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「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)の判断方法

2010-10-11 | 日記
「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)の判断方法について,阪急トラベルサポート事件東京地裁平成22年7月2日判決(労経速2080-3)は,以下のように判示しています。
これによれば,みなし労働時間制が適用される「労働時間を算定し難いとき」とは,
① 使用者が,自ら現認することにより確認し,記録すること
② タイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し,記録すること
では,労働時間を確認できない場合のことを指すことになります。

事業上外みなし労働時間制は,事業上外業務に従事する労働者の実態に即した合理的な労働時間の算定が可能となるように整備されたものであり,言い換えると,事業上外での労働は労働時間の算定が難しいから,できるだけ実際の労働時間に近い線で便宜的な算定を許容しようという趣旨である。
これは,労働の量よりも質に注目した方が適切と考えられる高度の専門的裁量的業務について実際の労働時間数にかかわらず一定労働時間だけ労働したものとみなす裁量労働制(労基法38条の3)とは,異なった制度である。
次に,労基法は,使用者に対し,労働時間を把握することを求めている(同法108条,労働基準施行規則54条1項5号,6号)。
また,時間外労働割増賃金の支払を使用者に対する罰則をもって確保している(同法37条,119条1号)。
この労働時間を把握する方法として,平成13年4月6日労働基準局長通達第339号「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下「労働時間把握基準」という。)は,「使用者は,労働時間を適正に管理するため,労働者の日ごとの始業・終業時刻を確認し,これを記録すること」とされ,その方法として原則として
「ア 使用者が,自ら現認することにより確認し,記録すること。
 イ タイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し,記録すること。」
とし,例外として自己申告制を規定する(書証略)。
これらによれば,みなし労働時間制が適用される「労働時間を算定し難いとき」とは,労働時間把握基準が原則とする前記ア及びイの方法により労働時間を確認できない場合を指すと解される。
なお,労働時間把握基準は,みなし労働時間制が適用される場合には,適用がないものとされている。
ここで,例外である自己申告制によって労働時間を算定することができる場合であっても,「労働時間を算定し難いとき」に該当する場合があると解される。
なぜなら,もし,自己申告制により労働時間を算定できる場合を事業上外みなし労働時間制から排除するとすれば,事業上外労働であって,自己申告制により労働時間を算定できない場合は容易に想像できず,労基法が事業上外みなし労働時間制を許容した意味がほとんどなくなってしまうからである。
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