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1年単位の変形労働時間制を採用するための要件

2016-02-09 | 日記

当社は1年単位の変形労働時間制を導入していますが,導入の際,過半数労働組合がなく,過半数代表者を選出する手続きを踏んでいませんが,労働基準監督署長に届出をし,就業規則に定めがあります。問題はありますか?


 貴社の場合,当該変形労働時間制が無効となる問題があります。

 以下,順を追って説明します。

 まず,1年単位の変形労働時間制を採用するためには,以下の要件を満たす必要があります。

① 労使協定で次の各事項を定めること

(1) 対象労働者の範囲

(2) 対象期間および起算日

(3) 特定期間

(4) 労働日および労働日ごとの労働時間

(5) 法定労働時間の総枠内であること

(6) 有効期間

② 労使協定を労働基準監督署長に届け出ること

③ 就業規則に1年単位の変形労働時間制の定めをおくこと

 次に,労使協定を定める際には,

 事業場の労働者の過半数の組織がある場合にはその労働組合,それがない場合には,

 労働者の過半数を代表する者との書面によることが必要です。

 そして,の場合には,手続の民主性を保障するため,以下の要件を満たさない場合には,その労使協定は無効となります。

1 過半数代表者は管理監督者ではあってはならないこと

2 過半数代表者が投票,挙手などの方法によって選出されていること

 以上の説明を前提とすると,貴社は,②と③の要件は満たしているものの,①の労使協定の締結について,の場合に該当するにもかかわらず,2 過半数代表者が投票,挙手などの方法によって選出はされていないとのことですので,ご質問の回答は当該労使協定が無効となる問題があるということになります。

 したがって,仮に労働者から割増賃金の支払いを請求された場合には,変形労働時間制を前提に賃金を算定することはできなくなります。つまり,労基法の原則どおり,1日8時間の法定労働時間,1週間40時間の法定労働時間を超えていた場合には,その分の残業代 を支払う必要があります。


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事業場外みなし労働時間制について教えてください。

2016-02-05 | 日記

事業場外みなし労働時間制について教えてください。


 事業場外みなし労働時間制とは

 労働者が 労働時間の全部または一部について事業場施設の外で業務に従事した場合に, 労働時間を算定するのが難しいときは,所定労働時間だけ労働したものとみなす制度のことを言います。

 この二つの要件が認められた場合には,労基法上の立て付けとして,原則として,① (当該業務を遂行するために,通常,所定労働時間を超えて労働する必要がない場合は)所定労働時間を労働したものとみなされます(「所定労働時間みなし」)が,例外として,② 当該業務を遂行するために,通常,所定労働時間を超えて労働する必要がある場合には,当該事業場外での業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなされる(「通常必要時間みなし」)という構造を一応は取っています。

 通常必要時間とは,通常の状態で当該業務を遂行するために客観的に必要とされる時間を言いますが,もし通常必要時間を労使協定で締結した場合には適正な手続きに則っている限りそこで定められた時間が通常必要時間となります。

 しかし,ここで注意が必要な点があります。それは,労基法の条文を見る限り,使用者は,所定労働時間みなしが適用されるのが当たり前(原則)と考えがちですが,現実問題として多くの会社では,条文上は例外として定められいてる「通常,所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」に該当するケースがあるということです。前記との要件を満たしたとしても,通常必要時間みなしと判断された場合には,そのみなし時間が労働時間であると判断されることになるので注意が必要です。

 そこで,使用者は,前記との要件に加えて,当該事業場外での業務を遂行するために,通常,所定労働時間を超えて労働する必要がある場合に該当するのかを見極める必要があります。

 まとめると以下のようになります。

 労働時間の全部または一部について事業場施設の外で業務に従事した場合

 労働時間を算定するのが難しいとき

       ↓

① 当該業務を遂行するために,通常,所定労働時間を超えて労働する必要がない場合

 →所定労働時間を労働したものとみなされる(「所定労働時間みなし」)

② 当該業務を遂行するために,通常,所定労働時間を超えて労働する必要がある場合

 →当該事業場外での業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなされる(「通常必要時間みなし」)


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弾力的な労働時間制度にはどのようなものがありますか?

2016-02-03 | 日記

弾力的な労働時間制度にはどのようなものがありますか?


 労働基準法上,以下の通り弾力的な労働時間制度があります。

 ① 変形労働時間制(法定労働時間の弾力化)

 一定の期間(1か月以内,1年以内または1週間)につき,1週間当たりの平均所定労働時間が法定労働時間(1週40時間)を超えない範囲内で,1週または1日の法定労働時間を超えて労働させることを可能とする制度のことを言います。

 ② フレックスタイム制(主体的で柔軟な労働時間制度)

 労働者が1か月などの単位期間のなかで一定時間数の労働をすることを条件として,1日の始業・終業時刻を労働者の自由な決定に委ねる制度のことを言います。

 ③ みなし労働時間制

(1) 裁量労働制

 業務の性質上,使用者による厳格な労働時間管理に馴染まないため,労働時間の具体的配分を労働者に委ね,実労働時間については,労使協定などで定めた時間を労働したものとみなす制度のことを言います。

(2) 事業場外労働制

 労働者が労働時間の全部または一部について事業場施設の外で業務に従事した場合に,労働時間を算定するのが難しいときは,所定労働時間だけ労働したものとみなす制度のことを言います。


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労働者を採用等するにあたり注意することはありますか?

2016-02-02 | 日記

労働者を採用等するにあたり注意することはありますか?


 使用者は,原則として,どのような人をどのような条件で雇い入れるか(雇い入れないか)について,法律その他による特別の制限がない限り,自由に決めることができるとされています。

 「法律その他による特別の制限」には,例えば次のようなものがあり,採用等するにあたり以下の禁止事項および遵守事項に注意する必要があります。

① 性別を理由とする差別の禁止

② 募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保

③ 黄犬契約の禁止(労働者が労働組合に加入しない,または労働組合から脱退することを雇用条件とすること)

④ 障害者雇用促進法による法定雇用率の設定等

⑤ その他

 例えば,有期雇用労働者の無期転換,派遣労働者についての直接雇用(労働契約申込みみなし制度)の場合にも,採用の自由(採用しない自由)が制限がされることがあるので注意が必要です。


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毎月一定額の基本給と成績に応じた出来高払の給料がある場合における残業代の時間単価の計算方法

2016-02-01 | 日記

毎月一定額の基本給と成績に応じた出来高払の給料(歩合給)がある場合における残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法を教えて下さい。


 月によって定められた賃金の残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価は既にお伝えしたとおりで,難しくありません。
 例えば,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価が1500円/時の正社員の場合,
 時間外割増賃金の時間単価=1500円/時×1.25=1875円/時
 休日割増賃金の時間単価=1500円/時×1.35=2025円/時
 深夜割増賃金の時間単価=1500円/時×0.25=375円/時
となります。

 他方,出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の算定については,注意が必要です。
 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価は,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価を除外した割増部分に限定されるからです。
 例えば,ある賃金計算期間の歩合給が20万円,総労働時間が200時間の場合,
 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価
=20万円÷200時間=1000円/時
になり,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価は,
 時間外割増賃金の時間単価=1000円/時×0.25=250円/時
 休日割増賃金の時間単価=1000円/時×0.35=350円/時
 深夜割増賃金の時間単価=1000円/時×0.25=250円/時
となります。

 結局,上記事例の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価は,
 時間外割増賃金の時間単価=1875円/時+250円/時=2125円/時
 休日割増賃金の時間単価=2025円/時+350円/時=2375円/時
 深夜割増賃金の時間単価=375円/時+250円/時=円/時=625円/時
となります。


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通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価が1500円/時の正社員における残業代の計算方法

2016-02-01 | 日記

通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価が1500円/時の正社員について,労基法上の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法を教えて下さい。


 通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価が1500円/時の正社員の場合,
 時間外割増賃金=1500円/時×1.25=1875円/時
 休日割増賃金=1500円/時×1.35=2025円/時
 深夜割増賃金=1500円/時×0.25=375円/時
となります。

 深夜の時間外労働の割増賃金の時間単価は,
 1875円/時+375円/時=2250円/時
 深夜の休日労働の時間単価は,
 2025円/時+375円/時=2400円/時
となります。


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時給1000円のアルバイトについて,労基法上の残業代の時間単価の計算方法を教えて下さい。

2016-02-01 | 日記

時給1000円のアルバイトについて,労基法上の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法を教えて下さい。


 時給1000円のアルバイトの場合,
 時間外割増賃金の時間単価=1000円/時×1.25=1250円/時
 休日割増賃金の時間単価=1000円/時×1.35=1350円/時
 深夜割増賃金の時間単価=1000円/時×0.25=250円/時
となります。

 深夜の時間外労働の時間単価は,
 1250円/時+250円/時=1500円/時
 深夜の休日労働の時間単価は,
 1350円/時+250円/時=1600円/時
となります。


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労基法上の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法を教えて下さい。

2016-02-01 | 日記

労基法上の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法を教えて下さい。


 労基法上の残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法は,以下のとおりです。
 ① 時間外割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×1.25(中小事業主を除き1月60時間超の場合は×1.5)
 ② 休日割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×1.35
 ③ 深夜割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×0.25


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出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代を計算するに当たって注意すべきポイント

2016-02-01 | 日記

出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を計算するに当たって注意すべきポイントを教えてください。

1 給料を完全出来高払制にすることはできるのか
 労基法27条は,「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については,使用者は,労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」としており,本条に違反して賃金の保障をしない使用者は,30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条1号)。
 したがって,労働者の給料を,全く保障給がないという意味での完全出来高払制にすることはできません。


2 労基法27条に違反して保障給が定められていない場合,民事上,保障給の支払義務はあるのか
 労基法27条は保障給の具体的な金額については何ら規定していませんので,保障給の定めがない場合は,民事上,労働者は,同条に基づいて保障給の支払を請求することはできず,使用者は同条に基づく保障給の支払義務を負うものではないと考えられます。
 民事上,労働者に対する支払義務を負うとすれば,労働時間に応じた最低賃金か,慰謝料あたりではないでしょうか。


3 出来高払(歩合給)制の場合にも残業代(割増賃金)を支払う必要はあるのか
 出来高払制その他請負制によって定められた賃金(歩合給)は,除外賃金(労基法37条5項・労基則21条)に該当しませんので,出来高払(歩合給)制の場合であっても,残業させれば残業代 (割増賃金)を支払う必要があります。
 出来高払(歩合給)制における残業代(割増賃金)算定の基礎となる通常の労働時間・労働日の賃金は,以下の計算式により算出されます(労基則19条1項6号)。
 出来高払(歩合給)制における残業代の基礎となる賃金
=出来高払(歩合給)制によって計算された賃金の総額
 ÷当該賃金算定期間における総労働時間数
 出来高払(歩合給)制の給料(歩合給)部分については,月給制を採っている場合であっても,一月平均所定労働時間数はなく,「総労働時間数」で割るのが特徴的です。
 所定労働時間内に160時間働き,40時間残業した場合は,総労働時間数が160時間+40時間=200時間ですから,出来高払制における残業代(割増賃金)の基礎となる通常の労働時間・労働日の賃金は,出来高払制によって計算された賃金の総額を200時間で割って計算することになります。
 例えば,ある賃金計算期間の歩合給が20万円,総労働時間が200時間の場合,
 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価
=20万円÷200時間=1000円/時
となります。

 

4 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価
 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の算定については,注意が必要です。
 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価は,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価を除外した割増部分に限定されるからです。
 例えば,ある賃金計算期間の歩合給が20万円,総労働時間が200時間の場合,
 出来高払制によって定められた賃金(歩合給)の通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価
=20万円÷200時間=1000円/時
ですが,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価は,
 時間外割増賃金の時間単価=1000円/時×0.25=250円/時
 休日割増賃金の時間単価=1000円/時×0.35=350円/時
 深夜割増賃金の時間単価=1000円/時×0.25=250円/時
となります。


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