弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

就業規則と労働契約書とで記載されている所定労働時間が違う場合,どちらが適用されますか?

2015-08-14 | 日記

所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であり,労働契約書にも所定労働時間が8時間と明記されていますが,就業規則には所定労働時間が7時間30分と規定されています。所定労働時間は8時間ですか,それとも7時間30分ですか。

 所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であったとしても,就業規則の明文の効力を否定する理由にはなりません。
 また,就業規則で定める基準に達しない労働条件は無効であり,就業規則で定める基準が適用されますので(労契法12条),労働契約書に所定労働時間が8時間と明記されていたとしても無効となり,就業規則で定める所定労働時間(7時間30分)が適用されます。
 したがって,所定労働時間が8時間であることが全従業員の共通認識であり,労働契約書にも所定労働時間が8時間と明記されていたとしても,訴訟等において(元)従業員から,就業規則に所定労働時間が7時間30分と規定されているから所定労働時間は7時間30分だと主張された場合は,所定労働時間は7時間30分であると認定される可能性が高いと思います。
 甲商事事件東京地裁平成27年2月18日判決は,設問と類似の争点に関し,上記説明と同様の理由に加え,「就業規則は,使用者が労働者の同意を必要とせずに,一方的に定めることができるものである以上,その記載を誤って変更してしまったにしても,その責任は使用者において負うべきである。」などとして,所定労働時間を7時間30分と認定しています。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 機密情報を持ち出した元従業... | トップ | 労働者代表の意見聴取や労基... »
最新の画像もっと見る

日記」カテゴリの最新記事