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**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

りうさん

2006年04月02日 | 病棟
・・・りうさんが 亡くなりました。
家族みんなのお見舞いを済ませ、
私たちに存分にお世話させてくれてから
天国に旅立ちました。
その日は 日勤のリーダーで
ぐんぐん落ちていく状態を止めるすべもなく
夜勤者に引き継ぎました。
「りうさんの最期を看取れるのは光栄です」
そう言って涙ぐんでくれた同僚と相談して
モニターを付けました。
ナチュラルコース希望で
酸素もモニターも点滴もする予定はなかったのですが、
気付かないうちにひっそりと旅立ってしまうのは
どうしても避けたかったのです。
手を握り 見送りたかったのです。

 「静かな最期だったよ」

一世紀近い激動の世の中を生き抜いたりうさん、
出会えて嬉しかった。
お世話させてくださって有難う。

がんばれ って辛い・・・

2006年03月16日 | 病棟
掃除の方が りうさんに 小さな声で話しかけているのを聞きました。

「・・・ねえ、りうさん。100にもなったらそんなに頑張れないよねえ。
 もういいよ。みんなの思いなんて関係ないから。
 逝きたくなったら逝ってもいいんだよ。
 がんばらなくてもいいんだからね。」

わたしたちの思いは、りうさんにとって重たいんだろうか。
長く生きることが 生かすことが 彼女にとって幸せなんだろうか。
無理に勧めるこの食事は ほんとにりうさんの為なんだろうか。

だれか 教えて。

幼児返り

2006年03月16日 | 病棟
大好きなりうさんが 食事を食べなくなりました。
100歳近いりうさんに 家族は医療行為を望んでいないので
食事は彼女の生命力に直結しています。
少しづつ手を変え品を変え、時間をかけて食べさせることで
なんとかこの状況を乗り切りたいと
病棟の誰もが願っています。

そんなりうさんが少しづつ幼児返りをしています。
娘の名を呼んでいたのが「おかあさ~ん」「おとうさ~ん」に変わり
「八つで学校に行ったの。今日は学校に行かなくていいの?」と心配し
春が来た や、はとぽっぽ を歌っている。

かすかに見え隠れする終わりを 切ない気持ちで見守るばかり・・・・

軽自動車と坂道の舞

2006年03月16日 | 病棟
私は基本的に病棟担当なのですが、人手不足が続き
訪問看護も数件受け持っています。
そのうちの一軒は 里山をぐんぐん登っていったところにあります。
結構キツイ坂&クネクネ道を急な角度で左に入ります。
そんなところですから 普段はあまり他の車に出会うことはありません。

ところがその日は 左折しようとしたら向こうから車が下りて来ました。
タイミングはあちら優先。
スキーの上・中級コースくらいの坂道の途中で ブレーキを踏みました。
優雅に手を上げて挨拶し、さて発進・・・

 「・・・この車、オートマだったよね?」
 「勿論!どうしたの、マムさん?」
 「アクセルに踏み換えたいんだけど、足離すとごーっと後に落ちちゃうみたい・・」
 「・・わああ、後から車来てるよっ、どうする!」

こんな経験したことなかった私は バレリーナのように
左足をそろりとクロスしてアクセルを踏んだのでした。
急角度の左折の為に 手はハンドルをくるくる回して。
それを見て、「坂道の舞」だと言って助手の中野さんが大笑いしました。

落ち着いて考えたら、一度サイドブレーキ引けばよかったんだね~~~
 

パートのナースって?

2006年02月01日 | 病棟
なんだか、患者さんが減っています。
外来が少ない。
去年の今頃からは、インフルエンザの入院がどっと増えてた。
それこそ、午前退院・午後入院でフル稼働だったのに。

うちは 予定入院は ない。
ほぼ100パーセント 急患。
外来で診て、「今から入院です!!」の院長の鶴の一声で決まる。
だからいつでも臨戦態勢で 過ごす。
16時45分申し送りなのに、16時30分入院もある。
レントゲン・採血・ライン確保・アナムネ・食箋・指示受け・・・
患者さんの平均年齢をとったら、
たぶん70歳は楽勝に超えるような地元密着高齢者専用病院なので、
説明・アナムネ 時間がかかる。

でも、いないよりいてくれたほうが いい。

今年は、薄利多売、インフルエンザの予防接種を打ちまくった。
こんな小さな診療所なのに、1000人超えだった。
患者数の減少は 喜ぶべきこと。
でも、医院としては収入減。
あおりを食って、パートの私は勤務時間を減らされて
大きな収入減だ~~!!!

なんだかなあ、素直に喜べないのよ。
態度に出すわけじゃないけど、
「患者が少ないから、今日は病棟看護婦は一人でいい」
なんて言われちゃうと、
私は日雇い労働者か、って。
たった2時間働いて帰される、なんか納得いかない。
忙しい時は5日勤・6日勤なのにねぇ・・・。





さよなら 

2005年12月06日 | 病棟
和子さんが 自宅で亡くなりました。
訪問ヘルパーさんが発見して 連絡してきたのです。
和子さんは 何度かショートステイで預かりましたが
認知症なのに一見しっかりして見え
プライドも高い、その上歩き回ることの出来る
手のかかる患者さんでした。
頻回に鳴るナースコール・・・夜中に徘徊・・・

でも何より手強いのは ご家族でした。

どんな経緯があったか 知ることは出来ません。
家庭の事情には入り込ませないぞ、という目に見えない壁が
ピンと張り巡らされていましたから。
でも、カバーオムツに重ねるパットオムツ代わりに
ペット用おしっこシートを持たされ
豊かな白髪は 山姥のように乱れたままやってくる姿に
暗闇が見え隠れしているように思っていました。

それでも前々回のショートでは
帰る前に髪を梳いて綺麗に束ねると 
和子さんはうれしそうに笑いました。
「感じのいいあんたが当番でよかったよ」と 饒舌でした。
前回は 辛いところはどこもないと言うけれど
一日中ベッドで寝てばかりでした。
夜間徘徊は 看きれないので
次は預かれないと家族に説明すると
「絶対部屋から出ちゃダメなんだよ!!!」と怒鳴りつけられ
悲しそうに微笑んでいました。

今はもう終わってしまったことですが
どうすることも出来なかった状況を
切なく申し訳ない気持ちで 思い出しています。
看護・介護の限界、自分の限界です。

和子さん、天国では全て忘れて幸せにね。

・・・で、でたぁ~~~!!

2005年12月04日 | 病棟
久しぶりに 出ました。
あの世の人です。
日勤と外来が終わり、掃除をしていたおばちゃんが
納戸のドアが半分開いていることに気付きました。

(・・あれ?全然使ってないのに 何でドアが開いてるんだろう?)

何気なくドアを開け、中を確認。
視線を感じてふと目を落とすと、
丁度ひざの辺りにぽっかりと顔が!!
表情のない目で じっと見上げていたんだそうです。

「怖すぎて声も出なかった。あんまりはっきりした顔だったから
 誰か子供が隠れてしゃがんでいるんだと思った」 そうです。

この納戸は、昔レントゲンの現像室として使われていた
一畳もないような小部屋です。
現像室なので窓もなく、水場があるのでじっとりと湿った
嫌な空気と’気’が澱んでいる場所なんです。
開かずの扉化していたはずなのに・・。

誰かがドアの前にイスを置いて、又開かなくしてありました。
病院では 時折不思議なことが起こります。

老人と耳掃除

2005年10月19日 | 病棟
病棟にやってくるお年寄り。
長期介護入所者は みんなぴかぴかです。
入浴は週1回、一人当たり30分指先から足の裏まで磨きます。
おしっこくさいなんて 言語道断、
一日置きに清拭して陰洗は毎日
口腔ケアに爪きり・耳掃除、
 (清潔行為はどこにも負けない、褥創も治す!!)
そんな無言の気概が漂っています。
だからね、「ここに入院したらおばあちゃんが色白になった」なんて
うれしい言葉を頂くことも 多々あります。

今日、転院してきたばかりのおばあちゃんの耳掃除しました。
うおおおおぉおおお~~~~!
塊で奥が見えない!!
少しづつ掘っていくと、突然大きくスポンと取れました。
穴のかたちに長さ1.5センチ・・・・・

「お~~い、こんにちは、聞こえますか~!!」
思わず呼び掛けたら、同僚が冷たく一言。
「・・・・あのね、聴力障害じゃなくて、脳の機能の問題だから。」

期待しちゃうよねえ。

お年寄りって 耳掃除まで気が回らないのか、
結構貯めているんです。
聴こえの悪さの一因ではないのかな。
いえにお年寄りがいる方、
時々は昔話でもしながら、耳掃除してあげてね。


介護の等級の不思議

2005年10月11日 | 病棟
病棟で一緒に働く山田さん、私の一つ年下。
でもいろんなところで働き、経験を積みながら
看護婦の仕事をず~~~っと続けてきた大先輩です。
偉ぶることもないし、どんな状況でもパニックになったり
他人を責めたりしない。
いつも淡々と仕事をこなして、且つ患者さんに優しい。
彼女は気付かないけど、助手さんたちは山田さんが一番好き。
私も そう。

その山田さんが 訪問入浴サービスに携わっていた時。
浴槽のセットも終わり、患者さんの準備に入ろうとして・・・。
 (あれ?いない。誰を入れるの???)大きなハテナを抱くみんなの前で、
今まで庭で草むしりをしていたおじいちゃんが
「おお、準備できたのかね?」とおもむろに服を脱いで
ポータブル浴槽に自分で入ったそうです。
複雑な想いを抱えたまま、綺麗に体を洗ったんだけど、
介護認定ってナンなんだろうかと 今でも思ってる
と、話してくれました。

ほんとにね、必要・不必要の分かれ目はひどく曖昧。
裁量って言葉の重さを感じたの。

102歳!!

2005年09月27日 | 病棟
肺炎でトキさんが入院してきました。
御歳102歳!!初の三桁です。
救急車搬送でしたが、救急隊員も
「初の三桁で、緊張した~!ガラス細工だよ!」って笑ってた。
あまり緊急性のない状態だったからね。

こちらも最初はものすごく気を使ったんです。
誤嚥させちゃいけない、ボケさせちゃいけない、
生きて帰さねば・・・って。
ところがどっこい、おばあちゃん元気一杯で
体交の度に、民謡歌えだの自分が歌うから手拍子しろだの
とても102歳とは思えない。
張りのある大きな声で 起きてる間じゅう 要求の嵐。
他の部屋から 「夕べは アノ部屋 夜通し盆踊りだったね」
なんて言われるくらい。
仕方なく 耳の遠い93歳と二人部屋にしたの。
そうしたら93歳のほうが あまりのうるささに
ハンストをして 鬱になってしまって
早期退院に追い込まれてしまった。
・・・・お気の毒・・・・

でもね 不謹慎にも
(ハブ対マングース、ハブの勝ち!!)なんて
心の中で判定を下した私。
これくらいタフでないと 三桁は生きられないんでしょうね~~~!!