山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

「徹底抗戦」か「修正協議」か―55年体制後の野党の在り方

2004年05月14日 | 政局ウォッチ
国民やマスコミは、55年体制の崩壊後、国会での野党の役割に対する基本認識が未整理な状態にある。年金改正法案をめぐる混乱を見ていて、そう思った。

政府与党の提出した法律案が、まったく話にならない欠陥法案であった場合、野党の対応としては①対案を出す②修正を求める―の2つのパターンが考えられる。大前提として、国会内で過半数を持たない少数派を「野党」と呼ぶわけであるから、その意味で①対案は、採決で否決される宿命にある。問題はその先だ。

野党案が否決され、政府与党案が多数で可決されそうな状況に直面したとき、野党はどういう態度をとるべきか。今回の年金法案に関する報道を見ていると、「政府案に反対し、修正に応じるべきでなかった」との見方が多かったように思う。しかし、民主党執行部としては「いつまでも反対していたって、とんでもない政府案が通過してしまうだけ。それより少しでも良い形に修正させる方が、国民のため」という発想があったように思う。

一方、民主党内でも小沢一郎代表代行らは、「政府案を強行採決させ、その理不尽さを選挙で訴えるほうが有利。修正などもってのほか」という考えだったようだ。小沢氏の戦略はこうである。

▼国会で多数を占めてない以上、野党が政府案を阻止できないのは当然。
       ↓
▼政府案を阻止するためには、国会で多数をとる必要がある。
       ↓
▼そのためには国会で政府与党に徹底抗戦し、国会空転から政局、内閣総辞職に持ちこむ。
       ↓
▼政局の混乱を理由に、有権者の信を問う解散総選挙を実施させる。
       ↓
▼選挙で政府与党の非を訴え、野党側が勝利、政権交代へ。

―執行部の方針、小沢氏の戦略、いずれも説得力のある話だ。問題は、そうした事態に際して、国民やマスコミがどちらを支持するかということ。

新進党の「座り込み騒動」を思い出せば分かる通り、小沢氏流の「徹底抗戦」「審議拒否」戦術は、世論の受けがよくない。マスコミは野党の審議拒否に対して、すぐに「かつての社会党のようだ」との批判を浴びせる。こうした事情から、現在の民主党執行部は「政権を目指す責任政党」を標榜し、審議拒否などの戦術は「交渉手段」として最小限度に抑え、与党との修正協議を通じてより良い立法を目指す方針を堅持しているのだ。

しかし、今回の年金法案では、マスコミは新進党時代から一転、小沢氏流の徹底抗戦路線を支持し、後者の執行部方針を批判した。菅直人代表らにしてみれば、「一体どうしろと言うのか」と問いたい思いだったろう。

「年金未納」を政治問題化してしまった菅氏の戦術は失敗だったと思っているが、それでも私には、年金法案に修正附則を付けさせたこと自体が、党首辞任に値するほどの大失態だったとは思えないのである。(「大きな成果」と自慢できるものでもないが) 

いずれにしても、「55年体制崩壊後の野党の在り方」について、国民とマスコミの腰が定まっていないことが、民主党の混乱を大きくしている側面は否めないと思う。(了)


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