山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

インテリは間違う

2005年05月29日 | 政局ウォッチ
相変わらず経済には疎いのだが、29日付毎日新聞に掲載された玉置和宏論説委員のコラム「学者とメディアの責任」には潔さを感じた。インテリは間違う。そのことを改めて肝に銘じるためにも、この10年の経済政策をめぐる「学者とメディアの責任」は一度総括しておく必要があるかも知れない。

「小泉構造改革で唯一の勝利は公共事業をしなくともいくらでも景気は回復するということを身をもって示したことにある。これは4年の政権掌握の期間で最も印象的な成果だった」
「つい昨日までゼネコン推薦と見まがうような経済学者やテレビのコメンテーターたちが『公共投資はツーリトル・ツーレート』などと米国の財務長官の口まねをしていたのが本当に懐かしい」―。

玉置氏はそう皮肉った上で、次のように言う。

「しかし最大の罪は一応世間から多少は信頼されている新聞の社説にある。とくに97年から本紙を除く新聞の多くが『大減税よ、大公共事業よ。デフレ対策よ』と騒いでいたことを思い起こすと感慨深い(縮刷版で比較されよ)。テレビと違って新聞社説は活字であるから何百年でも残る。論説委員は見通しの悪さを読者に謝っておいたほうがいい」

玉置氏によると、ノーベル賞学者フリードリッヒ・フォン・ハイエクが主張するごとく「公共事業をすることは百害あって一利なし」「景気の調節に財政を使っても効果がない」のであって、米英両国は80年代に「ケインズの亡霊から脱却」していた。

「92年の宮沢政権からあの小渕-森ラインの『税金バラマキ路線』に至るわずか10年間で日本財政を壊してしまったのは歴代の首相の責任だけではない。提灯(ちょうちん)を手に持って債務地獄への道を先導した政治家、官僚そしてメディアだ」―。

玉置氏の批判の矛先は、ハイエクを「右翼の学者」と軽蔑した日本のケインジアンたちだけでなく、公共事業による不景気脱出を「経済学のイロハのイだ」などと喧伝し、ときの政権を批判し続けたメディア自身にも向けられている。

つい最近までマルクス経済学を信奉する学者がいたこと、インテリ顔の大手新聞がかつて北朝鮮や中国への「幻想」を振りまいていたことなどを考えあわせると、わが国の「知的世界」の成熟度は甚だ心もとなく思えてくる。ワダベン似の声で小泉批判を繰り返す元大蔵省財務官の「講釈」を、だから私は信じない。(了)

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