柚月裕子の「風に立つ(中央公論社)」を読了しました。ボク、柚月裕子の小説って好きなんですよね。ボクがよく読む3人の女流作家の中の1人です。ちなみに3人とは、辻堂ゆめ、瀬尾まいこ、柚月裕子です。彼女らが綴る物語は、「ハズレ無し」って感じですよね。
さて、今回読んだ「風に立つ」について紹介しますね。まずはAmazanに掲載されていた作品紹介から。
問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度ーー補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑う悟。納得いかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬(すく)いとる、著者会心の新たな代表作!
柚月裕子さんって、岩手県の出身なんですね。故郷・盛岡の自然や文化が、この作品の中にはふんだんに盛り込まれ、ボクもかつて何度か訪れた岩手の光景を思い浮かべながら読み進めました。今、山火事で話題になっている岩木山の描写なども、小説の中に何度か出てきましたよ。
小説のテーマは「親子問題」です。職人の父・孝雄と息子・悟の親子関係。犯罪を犯した16歳の春斗とその父でエリート弁護士の達也の親子関係。「もう、辛い思いをするのは嫌だ」とわが子に自分のような苦労をさせたくない親心、これもわかります。だけど、「自分の将来や生き方は自分で決めたい」という子どもの気持ちもわかります。登場するどの人物も辛い過去を抱え、それを乗り越えて生きてきており、そしてみんなで春斗を見守って支援していこうという、温かさに満ちた物語でもありました。
盛岡のチャグチャグ馬コ、南部鉄器の製造工程、「グスコーブドリの伝記」(宮沢賢治)、東北の厳しい気象などが巧みに小説に織り込まれ、岩手の風土を感じながら一気に読み終えました。さすが!柚月裕子!今回も面白かったです!