映画「ノルウェイの森」を観た。
村上春樹さんの原作は読んでいないが、文字言語表現による作品と、映像+音声言語表現による作品は 《似ている別物》 なので、ここでは映画作品についてだけの主観的感想ということになる。
《男と女の愛》 を描いた作品として、これまで幾百と読んだり観たりしたなかでも、特に心に残る作品だった。
薄っぺらな、動物的な 「恋愛至上主義の感情」に陥ることなく、《こうありたい男女の愛の関係》 をみごとに描いている。
もっとも印象に残った言葉は、とても人間として魅力的な主人公の若者が、新しい女友だちに言った 『人間としての責任がある…』という言葉。
《人間としての責任をもって生きる青年》 の心のなかにある《女性への愛》 のなんと確かで嬉しいものであるか…
男女の愛のかたちは、長い目でみれば実は散文的な生活ではある。 長い関係の中で、美しいとき、可愛いときもあるが、汚いとき、醜いときもある。
長い長い散文的な愛のかたちのなかで、煌めくように結晶化する瞬間がある。
そんな瞬間を知っている男女だけが、この映画に静かに涙するのだろう。