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転勤命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

2014-10-22 | 日記

転勤命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

 使用者による転勤命令は,
① 業務上の必要性が存しない場合
② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用にならないと考えられています(東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)。

 ①業務上の必要性については,東亜ペイント事件最高裁判決が,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示していることもあり,企業経営上意味のある配転であれば,存在が肯定されることになります。
 退職勧奨 したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから, ②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。

 ③については,単なる不利益の有無が問題となっているのではなく,「労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」の有無が問題となっていることを理解する必要があります。
 社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。

 ③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。
 就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
 育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
 本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が権利の濫用で無効とされるリスクが高まることになります。
 裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。


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労働条件通知書の「就業の場所」欄には,どこまで詳しく書く必要がありますか?

2014-10-22 | 日記

労働条件通知書の「就業の場所」欄には,どこまで詳しく書く必要がありますか?

 平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされていますので,原則として最初の勤務場所を書けば足ります。
 もっとも,転勤を命じられてから,雇入れ直後の就業場所の記載があることを理由に勤務地限定の合意があったと主張する労働者もいますので,単に雇入れ直後の就業場所を記載するだけではなく,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることを明記しておいてもいいかもしれません。
 上記通達では「将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えない」とされています。


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勤務地限定の合意があったとの主張は,どの程度認められるものなのでしょうか?

2014-10-22 | 日記

勤務地限定の合意があったとの主張は,どの程度認められるものなのでしょうか?

 転勤命令の有効性が争われた場合,勤務地限定の合意があったとの主張が労働者側からなされることが多いですが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。
 就業規則に転勤命令権限についての規定を置き,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約してもらっておけば,特段の事情がない限り,訴訟対策としては十分だと思います。
 他方,有期労働者,パートタイマー,アルバイト等の非正規労働者については,勤務地限定の合意があることも珍しくありませんので,転勤命令権限の有無・範囲等について,慎重に検討していくべきでしょう。


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使用者に配転命令権限があるといえるためには,どのようなことが必要ですか?

2014-10-22 | 日記

使用者に配転命令権限があるといえるためには,どのようなことが必要ですか?

 配転命令権限の有無は,当該労働契約の解釈により決せられるべき問題です。
 使用者に配転命令権限があるというためには,対象社員の個別的同意は必ずしも必要ではなく,就業規則の規定,入社時の包括的同意書があれば足りるのが通常であり,配転命令権限に関する就業規則の規定,包括的同意書が存在しない場合であっても,使用者に配転命令権限が付与されていると解釈できることもあります。
 一般論としては,正社員については使用者に広範な配転命令権限が認められる傾向にあり,パート,アルバイトについては,配転命令権限が制限される傾向にあります。
 実務上は,勤務地限定の合意の有無,職種限定の合意の有無が争点とされることが多くなっています。
 東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決は,使用者の転勤命令権限に関し,「思うに,上告会社の労働協約及び就業規則には,上告会社は業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり,現に上告会社では,十数か所の営業所等を置き,その間において従業員,特に営業担当者の転勤を頻繁に行っており,被上告人は大学卒業資格の営業担当者として上告会社に入社したもので,両者の間で労働契約が成立した際にも勤務地を大阪に限定する旨の合意はなされなかったという前記事情の下においては,上告会社は個別的同意なしに被上告人の勤務場所を決定し,これに転勤を命じて労務の提供を求める権限を有するものというべきである。」と判示しています。
 同最高裁判決が,労働者の個別同意なしに勤務場所を決定し,転勤を命じて労務の提供を求める権限を有するという結論を出すに当たって考慮している要素を抽出すると,以下のとおりとなります。
 ① 転勤命令権限に関する労働協約及び就業規則の定め
 ② 営業所の数,転勤の実情
 ③ 応募資格,職種
 ④ 勤務地限定の合意の有無


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転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性が争われた場合,主に何が問題となりますか?

2014-10-22 | 日記

転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性が争われた場合,主に何が問題となりますか?

 転勤命令違反を理由とした懲戒解雇 の有効性が争われた場合,
① 転勤命令権限の有無(勤務地限定特約の有無)
② 転勤命令が濫用されたと評価できるかどうか
③ 懲戒解雇が懲戒権の濫用(労契法15条)に当たるかどうか
が主に問題となります。


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懲戒解雇と退職金不支給の関係について,教えて下さい。

2014-10-22 | 日記

懲戒解雇と退職金不支給の関係について,教えて下さい。

 懲戒解雇事由に該当する場合を退職金の不支給・減額・返還事由として規定しておけば,懲戒解雇事由がある場合で,当該個別事案において,退職金不支給・減額の合理性がある場合には,退職金を不支給または減額したり,支給した退職金の全部または一部の返還を請求したりすることができます。
 退職金の不支給・減額事由の合理性の有無は,労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全額不支給の場合)又は減殺(一部不支給の場合)するほどの著しい背信行為があるかどうかにより判断されます。
 懲戒解雇 が有効な場合であっても,労働者のそれまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信行為はない場合は,例えば,本来の退職金の支給額の30%といった金額の支払が命じられることがあります。


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