大丸ミュージアム・東京 2009年9月10日-9月28日
イタリア美術とナポレオン、という展覧会名がなんとなく掴みどころがない感じではあるが、本展はナポレオン1世の伯父であるジョゼフ・フェッシュ枢機卿(1763-1839)の個人コレクションを基礎として設立されたフェッシュ美術館(フランス領コルシカ島のアジャクシオ市)の所蔵品を紹介する展覧会である。ご存じ、コルシカ島はナポレオン1世の生誕の地。
フェッシュ枢機卿はフランス本土の神学校を出て司祭になったが、1796年のナポレオン1世のイタリア遠征時には一時聖職を離れて従軍、その頃から熱心に美術品の収集を始めた。死後の目録によればその数は16,000点に及んだが、大部分が遺族に相続されるもほとんど競売にかけられ世界各国の美術館に散逸。郷土の文化教育に役立ててほしいと手元に残したイタリア絵画や彫刻、約姉から相続した肖像画など1000点がアジャクシオ市に寄贈された。
フランスにおいてルーヴル美術館の次に多くのイタリア絵画を持つのがこのフェッシュ美術館だそうである。特に17・18世紀のコレクションが充実。
ついでに、現在ヴァチカン美術館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの『聖ヒエロニムス』の、頭部が切断された状態で売られていた絵を古物商で発見して買ったのもフェッシュ卿。メトロポリタン美術館が所蔵するジョルジョーネの『羊飼いの礼拝』も卿のコレクションだったそうな。
さて、本展は57点の絵画(うち1点は3部作)、4点の大理石彫刻、18点の資料からなるが、彫刻、資料は全てボナパルト一族を紹介するもの。絵画にもこの一族の肖像画が10点近く含まれる。
会場に入ると、やや暗めの細長い部屋にバロック絵画が連なり、なんとなくヨーロッパの個人コレクションを公開する邸宅系美術館に入りこんだような雰囲気。
構成は以下の通り、4つの章と二つのセクションから成る:
第1章 光と闇のドラマ―17世紀宗教画の世界
第2章 日常の世界をみつめて―17世紀世俗画の世界
第3章 軽やかに流麗に―18世紀イタリア絵画の世界
第4章 ナポレオンとボナパルト一族
*フェッシュ美術館所蔵のコルシカ風景画家
*ナポレオン関連資料
では、章ごとに印象に残った作品を記しておきたい:
第1章 光と闇のドラマ―17世紀宗教画の世界
『聖母子と天使』 サンドロ・ボッティチェッリ (1467-70年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/3e/278f8c292f934d7b4e37e8fc059eac3a.jpg)
色が退色しているのだと思うが、全体に淡い色彩ながら(色大理石と思われる床は色が流れ出しているように観える)、聖母の薄いヴェールや流れるような衣襞が美しい。まだ師匠リッピの作風が色濃い、ボッティチェリ初期の貴重な作品。解説にある通り、この主題は上半身のみが描かれている場合が多いので、このように立ち姿が全身で描かれている作品はあまり観たことがない。
『聖母子』 ジョヴァンニ・ベッリーニ (1460-80年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/9b/5331bf6298592341f753d80216bcf0bd.jpg)
とても親しみを覚える、清楚な感じの聖母と可愛い幼子イエスの面立ち。優しく自然なポーズ、落ち着いた色彩で、観ていると心が休まる。そばで観ると光輪の打ち出し装飾がレースのように美しい。
『聖ヒエロニムス』 作者不詳 (17世紀前期)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/ee/278d068d2c726e1f1d18a5304ea05073.jpg)
大きな身振りで狼狽する聖人の、右肩や胸骨、みぞおちの辺りの描写に目が行く。身にまとう赤い布が暗い画面に鮮烈に浮かび上がり、ページがめくれる書物も強烈な陰影で描かれている。実は絵を観ているときは気づかなかったのだが、左上から出る手には聖人に向けられたトランペットが握られている。そこからは最後の審判のラッパの音が。
第2章 日常の世界をみつめて―17世紀世俗画の世界
『子供時代』 サンティ・ディ・ティート (1570年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/eb/5adecb56c87e06e584126cb07e0f186d.jpg)
不思議な絵だと思った。両眼をパッチリ開けて、目の前に舞う2羽の蝶を凝視し、右手を伸ばす少女。軽く開いた口元には歯が覗いている。左手には小鳥を握りしめ、固まったようなポーズは人形のようでもある。ドレスの朱、袖の薄紫、オリーブ色の前掛けの布。宗教画に登場する人物たちが身にまとうような色合いの出で立ちのこの少女は何者なのだろう?
サンティ・ディ・ティートはフィレンツェの画家。この作品は人生の四段階を表わしたシリーズの1点で、他に『青年時代』『壮年時代』『老年時代』があるという(是非観てみたい)。この『子供時代』に描かれる少女は、ドレスの朱とコーディネイトしたような珊瑚の首飾りとブレスレットを身につけているが、これは魔よけとして少女を守っており、蝶も足元の風車も、子供時代の不安定さを強調しているとのこと。
『男の肖像』 カルロ・マラッタ (17世紀第四四半期)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/ce/b48cf78c18c8766d8e69e493edfc9185.jpg)
遠目にもこの目力に射られる。この一帯は肖像画が並ぶが、この作品はひと際存在感を放つ。白い肌に紅い唇が強調される、中性的でちょっと爬虫類っぽい顔、胸元のレース飾り、大ぶりなリボン装飾がされた袖、と何だかゴシック・ロマン小説の主人公のようだ。
『風景』 パウル・ブリル (1590-1600年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/41/d46280fd337ca0e12bb7939e706f645b.jpg)
不思議な魅力を放つ風景画。ほとんど青系と茶系の二色の諧調で描きあげられていて、幻想的。ブリルはアントワープ出身で、プッサンやロランなどの古典風景画の先駆者、と解説にあった。
『トルコ絨毯と壁布のある静物』 フランチェスコ・レノッティ (17世紀中期)
とにかく絨毯の質感描写が緻密で見事。絵の具を織り目そのままに盛り上げるような描き方をしていて、そばにある葡萄の瑞々しさとの描き分けが映える。これは実作品を観なくてはわからない。
第3章 軽やかに流麗に―18世紀イタリア絵画の世界
『難破船を救う聖女カタリナ・トマス』 ベネデット・ルティ (1700-10年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/76/60c198b9e383ea055f899cefcdf5f033.jpg)
カタリナという聖女は沢山いてこんがらがるが、ここで登場するのはマヨルカ島出身のカタリナ・トマス(1531-1697)で、船乗りの守護聖女。この船、乗組員の数に対して小さすぎませんか?と思うが、マストにしがみつくカテリナの姿態が異様で印象に残ってしまった。
『リべカの出発』 フランチェスコ・ソリメーナ (1705-10年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/c6/751f039883d707bdfba9c194d59a2858.jpg)
実は中央の一番下で、横顔を見せる犬がおもしろくてピックアップしてしまった。上で厳かに別れの挨拶がされている中、まるで呑気にマッサージを受けているような犬。画像ではちょっと切れてしまってイマイチわかりにくいが、会場でご覧になって下さい。
『サン・ニコラ・デイ・ロレネージ聖堂のドーム装飾のための習作』 コッラード・ジャクイント (1731年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/78/a65db9984adac02e16e649b8782346c4.jpg)
1731年にサン・ニコラ・デイ・ロレネージ聖堂の天井とドームに天国を主題とするフレスコ画を制作するよう注文を受け、その下絵として制作された作品6点のうち3点がフェッシュ美術館に所蔵され、その3点全てが今回展示されている。これはそのうちの1点で、描かれているのは聖ヒエロニムス、マグダラのマリア、聖女アニエス、天使たち。完成品を観たことがないが、下絵の淡い色彩と相まって、柔らかい筆遣いにこちらもふわふわした気持ちに。
第4章 ナポレオンとボナパルト一族
『フェッシュ枢機卿』 ジュール・パスクワリーニ (1855年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/90/52d9068a52ab0d173ad6b916cc20a36e.jpg)
こちらがジョゼフ・フェッシュ枢機卿。聖職者の紅の装束に身を包み、重厚な肘掛椅子の上でやや斜に構える。胸にひと際大きく描かれるのはレジオン・ドヌール勲章。卿の死後に制作された肖像画。
『戴冠式のナポレオン1世』 フランソワ・ジェラール (1806年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/db/81ea3213a0f18b983f919502b4b7b615.jpg)
よく見かけるナポレオンの肖像画。サイズ223x144cm。ナポレオンの親族に配るため多くのレプリカが工房で制作されたそうだが、本作はジェラールの直接の指示のもとに描かれた作品とのこと。ジェラールはナポレオン1世に何度も頼まれて、皇帝一家付きの肖像画家となったそうだ。ビロード、毛皮、絹、金糸、と質感描写は見事だが、それにしても頭のてっぺんからつま先まで、装飾品も含めコテコテの衣裳である。左足を差し出したポーズは、エジプトの神像の真似?
『エリザ・ナポレオーネ像』 ロレンツォ・バルトリーニ (1810年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/8e/95dce8d93ff0ac6356d877dab87ba222.jpg)
ナポレオン1世の姪っ子。解説にある通り、うっとりするほど美しい少女像。ふっくらとした頬、整った目鼻立ち。正面から観ると、その造形の完璧な愛らしさに見とれる。
フェッシュ美術館所蔵のコルシカ風景画家
『バルドニェッロの森』 ジャン=リュック・ムルテド (1866年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/c7/d0ec75a5dae562791e2e7d9fa3bc9444.jpg)
コルシカ島についてほとんど知識がないが、この作品や港などを描いた他の数点の作品を観ると、起伏に富んだ、自然味溢れる島のようだ。1900年以降コルシカ島ブームが起こって、400人以上の画家がコルシカ島を描いた作品をパリの様々なサロンに出品したそうである。
ナポレオン関連資料
ナポレオンの記念メダルや小像などがこまごまと並ぶ中、『ナポレオンのデスマスク』にはビックリした。今までもいくつかデスマスクというものを観る機会はあったが、やはりいつ対面してもドキリとしてしまう。しかもナポレオン1世のそれは複製品が出回り、予約販売が計画されたとある。もの好きな人がたくさんいるんですね。
会期がとても短いので、ご興味のある方はどうぞお急ぎ下さい。
イタリア美術とナポレオン、という展覧会名がなんとなく掴みどころがない感じではあるが、本展はナポレオン1世の伯父であるジョゼフ・フェッシュ枢機卿(1763-1839)の個人コレクションを基礎として設立されたフェッシュ美術館(フランス領コルシカ島のアジャクシオ市)の所蔵品を紹介する展覧会である。ご存じ、コルシカ島はナポレオン1世の生誕の地。
フェッシュ枢機卿はフランス本土の神学校を出て司祭になったが、1796年のナポレオン1世のイタリア遠征時には一時聖職を離れて従軍、その頃から熱心に美術品の収集を始めた。死後の目録によればその数は16,000点に及んだが、大部分が遺族に相続されるもほとんど競売にかけられ世界各国の美術館に散逸。郷土の文化教育に役立ててほしいと手元に残したイタリア絵画や彫刻、約姉から相続した肖像画など1000点がアジャクシオ市に寄贈された。
フランスにおいてルーヴル美術館の次に多くのイタリア絵画を持つのがこのフェッシュ美術館だそうである。特に17・18世紀のコレクションが充実。
ついでに、現在ヴァチカン美術館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの『聖ヒエロニムス』の、頭部が切断された状態で売られていた絵を古物商で発見して買ったのもフェッシュ卿。メトロポリタン美術館が所蔵するジョルジョーネの『羊飼いの礼拝』も卿のコレクションだったそうな。
さて、本展は57点の絵画(うち1点は3部作)、4点の大理石彫刻、18点の資料からなるが、彫刻、資料は全てボナパルト一族を紹介するもの。絵画にもこの一族の肖像画が10点近く含まれる。
会場に入ると、やや暗めの細長い部屋にバロック絵画が連なり、なんとなくヨーロッパの個人コレクションを公開する邸宅系美術館に入りこんだような雰囲気。
構成は以下の通り、4つの章と二つのセクションから成る:
第1章 光と闇のドラマ―17世紀宗教画の世界
第2章 日常の世界をみつめて―17世紀世俗画の世界
第3章 軽やかに流麗に―18世紀イタリア絵画の世界
第4章 ナポレオンとボナパルト一族
*フェッシュ美術館所蔵のコルシカ風景画家
*ナポレオン関連資料
では、章ごとに印象に残った作品を記しておきたい:
第1章 光と闇のドラマ―17世紀宗教画の世界
『聖母子と天使』 サンドロ・ボッティチェッリ (1467-70年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/3e/278f8c292f934d7b4e37e8fc059eac3a.jpg)
色が退色しているのだと思うが、全体に淡い色彩ながら(色大理石と思われる床は色が流れ出しているように観える)、聖母の薄いヴェールや流れるような衣襞が美しい。まだ師匠リッピの作風が色濃い、ボッティチェリ初期の貴重な作品。解説にある通り、この主題は上半身のみが描かれている場合が多いので、このように立ち姿が全身で描かれている作品はあまり観たことがない。
『聖母子』 ジョヴァンニ・ベッリーニ (1460-80年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/9b/5331bf6298592341f753d80216bcf0bd.jpg)
とても親しみを覚える、清楚な感じの聖母と可愛い幼子イエスの面立ち。優しく自然なポーズ、落ち着いた色彩で、観ていると心が休まる。そばで観ると光輪の打ち出し装飾がレースのように美しい。
『聖ヒエロニムス』 作者不詳 (17世紀前期)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/ee/278d068d2c726e1f1d18a5304ea05073.jpg)
大きな身振りで狼狽する聖人の、右肩や胸骨、みぞおちの辺りの描写に目が行く。身にまとう赤い布が暗い画面に鮮烈に浮かび上がり、ページがめくれる書物も強烈な陰影で描かれている。実は絵を観ているときは気づかなかったのだが、左上から出る手には聖人に向けられたトランペットが握られている。そこからは最後の審判のラッパの音が。
第2章 日常の世界をみつめて―17世紀世俗画の世界
『子供時代』 サンティ・ディ・ティート (1570年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/eb/5adecb56c87e06e584126cb07e0f186d.jpg)
不思議な絵だと思った。両眼をパッチリ開けて、目の前に舞う2羽の蝶を凝視し、右手を伸ばす少女。軽く開いた口元には歯が覗いている。左手には小鳥を握りしめ、固まったようなポーズは人形のようでもある。ドレスの朱、袖の薄紫、オリーブ色の前掛けの布。宗教画に登場する人物たちが身にまとうような色合いの出で立ちのこの少女は何者なのだろう?
サンティ・ディ・ティートはフィレンツェの画家。この作品は人生の四段階を表わしたシリーズの1点で、他に『青年時代』『壮年時代』『老年時代』があるという(是非観てみたい)。この『子供時代』に描かれる少女は、ドレスの朱とコーディネイトしたような珊瑚の首飾りとブレスレットを身につけているが、これは魔よけとして少女を守っており、蝶も足元の風車も、子供時代の不安定さを強調しているとのこと。
『男の肖像』 カルロ・マラッタ (17世紀第四四半期)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/ce/b48cf78c18c8766d8e69e493edfc9185.jpg)
遠目にもこの目力に射られる。この一帯は肖像画が並ぶが、この作品はひと際存在感を放つ。白い肌に紅い唇が強調される、中性的でちょっと爬虫類っぽい顔、胸元のレース飾り、大ぶりなリボン装飾がされた袖、と何だかゴシック・ロマン小説の主人公のようだ。
『風景』 パウル・ブリル (1590-1600年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/41/d46280fd337ca0e12bb7939e706f645b.jpg)
不思議な魅力を放つ風景画。ほとんど青系と茶系の二色の諧調で描きあげられていて、幻想的。ブリルはアントワープ出身で、プッサンやロランなどの古典風景画の先駆者、と解説にあった。
『トルコ絨毯と壁布のある静物』 フランチェスコ・レノッティ (17世紀中期)
とにかく絨毯の質感描写が緻密で見事。絵の具を織り目そのままに盛り上げるような描き方をしていて、そばにある葡萄の瑞々しさとの描き分けが映える。これは実作品を観なくてはわからない。
第3章 軽やかに流麗に―18世紀イタリア絵画の世界
『難破船を救う聖女カタリナ・トマス』 ベネデット・ルティ (1700-10年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/76/60c198b9e383ea055f899cefcdf5f033.jpg)
カタリナという聖女は沢山いてこんがらがるが、ここで登場するのはマヨルカ島出身のカタリナ・トマス(1531-1697)で、船乗りの守護聖女。この船、乗組員の数に対して小さすぎませんか?と思うが、マストにしがみつくカテリナの姿態が異様で印象に残ってしまった。
『リべカの出発』 フランチェスコ・ソリメーナ (1705-10年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/c6/751f039883d707bdfba9c194d59a2858.jpg)
実は中央の一番下で、横顔を見せる犬がおもしろくてピックアップしてしまった。上で厳かに別れの挨拶がされている中、まるで呑気にマッサージを受けているような犬。画像ではちょっと切れてしまってイマイチわかりにくいが、会場でご覧になって下さい。
『サン・ニコラ・デイ・ロレネージ聖堂のドーム装飾のための習作』 コッラード・ジャクイント (1731年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/78/a65db9984adac02e16e649b8782346c4.jpg)
1731年にサン・ニコラ・デイ・ロレネージ聖堂の天井とドームに天国を主題とするフレスコ画を制作するよう注文を受け、その下絵として制作された作品6点のうち3点がフェッシュ美術館に所蔵され、その3点全てが今回展示されている。これはそのうちの1点で、描かれているのは聖ヒエロニムス、マグダラのマリア、聖女アニエス、天使たち。完成品を観たことがないが、下絵の淡い色彩と相まって、柔らかい筆遣いにこちらもふわふわした気持ちに。
第4章 ナポレオンとボナパルト一族
『フェッシュ枢機卿』 ジュール・パスクワリーニ (1855年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/90/52d9068a52ab0d173ad6b916cc20a36e.jpg)
こちらがジョゼフ・フェッシュ枢機卿。聖職者の紅の装束に身を包み、重厚な肘掛椅子の上でやや斜に構える。胸にひと際大きく描かれるのはレジオン・ドヌール勲章。卿の死後に制作された肖像画。
『戴冠式のナポレオン1世』 フランソワ・ジェラール (1806年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/db/81ea3213a0f18b983f919502b4b7b615.jpg)
よく見かけるナポレオンの肖像画。サイズ223x144cm。ナポレオンの親族に配るため多くのレプリカが工房で制作されたそうだが、本作はジェラールの直接の指示のもとに描かれた作品とのこと。ジェラールはナポレオン1世に何度も頼まれて、皇帝一家付きの肖像画家となったそうだ。ビロード、毛皮、絹、金糸、と質感描写は見事だが、それにしても頭のてっぺんからつま先まで、装飾品も含めコテコテの衣裳である。左足を差し出したポーズは、エジプトの神像の真似?
『エリザ・ナポレオーネ像』 ロレンツォ・バルトリーニ (1810年頃)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/8e/95dce8d93ff0ac6356d877dab87ba222.jpg)
ナポレオン1世の姪っ子。解説にある通り、うっとりするほど美しい少女像。ふっくらとした頬、整った目鼻立ち。正面から観ると、その造形の完璧な愛らしさに見とれる。
フェッシュ美術館所蔵のコルシカ風景画家
『バルドニェッロの森』 ジャン=リュック・ムルテド (1866年)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/c7/d0ec75a5dae562791e2e7d9fa3bc9444.jpg)
コルシカ島についてほとんど知識がないが、この作品や港などを描いた他の数点の作品を観ると、起伏に富んだ、自然味溢れる島のようだ。1900年以降コルシカ島ブームが起こって、400人以上の画家がコルシカ島を描いた作品をパリの様々なサロンに出品したそうである。
ナポレオン関連資料
ナポレオンの記念メダルや小像などがこまごまと並ぶ中、『ナポレオンのデスマスク』にはビックリした。今までもいくつかデスマスクというものを観る機会はあったが、やはりいつ対面してもドキリとしてしまう。しかもナポレオン1世のそれは複製品が出回り、予約販売が計画されたとある。もの好きな人がたくさんいるんですね。
会期がとても短いので、ご興味のある方はどうぞお急ぎ下さい。