④ 巻末の歴史年表ではどう表現しているか? 例:育鵬社と東京書籍
・育鵬社は縄文時代を紀元前15000年前から表示しているので、前後関係はあきらか。
・一方、東京書籍は同3000年前から表示しているので、縄文と「4大文明」の開始期の位置がほぼ同じになっている。
(※蛇足:上記中、「…日本列島ができる」という表現は誤解されやすいので、「…日本列島が完全に大陸から分離した」などと表現したほうがいいのではないだろうか。)
■考察
~時間的順序の重要性~
あるできごとの全体像を他者に伝えるときは、《いつ、どこで、だれが、どのように、なにをした/なぜ》という5W1Hが原則とされている。
そのなかでも、《いつ、どこで、だれが、なにをした》という4つの要素は、客観的に事実を伝えるためには最低限の必須要素。それは歴史的できごとの伝達においても同じだ。
歴史の研究・学習の場合、「いつ」の情報が欠ければ、資料的価値は(ほとんど)ない。
また、歴史の理解において、《複数のできごとが起きた時間的順序(前後)》の理解は欠かせない。
それがなければ、複数のできごと間の因果関係や影響の探求ができないからだ。
~時間順序を逆転した理由が理解できないが…~
驚くべきことに、東京書籍・教育出版・日本文教・学び舎では、はるかに古い「日本の旧石器時代」を、「世界の古代文明」の後に置いている。
中学生は「古い順に書いてある」という先入観をもっているはずだ(実際、他の項目はそうなのだから)。
したがって、この4社(と帝国書院)の教科書で学ぶ中学生の多くが、《古代の日本はとても遅れていた》という印象をもつ可能性が高いと思われる。
東京書籍などが歴史事象の始まりの時間順序を逆にした理由について、「人類(世界)の歴史を重視」とか「世界とつながる日本という歴史観を重視」、「世界市民を育てたいから」などが考えられるが、それはわざわざ逆転しなくても充分表現できることだ。
いったいどんな理由でこんなことをしているのだろうか?
育鵬社・自由社・清水書院による≪生起順序どおりの提示≫のほうが、誤解を生ませない妥当な方法だと思えるが…