今日も、金の星社の「漫画家たちの戦争」シリーズの紹介です。今回紹介するのは、Ⅱ期シリーズ2作目の「引き揚げの悲劇」です。
戦争中に日本以外の土地で暮らしていた日本人、特に一般の人たちが戦争と敗戦でどれほどの苦難を強いられたのか、日本への引き揚げの途上で命を落としたり、捕虜となり収容所に入れられたり、外地に取り残された人が数多くいたり、不条理な歴史の事実を各作品では丹念に描写しており、読みながら受けるその衝撃は大きいです。
収録作品は、以下の7作です。
●村上もとか 『フイチン再見!』
●ちばてつや 『家路 1945〜2003』
●石坂啓 『幻の子どもたち』
●巴里夫 『赤いリュックサック』
●矢島正雄・原作 弘兼憲史・画 『人間交差点』より「海峡」
●おざわゆき 『凍りの掌 シベリア抑留記』より「出征」
●望月三起也 『二世部隊物語 最前線』より「流血の丘」
これらの作品の中で、今回は”ちばてつや”の「家路 1945~2003」を紹介します。
”ちばてつや”と言えば、不朽の名作である『あしたのジョー』をはじめ、『ちかいの魔球』『ハリスの旋風』『おれは鉄兵』『あした天気になあれ』『のたり松太郎』などなど、ボクらが少年期から青年期に夢中になった作品がたくさんある漫画家です。そういえば「紫電改のタカ」のような戦争物の作品もあったなぁ…と今回あらためて思い出しました。
「家路 1945~2003」は、戦後、満州からの一家引き上げ記録、少年時代のちばさんの自伝的な作品です。着の身着のまま歩いて氷点下30度の極寒の満州から朝鮮半島の逃避行。 途中、飢え、寒さ、病気で亡くなった日本人は30万人を超えました。 日本人を敵視する中国人・朝鮮人の中を、食料もなく日本へたどり着きます。引き揚げはまさに命がけであったことが、赤裸々に描かれています。
満州からの引き揚げで命を落とした日本人は、ソ連軍との戦闘で死んだ人を含め24万人。これは原爆の犠牲者や沖縄戦の犠牲者よりも多いと言われています。この事実を、”ちばてつや”らの漫画による描写で追体験することは、今を生きる日本人にとってもとても意義あることだと思いました。