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「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかは,どのような要素を考慮して判断すればいいのか

2015-08-14 | 日記

「事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法39条5項)に該当するかどうかは,どのような要素を考慮して判断すればいいのでしょうか。

 「事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法39条5項)に該当するかどうかは,一般に,当該労働者の所属する事業場を基準として,事業の規模,内容,当該労働者の担当する作業の内容,性質,作業の繁閑,代行者の配置の難易,労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきであるとされています。

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3日前且つ指定の書式で申請しない場合は,年休取得を一切認めないという運用にすることはできますか。

2015-08-14 | 日記

年次有給休暇を取得する日の3日以上前に年休取得を会社指定の書式で申請しない場合は,年休取得を一切認めないという運用にすることはできますか。

 使用者としては,年休を取得する社員がいる場合,年休を取得した社員の代替要員を手配する必要が生じることがありますから,社員に対し,原則として年次有給休暇を取得する日の3日以上前に年休取得を会社指定の書式で申請するというルールを設けること自体には一応の合理性が認められ,許されるものと考えられます。
 しかし,その期限までに申請しない場合に,年休取得を一切認めないという運用には問題があります。特定の日に年休を取得することを拒むためには,時季変更権を行使できることが必要であり,「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法39条5項)であることが必要です。
 直前に年休取得の申請がなされた場合であっても一律に年休取得を認めないとすることはできず,事業の正常な運営を妨げる場合に該当するかどうかをその都度検討した上で,時季変更権を行使するかどうかを判断する必要があります。

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勤務開始から1年7か月で退職する予定の社員であっても11日の年休を付与しなければならないのか

2015-08-14 | 日記

勤務開始から1年7か月で退職する予定の社員であっても,目立った欠勤をせずに1年6か月継続勤務したら,11日の年休を付与しなければならないのでしょうか。年休付与日数を残勤務期間で日割計算した日数に減らすことはできませんか。

 退職間近な社員に労基法所定の年休を付与するということになると,勤務開始から1年7か月で退職する予定の社員は,1年6か月継続勤務した時点で11日の年休を付与され,最後の1か月でこれを使うことになるでしょうから,最後の1か月のかなりの部分は年休を使うためにあるようなものとなってしまい,使用者から見れば不都合とも思えます。
 しかし,労基法は退職間近であるか否かによって年休の付与日数を変えていないため,貴社の事例においても,11日の年休を付与せざるを得ず,年休付与日数を残勤務期間に応じた日数に減らすことはできません。年休の取得は労働者の権利なのだからやむを得ないと割り切るほかないでしょう。

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年次有給休暇を使い切らずに退職した社員が,退職日を変更し年次有給休暇を取得したいと言ってきた場合

2015-08-14 | 日記

年次有給休暇を使い切らずに退職した社員が退職日を1か月程度先に変更した上で年次有給休暇を取得したいと言ってきた場合,これに応じる必要はありますか。

 年次有給休暇は,あくまでも在職中の労働者に対し,有給で労働義務を免除するものです。年次有給休暇を使い切らずに退職した社員は退職日を以て労働契約が終了しており,労働契約が終了した時点で年休を取得する権利は消滅していますので,退職した社員が年次有給休暇を取得する余地はありません。
 理屈では,退職の撤回を認めた上で,年休取得を認めることもできなくはありませんが,法的にはこのような申し出に応じる必要はありませんし,応じることはお勧めできません。

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引き継ぎしてもらわなければ困る社員が退職日までの全ての所定労働日について年休取得申請をしてきたら

2015-08-14 | 日記

退職間近で業務の引継ぎをしてもらわなければ困る社員が退職日までの全ての所定労働日について年休取得申請をしてきた場合,年休取得を拒んで業務の引継ぎをさせることはできますか。

  年休取得に使用者の承認は不要であり,労働者がその有する休暇日数の範囲内で,具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をしたときは,適法な時季変更権の行使がない限り,年次有給休暇が成立し,当該労働日における就労義務が消滅します。
 使用者が,社員の年休取得を拒むことができるというためには,時季変更権(労基法39条5項)を行使できる場面でなければなりませんが,時季変更権の行使は,「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては,他の時季にこれを与えることができる。」(労基法39条5項)とするものに過ぎず,年休を取得する権利自体を奪うことはできません。退職後に年休を与えることはできませんので,退職までの全労働日の年休取得を申請された場合,よほど信義則に反するような事情がない限り,使用者は時季変更権の行使ができず,退職日までの年休取得を拒絶することはできないものと考えられます。昭和49年1月11日基収5554号も,「年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り,当該労働者の解雇予定日をこえての時季変更は行えないものと解する。」としています。
 引継ぎをしてもらわなければ業務に支障が生じることもあり得ますが,法的にはやむを得ないケースがほとんどと思われます。退職する社員とよく話し合って,年休買い上げの合意をするか,退職日を先に延ばす合意をするなどして,引継ぎをするよう説得するほかありません。

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パート・アルバイトの所定労働日や所定労働時間が変更された場合の年次有給休暇の日数

2015-08-14 | 日記

パート・アルバイトの1週間あたりの所定労働日数や所定労働時間が変更された場合,付与すべき年次有給休暇の日数はいつを基準にして決めればいいのでしょうか。

 付与すべき年次有給休暇の日数は,年次有給休暇を取得する権利が発生した日(基準日)の所定労働日数・所定労働時間によって決まります。基準日前に所定労働日数や所定労働時間が変更されていたり,基準日後に所定労働日数や所定労働時間が変更されたりしたとしても,付与される年次有給休暇の日数は変わりません。
 例えば,勤務開始時点においては週3日勤務だったパート・アルバイトが,勤務開始から5か月経過した時点で週4日勤務に変更になりそのまま6か月を経過した場合は,最初の5か月の週3日勤務を基準にした5日ではなく,6か月経過時の週4日勤務を基準にした7日の年次有給休暇を付与すべきこととなります。
 仮に,1年勤務した時点で勤務日数が週3日に戻ったとしても,当該パート・アルバイトが取得できる年次有給休暇が,7日から5日に減ってしまうということにはなりません。逆に,1年勤務した時点で勤務日数が週5日に増えたとしても,当該パート・アルバイトが取得できる年次有給休暇が,7日から10日に増えるということにもなりません。

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パート・アルバイトにも,年次有給休暇を与える必要がありますか。

2015-08-14 | 日記

パート・アルバイトにも,年次有給休暇を与える必要がありますか。

 パート・アルバイトであるからといって,直ちに年次有給休暇を与える必要がないわけではありません。
 ① 1週間あたりの所定労働時間が30時間以上のパート・アルバイト
 ② 1週間あたりの所定労働日数が5日以上のパート・アルバイト
 ③ 1年間あたりの所定労働日数が217日以上のパート・アルバイト(週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合)
については,正社員(労基法39条2項)と同様の日数の年次有給休暇を付与する必要があります。
 例えば,週所定労働時間が30時間のパート,アルバイトが6か月間継続勤務し,所定労働日の80%以上出勤した場合は,10日間の年次有給休暇が付与されることになります。
 上記①②③いずれにも該当しないパート・アルバイトであっても,正社員よりは少ない日数ではありますが,週所定労働日数又は1年間の所定労働日数に応じて,年次有給休暇が比例付与されます(労基法39条3項,労基法施行規則24条の3第3項)。
 例えば,週所定労働日数が3日のパート・アルバイトが6か月間継続勤務し,所定労働日の80%以上出勤した場合は,5日間の年次有給休暇が付与されることになります。
 まずは,パート・アルバイトであっても,年次有給休暇が付与され得るということを理解する必要があります。その上で,具体的付与日数については,労基法施行規則24条の3と照らし合わせて確認すれば足りるでしょう。

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労働委員会の命令又は決定に不服がある場合,地方裁判所への取消訴訟の提起には期間制限がありますか。

2015-08-14 | 日記

不当労働行為救済申立事件における都道府県労働委員会の命令又は決定に不服がある場合,地方裁判所への取消訴訟の提起には期間制限がありますか。

 地方裁判所に取消訴訟の提起を行う場合は,都道府県労働委員会の命令書又は決定書を受け取った日から申立人は6か月以内に,被申立人は30日以内に取消訴訟を提起する必要があります。

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労働委員会の命令又は決定に不服がある場合,再審査申立てには期間制限がありますか。

2015-08-14 | 日記

不当労働行為救済申立事件における都道府県労働委員会の命令又は決定に不服がある場合,中央労働委員会への再審査申立てには期間制限がありますか。

 都道府県労働委員会の命令書又は決定書を受け取った日の翌日から数えて15日以内に中央労働委員会に再審査申立書を提出する必要があります。
 この期間制限は,申立人・被申立人共通のものです。

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都道府県労働委員会の命令又は決定に不服がある場合は,どうやって争うことができますか。

2015-08-14 | 日記

不当労働行為救済申立事件における都道府県労働委員会の命令又は決定に不服がある場合は,どうやって争うことができますか。

 不当労働行為救済申立事件における都道府県労働委員会の命令又は決定に不服がある場合は,
 ① 中央労働委員会に再審査を申し立てること
 ② 地方裁判所に取消訴訟を提起すること
のいずれかにより,都道府県労働委員会の命令又は決定を争うことができます。

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労働者代表の意見聴取や労基署への届出を怠った場合,就業規則変更の効力はどうなりますか。

2015-08-14 | 日記

労働者代表の意見聴取や労基署への届出を怠った場合,就業規則変更の効力はどうなりますか。

 就業規則を変更するに当たっては,労働者代表の意見聴取や労基署への届出が必要となります(労契法11条・労基法90条)。
 しかし,就業規則変更の効力について定めた労契法10条は,就業規則変更が有効となるための要件として労働者代表の意見聴取や労基署への届出を規定していません。
 したがって,労働者代表の意見聴取や労基署への届出がなかったからといって直ちに就業規則変更の効力が否定されるものではなく,同条の「その他の就業規則の変更に係る事情」として考慮されるにとどまるものと考えられます。

 甲商事事件東京地裁平成27年2月18日判決も,以下のとおり判示し,私見と同様の結論を採っています。
 「本件では,就業規則の変更にあたって,労働基準監督署への届出がなされ(書証略),外形上,労働者代表者の意見聴取もなされている(書証略)ところであるが,原告らは就業規則の変更に伴う労働者の過半数代表者の意見聴取手続が行われていないと主張しており,従業員代表を選ぶための投票等の手続がとられた事実も証拠上認めることはできない(証拠略)。」
 「もっとも,就業規則の変更にあたっては,従業員代表の意見聴取,労働基準監督署への届出がなされていることが望ましい(労契法11条,労基法90条)ものの,就業規則の変更の有効性を認めるための絶対的な条件であるとはいえず,これらの事情は,労契法10条における「その他の就業規則の変更に係る事情」として,合理性判断において考慮される要素と解される。」
 「そうすると,本件においては,就業規則の変更は労働基準監督署に届け出られているものの,従業員代表の意見聴取がなされているとは認め難い。しかしながら,このことだけをもって,就業規則の変更が無効になるとまでは解されない。」

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就業規則と労働契約書とで記載されている所定労働時間が違う場合,どちらが適用されますか?

2015-08-14 | 日記

所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であり,労働契約書にも所定労働時間が8時間と明記されていますが,就業規則には所定労働時間が7時間30分と規定されています。所定労働時間は8時間ですか,それとも7時間30分ですか。

 所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であったとしても,就業規則の明文の効力を否定する理由にはなりません。
 また,就業規則で定める基準に達しない労働条件は無効であり,就業規則で定める基準が適用されますので(労契法12条),労働契約書に所定労働時間が8時間と明記されていたとしても無効となり,就業規則で定める所定労働時間(7時間30分)が適用されます。
 したがって,所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であり,労働契約書にも所定労働時間が8時間と明記されていたとしても,訴訟等において(元)従業員から,就業規則に所定労働時間が7時間30分と規定されているから所定労働時間は7時間30分だと主張された場合は,所定労働時間は7時間30分であると認定される可能性が高いと思います。
 甲商事事件東京地裁平成27年2月18日判決は,設問と類似の争点に関し,上記説明と同様の理由に加え,「就業規則は,使用者が労働者の同意を必要とせずに,一方的に定めることができるものである以上,その記載を誤って変更してしまったにしても,その責任は使用者において負うべきである。」などとして,所定労働時間を7時間30分と認定しています。