だいぶ前に続きを買いました。
ボートが流れ着き、あの惨劇以来、初めて「人間」と出会う少年。彼女にすがりついて泣き、彼らはアキコ、サトルと名前を教え合う。
アキコが備蓄していたわずかなコーヒーと米を食べてサトルが「文明」の香りに感激したのもつかの間、海沿いの大都市はすべて海の底に沈んだという情報。そして待っても来ない救助に人々が暴徒と化してしまったと聞かされる。
鼠咬症(そこうしょう)に苦しむサトルがアキコに看病されるという甘い生活の中、再び食糧を巡る不安がのしかかる。それしか穫れない魚を食べたがらないアキコ、氷河期に入ってしまったのではないかという不安。鳥を捕るためのカスミ網漁も失敗し、ジンマシンが出るのでからだが魚をうけつけないと怒鳴るアキコ。島に近付いた船が素通りしてしまう。文明人の感覚が残り過ぎているアキコは、サトルが目の前で獲物を解体する光景を目の当たりにして吐いてしまい、その肉すらも食べようとしないほどか弱い。
待ち望んでいた「春」が訪れ、氷河期ではなかったのだと安堵し、『万葉集』にそれを歌った和歌が一首もない蝶が神々しく思える。しかし60年目に寿命がつきる「ササ」が開花する。アキコに恋をしているのだと自覚するサトルだが、彼女は崖から落ちた衝撃と、文名人の持つやさしさから錯乱状態に陥ってしまう。
第3巻。
「働けなくなった娘」との共同生活で、少年は今までの倍の仕事を要求されるようになる。再びの地震、そしてサトルをいなくなった恋人と間違えるほどアキコの病状は進行する。「俊夫さん」からアキコに宛てて書かれた手紙をサトルが代筆する「文通」はすごく悲しい。
ササの実が全滅し、ネズミの大群が集団自殺をする死の大行進。衰弱したアキコがほんの一時だけ我に返り、サトルを思い出し好きだと言ってくれたその翌朝、彼女は息絶えてしまう。
自分を好きだと言ってくれ、名前を呼んでくれる女性を失い、サトルはまた一人の「少年」となってしまう。
孤独と絶望から一度は死のうとした少年は、姿を消した大陸を島の反対側に発見し、イカダで新大陸を目指す。辿り着いた死の町でラジオを拾い、これが役に立つ「その日」を信じて、大地震のさなかに核ミサイルのボタンが押されてしまったのかもしれないという不安を押し殺しながら、かつて自分が住んでいた東京を目指す。しかしようやく辿り着いた東京も壊滅しており、食糧と生活用品を求めて行ったデパートで目にしたのは、生きていくための何の役にも立たない宝石類を奪い合って人々が争った形跡だった。
そして水道だけが頼りの都会は、上下水道が機能しなければ砂漠同然だった。
マンションの屋上のタンクに貯えられた、限りのある水を使って野菜を育てようと、少年が生きるたくましさを取り戻していたその都市を、飢えた猛獣が歩き回っていた。
お薦め度:★★★★☆
飢えと病、悲しみ、そして不安と孤独に押し潰されそうになりながらも希望を抱いて生き抜こうとする、そのたくましさが素晴らしい。もし可能なら30年前に送って小学生の自分に読ませてあげたい。文庫で絵が小さいのが残念。描き込みがすごいです。
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