所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であり,労働契約書にも所定労働時間が8時間と明記されていますが,就業規則には所定労働時間が7時間30分と規定されています。所定労働時間は8時間ですか,それとも7時間30分ですか。
所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であったとしても,就業規則の明文の効力を否定する理由にはなりません。
また,就業規則で定める基準に達しない労働条件は無効であり,就業規則で定める基準が適用されますので(労契法12条),労働契約書に所定労働時間が8時間と明記されていたとしても無効となり,就業規則で定める所定労働時間(7時間30分)が適用されます。
したがって,所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であり,労働契約書にも所定労働時間が8時間と明記されていたとしても,訴訟等において(元)従業員から,就業規則に所定労働時間が7時間30分と規定されているから所定労働時間は7時間30分だと主張された場合は,所定労働時間は7時間30分であると認定される可能性が高いと思います。
甲商事事件東京地裁平成27年2月18日判決は,設問と類似の争点に関し,上記説明と同様の理由に加え,「就業規則は,使用者が労働者の同意を必要とせずに,一方的に定めることができるものである以上,その記載を誤って変更してしまったにしても,その責任は使用者において負うべきである。」などとして,所定労働時間を7時間30分と認定しています。
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