残業代 を支払う必要があります。
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