
新潟の魚沼丘陵に当間(あてま)山という山がある。
この山のことは、前にも紹介した打田さんの「藪岩魂」で知った。ブナの美林があるという。
いずれその時期に行ってみたいと思っていた山だ。
そんなとき、いつもの山仲間からブナの新緑がみたいと声があがったので、一も二もなくこの山をあげた。
魚沼丘陵の下部、信濃川の河岸段丘の上が広い範囲で当間リゾートとして開発されている。
そのリゾート地の奥まったところ駐車スペースがあり、そこが出発点だ。
ところがついてみると、予想外なことに、その駐車場の付近も道路以外はまだ残雪で真っ白だった。
足元の道路端にフキノトウがたくさん顔を出している。
GW直後なのだが雪国ではまだ春のはじめだ。
舗装の道を歩き出すと、もっとたくさんのフキノトウがあった。
道端だけではない。空き地一面がフキノトウでおおわれている。
そしてそこには「私有地なので野草を勝手に取らないで」と看板に書かれていた。
リゾートホテルのための野草畑なのかもしれない。
道はほとんど平坦といってもいいほど緩やかなのぼりだ。
途中に泊り客に見せるためのものか小さな天文台の建物があり、そのあたりから舗装道路も含めてすっかり雪におおわれてしまった。
ネット情報で残雪の状態は調べてあったが、去年も一昨年もこんなに雪がある状態ではなかったので、やはり今年の冬は豪雪だったということらしい。
途中にあるという送電鉄塔が見えてきた。
鉄塔の下のブナの木のかたわらに道標が立っていた。
しかし、近づいてみると、雪で壊れないためか取り外して柱に固定されていた。
その送電鉄塔付近で道が曲がり、そのうえいくつかに分岐していた。
そのうえあたりは広く開けているので、めざす登山道がわからない。
実は、このルートの地理院地図を紙ベースにして持ってくる予定だったのだが、うっかり忘れてしまった。
それに、こんなに残雪が多いとは思っていなかったのだ。
しばらく、あたりを歩いたり磁石で方位を確認したりした後、なんとかルートを見定めて歩き始めた。
写真のように、あたり一面、雪解けによって倒れていた灌木が立ち上がり始めており、その間を縫って歩くような状態だった。
倒れていた灌木の枝に黄色い花が咲いていた。マンサクだ。
雪国の春を象徴する花のひとつだ。
残雪は固く締まっているのでツボ足でもほとんどもぐらないので歩くのにそれほど苦労はない。
ようやく人の手の入っていない感じのブナの林に到着した。
曇りだった空からも少し日差しがもれ始めたようだ。
足元は一面の残雪だが、太めのブナの根方は雪が解けて地面がのぞいている。
それでみると雪の残りはあと20~30センチだろうか。
しばし、美しいブナの新緑をあじわう。
東西南北、360度がブナの純林だ。
見渡せば一帯が平らな地面のようだが、山にむかって右側、左側それぞれが斜面に区切られた幅の広い尾根の地形になっている。
踏み跡も見当たらないが、地形にそって上をめざせば山頂にむかうことはでそうだ。
しかし、同行者はやはり不安のようなのでこのあたりで引き返すことにした。
この美林を見られたのだからこれ以上進む必要もないだろう。
駐車場から歩き始めてまだ1時間ほどだが、ここで撤退することにして記念撮影。
雪の重みに耐えて曲がったブナたちに別れを告げ引き返す。
鉄塔まで戻り、ここでまた間違えて、来た道と並行した別の道にはいってしまった。
すぐに気が付いたが、その道は下で駐車場とつながっていることがわかっていたので、引き返さずにそのままくだった。
途中に一面の雪の中、水路のところだけ雪が消えていて、なんだか写真を破いたように見えるところがあったので写真に撮ってみた。
車に無事戻ってきたが、まだ11時だ。
これからどうしようと相談し、山歩きはあきらめて清津峡を見に行くことにした。
国道353号線に出てから、途中で清津峡の看板に案内されていく。
道は狭い谷間の手前の数軒のホテルや飲食店のところで行き止まりとなり、駐車場がある。
GWは終わったけど車がたくさんとまっていて、片隅にようやくとめることができた。
遊歩道を谷間へと歩いて行くと、両岸がそそりたった谷間から雪解け水を集めた清津川が音を立てて流れていた。
料金一人1000円をはらってトンネルにはいる。
途中にある横穴からこの峡谷をつくりあげている柱状節理の絶壁がながめられる。
日本列島の形成とも関係する壮大な火山活動の痕跡だそうだ。
狭い谷底は、崖から落ちてきた大量の雪で埋まり、その下から大量の川の水があふれだしていた。
このトンネルは、もともとあった谷間の遊歩道が落石の危険のため閉鎖となり、なんとか観光客をつなぎとめるために掘られたものだそうだ。
観光目的でトンネルを掘ったとはなかなかの発想ではないか。
柱状節理はマグマが冷えて固まる過程で形成されるそうだが、谷底から山の上まで分厚いマグマが溜まっているさまを想像してみる。
三つある横穴はそれぞれ趣向をこらしたデザインがほどこしてあった。
そこから覗く絶壁は、一面が柱状節理でおおわれている。
そして最後のところが清津峡の観光ポスターに登場するトンネル内の水鏡。
両脇を浅いところを歩いてトンネルの端に行くことができ、なかから水鏡に写ったシルエットを撮影できるのが人気になっている。
私も奥まで行ってみたが、外はまだ汚れた雪におおわれていた。
こうして今回の当間山ハイキングは、半ば観光となって無事終了。
帰路についた車からながめた残雪と新緑の風景は、関東とは違う雪国の春を感じさせるもので心に残った。
近いのだから、来年もまたこの季節にまた来て、雪国の春を味わいたい。
最後に地図と迷った地点の拡大図をのせておく。
地理院地図と実際は少し違っていた。
実際は鉄塔の手前で道が左に曲がり、その先の分岐で右へ。
さらに少し先で再び斜め右へと分岐している。送電鉄塔を時計回りに回り込む感じなのだ。
でもそのことは、ヤマップなどのデータにはちゃんと反映されていた。私の調査不足だ。
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