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阪急トラベルサポート事件東京地裁平成22年7月2日判決(労経速2080-3)

2010-10-11 | 日記
本判決は,本件海外ツアー添乗業務は,「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)に該当すると判断し,事業場外みなし労働時間制が適用されると判断しました。
その上で,「業務の遂行上通常必要とされる時間」は11時間と認定し,日当1万6000円は,8時間の労働に対する対価と認定しました。
会社側は,11時間の対価が1万6000円であると主張したのですが,労基法32条2項が1日の労働時間の上限を8時間としており,労基法13条が「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については無効とする。この場合において,無効となった部分は,この法律で定める基準による。」と規定していることから,労基法の強行的直律的効力により労働契約の労働時間11時間という部分は無効となり,労基法の定める8時間となると解されるとしています。
このため,割増賃金の基礎となる賃金は,日当1万6000円÷8時間=2000円とされました。
その上で,1時間あたり2500円の時間外割増賃金,1時間あたり700円の休日割増賃金,未払割増賃金の合計額と同額の付加金の支払いが命じられています。

なお,阪急トラベルサポート事件東京地裁平成22年5月11日判決(労経速2080-15)では,同じ会社の国内旅行の添乗業務の添乗員について,「労働時間を算定し難い」とはいえず労働基準法38条の2第1項は適用されないと判断されています。
海外と国内での勤務実態の違いに着目した判断なのか,東京地裁民事36部田中一隆裁判官と東京地裁民事11部鈴木拓児裁判官との考え方の違いなのか,様々な考え方はあると思いますが,控訴されているのであれば,東京高裁がどのような判断をするのかが楽しみです。
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