弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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試用期間中の勤務状況から役に立つ人材と判断できたら雇い続けるというやり方をどう思いますか?

2015-10-20 | 日記

採用面接時に能力が低い応募者だということが判明した場合であっても,雇用確保に貢献し,就職できない応募者にチャンスを与える意味で採用し,試用期間中の勤務状況から役に立つ人材と判断できたら本採用拒否せずに雇い続けるというやり方をどう思いますか?

 「能力が低いのは分かっていたけど,就職できなくて困っているようだし,もしかしたら会社に貢献できる点も見つかるかもしれないから,チャンスを与えるために採用してあげた。」という発想は,雇用主の責任の重さを考えると,極めて危険な考え方です。
 緩やかな基準で認められる試用期間 中の本採用拒否(解雇 )は,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解雇)に限られますから,新たに本採用拒否に値する事実が判明しない限り,本採用拒否はおそらく無効と判断されることでしょう。
 採用されて試用期間中に本採用拒否(解雇)された労働者からは,全く感謝されず,それどころか「中途半端に採用されなければ,他社で正社員として就職することができたのに,人を物のように扱うブラック企業によって人生を狂わされた。」と非難されることも珍しくありません。
 使用者は,その応募者に魅力があって雇いたいと考える場合に初めて雇うべきであり,魅力がないと判断したら不採用とする必要があります。
 「雇ってあげる。」といった発想で社員を雇った場合,会社経営者は「いいことをしたのだから,感謝されないまでも,悪くは思われることはないだろう。」と思い込んだり,自分が面倒見のいい親分になったような気分に浸ったりして脇が甘くなりやすく,トラブルになるリスクが極めて高くなりますので,そうはならないよう,気持ちを引き締めて採用活動に当たって下さい。


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「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」とはどういった場合か

2015-10-20 | 日記

「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」(三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)とは,具体的にどういった場合ですか?

 三菱樹脂事件最高裁大法廷判決は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」を以下のように言い換えて説明しています。
 「換言すれば,企業者が,採用決定後における調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが,上記解約権留保の趣旨,目的に徴して,客観的に相当であると認められる場合には,さきに留保した解約権を行使することができるが,その程度に至らない場合には,これを行使することはできないと解すべきである。」
 緩やかな基準で認められる試用期間 中の本採用拒否(解雇 )は,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解雇)に限られます。
 採用当初から知り得た事実を理由とする解雇は,解約権留保の趣旨,目的の範囲外ですので,留保された解約権の行使としては認められません。
 したがって,採用面接時に知り得た事実を理由とする本採用拒否(解雇)は緩やかな基準では判断されず,通常の解雇の基準で判断されることになります。

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試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否(解雇)できますよね?

2015-10-20 | 日記

試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否(解雇)できますよね?

 試用期間 中の社員の本採用拒否は,本採用後の解雇 と比べて,使用者が持つ裁量の範囲は広いと考えられています。三菱樹脂事件最高裁昭和48年12月12日大法廷判決も,解約権留保の趣旨を「大学卒業者の新規採用にあたり,採否決定の当初においては,その者の資質,性格,能力その他上告人のいわゆる管理職 要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない,適切な判断資料を十分に蒐集することができないため,後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨」と捉えた上で,試用期間における留保解約権に基づく解雇(本採用拒否)は,通常の解雇と全く同一に論じることはできず,通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものと判示しています。
 もっとも,同最高裁大法廷判決は,試用者の本採用拒否は,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」と判示しており,本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由があることを証拠により立証できなければ本採用拒否(解雇)することができないことは,通常の解雇と変わりありません。
 本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由が必要ということは,使用者が主観的に本採用するに値する人物ではないと判断したというだけでは足りず,裁判官の目から見ても本採用拒否(解雇)を正当化できるだけの事情が存在することを証拠により証明することができるようにしておく必要があることを意味します。
  本採用拒否(解雇)の有効性が緩やかに判断される
 ≠本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由が不要
 ≠本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由があることを証明するための客観的証拠が不要
 抽象的に勤務態度が悪いとか,能力が低いとか言ってみたところで,あまり意味がなく,具体的に,何月何日に,どこで,誰が,どのように,何をしたのかといった事実を客観的証拠により認定できるようにしておく必要があります。客観的証拠確保の方法としては,例えば,試用期間中の社員は,毎日,日報に反省点等を記載させることとし,指導担当者がコメントする等といった方法も考えられます。


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試用期間中の社員であれば,自由に本採用拒否(解雇)できますよね?

2015-10-20 | 日記

試用期間中の社員であれば,自由に本採用拒否(解雇)できますよね?

 使用者と試用期間 中の社員との間では,既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案が多く,本採用拒否の法的性質は,留保された解約権の行使(解雇)と評価されるのが通常です。
 本採用拒否は,既に採用した社員の解雇 であり,新たに採用する場面とは異なりますから,試用期間中だからといって,自由に本採用拒否(解雇)できるわけではなく,「解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」(三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)ことになります。


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試用期間の法的性格を教えて下さい。

2015-10-20 | 日記

試用期間の法的性格を教えて下さい。

 試用期間 には様々なものがあり,その法的性格は一様ではありません。
 三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決(労判189号16頁)は,「試用契約の性質をどう判断するかについては,就業規則の規定の文言のみならず,当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情,とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきものである」と判示していますので,試用期間の法的性格については,「試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情,とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかん」等を重視して個別に判断していくことになります。
 同事件原判決が,「上告人の就業規則である見習試用取扱規則の各規定のほか,上告人において,大学卒業の新規採用者を試用期間終了後に本採用しなかった事例はかつてなく,雇入れについて別段契約書の作成をすることもなく,ただ,本採用にあたり当人の氏名,職名,配属部署を記載した辞令を交付するにとどめていたこと等の過去における慣行的実態に関して適法に確定した事実に基づいて,」「右雇用契約を解約権留保付の雇用契約と認め,右の本採用拒否は雇入れ後における解雇 にあたる」と判断したことを同最高裁判決は「是認し得ないものではない。」とした上で,「被上告人に対する本採用の拒否は留保解約権の行使,すなわち雇入れ後における解雇にあたり,これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。」と判断していますので,三菱樹脂事件と同様の事案における試用期間においては,解約権留保付の雇用契約が既に成立しており,本採用拒否は留保解約権の行使(解雇)と考えるべきことになります。
 一概には言えませんが,多くの企業における試用期間は解約権留保付の雇用契約が既に成立しており,本採用拒否は留保解約権の行使(解雇)に当たると考えられるものと思われます。


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試用期間とは何ですか?

2015-10-20 | 日記

試用期間とは何ですか?

 試用期間 には法律上の定義がなく,様々な意味に用いられますが,一般的には,正社員として採用された者の人間性や能力等を調査評価し,正社員としての適格性を判断するための期間をいいます。


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転勤命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?

2015-10-20 | 日記

転勤命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?

 転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇 は認められません。
 他方,有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,転勤命令拒否を理由とした懲戒解雇は懲戒権の濫用にはならないのが通常ですが,裁判例の中には,社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くすべきとして,拙速な懲戒解雇を無効と判断したものが存在します。
 懲戒解雇のような退職という重大な効果を伴う懲戒処分について裁判所は有効性を慎重に判断する傾向がありますから,転勤命令が有効であることが明らかな事案であったとしても,拙速な懲戒解雇は差し控え,当該正社員が翻意して転勤命令を受け入れる見込みがほとんどなくなったことを立証するための客観的証拠が十分に集まってから懲戒解雇に踏み切るべきと考えます。


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転勤命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

2015-10-20 | 日記

転勤命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

 使用者による転勤命令は,
① 業務上の必要性が存しない場合
② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用にならないと考えられています(東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)。

 ①業務上の必要性については,東亜ペイント事件最高裁判決が,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示していることもあり,企業経営上意味のある配転であれば,存在が肯定されることになります。
 退職勧奨 したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから, ②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。

 ③については,単なる不利益の有無が問題となっているのではなく,「労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」の有無が問題となっていることを理解する必要があります。
 社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。

 ③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。
 就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
 育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
 本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が権利の濫用で無効とされるリスクが高まることになります。
 裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。


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労働条件通知書の「就業の場所」欄には,どこまで詳しく書く必要がありますか?

2015-10-20 | 日記

労働条件通知書の「就業の場所」欄には,どこまで詳しく書く必要がありますか?

 平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされていますので,原則として最初の勤務場所を書けば足ります。
 もっとも,転勤を命じられてから,雇入れ直後の就業場所の記載があることを理由に勤務地限定の合意があったと主張する労働者もいますので,単に雇入れ直後の就業場所を記載するだけではなく,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることを明記しておいてもいいかもしれません。
 上記通達では「将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えない」とされています。


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勤務地限定の合意があったとの主張は,どの程度認められるものなのでしょうか?

2015-10-20 | 日記

勤務地限定の合意があったとの主張は,どの程度認められるものなのでしょうか?

 転勤命令の有効性が争われた場合,勤務地限定の合意があったとの主張が労働者側からなされることが多いですが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。
 就業規則に転勤命令権限についての規定を置き,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約してもらっておけば,特段の事情がない限り,訴訟対策としては十分だと思います。
 他方,有期労働者,パートタイマー,アルバイト等の非正規労働者については,勤務地限定の合意があることも珍しくありませんので,転勤命令権限の有無・範囲等について,慎重に検討していくべきでしょう。


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