パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

Additional Guidance to the GEF

2007-03-27 23:58:38 | 環境ネタ
 こんなエントリのタイトルつけても特定の環境条約に土地勘のある人しかピンと来ないと思うのですが、もーあまりにあんまりなので、GEFへの不満を書き連ねてみる。GEFはGlobal Environmental Facilityのことで、92年のリオの地球サミットの直前にできたFinancial Mechanism(きっかけはアルシュ・サミットだったか)。地球環境ネタの途上国援助をやりましょうって目的で、温暖化や生物多様性、オゾン層、化学物質、水質等々いろいろです。多国間環境条約の話をするときに途上国支援ネタが議題に上らないことはないのですが、同じようにGEFへの不満が聞かれないこともなくって、何かと言えば「GEFとは違う新しい資金メカニズムを作れ」ってな要求をするので、「そんな屋上屋なことしても余計面倒くさいに決まってるじゃん、変なの」と思ってました。が、その不満が今は分かるというか、というのも、例の授業の一環のお仕事でGEFを使ったプロジェクトの企画書みたいなのを書く機会があって、あまりのひどさに頭がクラクラし続けているのです。一言で言うと、どの情報も自己完結していないんですね。

○プロジェクト・サイクルの説明がない
 サイトに行ってささっとアイデアを形にしてみようか、と思っても、まず最初にどこから始めるべきか分からない。

 これが例えばADBだと
こんな感じ
で解説してくれるので(それぞれのボックスからのリンク付き)、あぁ最初のステップから手をつければいいんだなと分かるんですよね。
 
 ところが、GEFの方でこれに相当するページに行っても関係機関(UNDP, UNEP,世銀)がツラツラと出てくるだけで全然意味ある情報が出てこない。more informationってとこからリンクをたどってみたらずらっとフォームが並んでるだけで、さぁ勝手に埋めてくれとでも言わんばかり。
 それも私が不案内なせいだろう、と思ってgeneral informationを読んでみるかとクリックしたらワード文書が開かれるってどういうこと(・ ・?) それも全てが一部分でいくつかのワード文書に分かれていて、それだけで読む気をなくす上に、しかも6つのファイルを見た後にほしい情報がないってケンカを売られている気がする

○細かく分かれすぎ
 さらに悪いことにというか、too fragmentedで、focal areaが生物多様性、温暖化、化学物質、砂漠化&土壌浸食、国際水質、オゾン層に分かれて、さらにその下にoperational programってことでいくつかに分かれて、それとは別にEnabling Activitiesがあって、さらにoperational programの上位概念的なstrategic prioritiesがあって、いろいろ入り乱れて何が何だか一見しただけでは分からない。いや、説明らしいページもあるんですが、これも自己完結してないので、イチイチ担当ページに行かないと違いが分からない。どこで申請できるのかというのが知りたいだけなんですが、例えばSmall Grant Programで申請できるのかなというのは、リンクをたどってSGPのページに行ってみて、Participationのリンクを見て初めてEligibilityが分かるんですが、こんな2,3行で説明できることなんで最初から説明してくれないの、と。
 結局重層的な断片を分け入って コレかな? コレかな? とやってるだけで丸一日日以上かかってしまう。フォーマット探すだけでこんなに大変だったら普通はやる気をなくします。

○目の粗いザル~他の援助機関とのデマケ
 上の細分化とコインの裏表ですが、細分かされたプログラムは所詮目の粗いザルでしかないので、いろんなものが抜け落ちるわけです。例えば生物多様性だったらカルタヘナ議定書のためのcapacity buildingがstrategic priorityになってるのですが、じゃぁ絶滅危惧種の貿易を規制するワシントン条約はどうなるの?(締結していない国が30国ぐらい残ってる)とか、いろんな疑問が沸くわけです。
 んで恐らくはGEFはその沿革から言っても従来の援助機関に追加的なものですぅ~ってことで、そのザルから零れ落ちるものは従来の援助機関を使ってね、ってことなのかと思うんですが(GEFは追加費用(Incremental Cost)を払います、っていう建前にもこの一環かなぁ。違うか?しかもこれが輪をかけて複雑)、だったらGEFじゃなきゃどこにアクセスしたらいいのか一覧性を持たせてほしいわけです。そんなことは全くないわけで、UNDP,UNEP,世銀の寄合所帯のせいで、どこか一つに肩入れできないからですか?と皮肉の一つでも言いたくなる。

 こう言ってはなんですが、私はある程度(少なくとも途上国のフツーの実務者よりは)教育も実務経験も積んでるのにこんなに苦戦するんだから、途上国の担当者が気軽に・簡単に使えるわけないじゃーん。同じことやってるJD生と話をしたら"I'm an educated person, but・・・"って同じようなことを言ってた。こんな状態で、GEFにファンドを出したから使ってね、といわれても、本当は使わせたくないからGEFに出したんだろうとか恨み言の一つでも言いたくなる。
 もっとピンポイントに文句を言うと、国際機関同士の縄張り争いなんて勝手にしてくれというか、ガヴァナンスが効きにくいだけ性質が悪い。無意識に比較してしまうのですが、日本の官僚機構(中央官庁のそれ)の争いは、純粋な省庁益で動くことなんてないというと言いすぎかもしれませんが、ほとんどはoutsideの利益を代弁しているに過ぎないわけで、翻って国際機関同士の縄張り争い、とりわけユニヴァーサルな国際機関同士の争いってそれぞれ一体誰のために戦っているんでしょうかね(・ ・?) 主導権の違う国際機関の争いならまだ分かるんですけど(OPECとIEAとか)、援助機関同士が対立とは言わないまでもビミョーな関係になって一番困るのは途上国なんですけどねぇ。

 国連改革の一環というか、国際機関の非効率はずーっと話題になっていて、環境ネタだとWEO構想(環境ネタの国際組織が条約ごとにバラバラで力も弱いので、World Trade OrganizationならぬWorld Environment Organizationができないかって話、最近だとシラク仏大統領が主張して、EUも支持)が浮かんでは消えるのですが、仮にGEFと3つの実施機関、7つの執行機関の関係がすんなり整理されてone stopサービス的なものができるならそれだけでも意義はある気がしてきました。もっとも、そんなよく分からん組織作っただけですんなり整理されるとは到底思えないのですが。少なくともというか、日本って何となく多国間資金援助が多いようなイメージがありますが、キチンと目を光らせないと本当に援助が必要な途上国ではなくってUN Bureaucracyに貢いでいるだけになりかねないわけで、しっかり物言うドナーになってほしいものです。