山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

007と民主党

2006年03月31日 | 政局ウォッチ
英映画007シリーズの次回作「カジノ・ロワイヤル」で6代目ジェームズ・ボンド役を演じるダニエル・クレイグ=写真が、ファンの間ですこぶる不評らしい。反対派サイトは「ボンド役として絶大なる人気を博していたピアース・ブロスナンを解雇したばかりか、背が低く、金髪で、変な顔のダニエル・クレイグを起用し、ファンを侮辱した」という声明文を掲載、ボイコットを呼び掛けているそうだ。(「ファンが新007をボイコット!」

ファンの怒りも分からないではない。コネリーやムーアに親しんだ世代としては、「やっとブロスナンが定着してきたのに、また替えるのか」という不満はあるだろう。評価が定着する前にコロコロ主役を替えてどうするのか、と。

迷走の末に、とうとう民主党代表を辞任した前原誠司氏の心中にも、おそらく007ファンと同じ思いがあったのではないか。

民主党は菅直人、鳩山由紀夫という2人の政治家がつくりあげた政党だ。言ってみれば、2人は民主党にとってのコネリーとムーアである。先鋭的な政治姿勢が人気だった菅代表は、度量の狭さが「イラカン」と嫌われ、包容力で人気のあった鳩山代表にバトンタッチ。その鳩山氏は「優柔不断」と批判され、菅代表が再登板した。

「ネバーセイ・ネバーアゲイン」のコネリーは、老けてはいたが、やはり存在感があった。小泉首相を挑発し、ギリギリと追い詰める菅代表の姿にも、円熟したコネリーと同じ迫力があった。

年金問題で菅氏が失脚した後、「真面目さ」が売りの岡田克也氏が党代表に就任。どことなく4代目ティモシー・ダルトンを思い起こさせる岡田氏が、私は案外、嫌いじゃなかった。

「リビング・デイライツ」でボンドガールと真面目にデートし、賛否両論を巻き起こしたダルトン。2作目の「殺しのライセンス」では、殺された同僚の復讐に燃える偏執気味なボンドを演じ、不興を買って降板していった。「さえないボンド」として評判は良くないが、やはり個人的にはお気に入りの部類に入る。

5代目ブロスナンは確かにハンサムだったけど、ボンド役にはどうだろうか? という思いが拭えなかった。ボンドは殺人ライセンスを持つ諜報員。別にハンサムで悪いことはないけれど、目の奥底にある種の「非情さ」「冷酷さ」が滲み出ている俳優であってほしい。そうした危険な香りに加えて、イタズラ好きな少年の顔を備えていれば、なお良し。

もっとも、原作者イアン・フレミングが抱いたボンド像は「北北西に進路を取れ」などで知られる俳優ケーリー・グラントだったというから、そのイメージに最も近いのは3代目ロジャー・ムーアなのだろう。英国紳士の雰囲気漂うブロスナンも、どちらかといえば、ムーア路線だった。

それでもコネリー派の私には、ムーアやブロスナンもいいけれど、今ひとつ「しっくり来ない感」が強いのだ。その点、新ボンドに選ばれたダニエル・クレイグは結構、良い線行ってるではないかと思う。ハンサムではないけれど、スパイ然としている。何より目が冷たい。

あのルックスで、マネーペニーをお茶目なジョークでからかいつつ、スタイリッシュに危機を乗り切る姿を想像してみる。うむ。なかなか良いではないか。

地味だけど、手堅く仕事のできる主演俳優。民主党の次期代表にも、そんな人物が就けばいい。派手なスキャンダル攻撃よりも、実直な対案路線のほうが、民主党には向いている。観客席からはいろいろ言われるだろうけど、批判は実績で跳ね返すしかないのだ。〔了〕


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