君の答えは「Yes」だ 天野君……!!
キリスト教モノだからという理由で読み続けるのはつらいかなと思いはじめた頃だったんですが、格段に面白くなってきました。萌え漫画から脱却できて、物語がようやく始動。天野・アルベルト一派とメアリーたちとの共闘が破綻してからはもうワクワクドキドキ(笑)
ただし、読み切りシリーズから月刊連載に移行した過程で作者がつじつま合わせのためなのか、年代を途中で変えた感があるのが残念。
時代は昭和中期と、年代を特定せずに始まったとはいえ、第1巻の時点ではロシア革命以後、ただし1950年代というイメージだった(西洋の神様が物珍しいとか板垣退助の百円札とか初任給1万円とか)。三大教派の中で近代、ソビエト共産政権の宗教弾圧の下で一番多くの異端を排出したのはおそらくロシア正教で、異端の最右翼である「イコン」がロシア発祥という根底の部分はすごく説得力がある。アメリアはシベリアから北海道に逃げてきた一介のシスターだと思っていた。ところが第5巻では年代が特定され、フルシチョフ失脚後になってしまっているんですよね。1960年代はギリギリで「昭和中期」ではあるけれど。
それから、ギャグ漫画→萌え漫画→バトル漫画という負の進化をなんとかしてくれ!(笑)
ロシアの宗教事情が最も薄気味悪かったのはフルシチョフ時代だという一面もあるけど、この時代のバチカンは資産は山分けとか、カネ汚くはなかったはず(カネ汚かったのはトップじゃなくて末端の聖職者達)。天野が神父でエクソシストという漫画じゃなかったら読んでませんよ。
こんなふうに文句を言うのも、この作品が面白いからなんですけどね。十字架の魔術師第1巻が初めてのコミックスとは、岡崎圭って結構すごいんじゃないだろうか。
裏とか表とかの稼業として悪魔祓いをする教団「イコン」はまるっきり架空の存在というわけではなく、カトリック教会は20世紀に入っても悪魔祓いをしていたし、地獄のような弾圧の下で地下に潜り枝分かれしていったロシア正教の異端の中には記録なんか残っていない神秘主義の秘密結社のような物が結構存在していたはず。犯した罪の懺悔をしたいという過去が天野になければ、一番カッコいいのはヴィンセント=ローレン。
「はっきり言おう キリスト教とは人間の尊厳を奪うための宗教だ 人間は罪深いと貶め心を蝕む --なぜだ? 人間とは元々素晴らしい生き物なのに…!!」。
クリスチャンではない人達は、キリスト教は愛を説く宗教なのになぜ魔女狩りや宗教戦争が起こるのか疑問に思うかもしれないけど、イエズス会というのは本来、教皇のための戦闘集団。十字軍の時代まで遡れば、キリスト教徒ってのはほぼ全員が戦士みたいなものだったんです(これは私の偏見ですが)。この時代の教皇はパウロ6世(のはず)で、枢機卿達が二派に別れて対立している中で教会一致運動を押し進めようとしていたパパのために汚い仕事を引き受けた処刑人のような人達は、表に出ていないだけで実はいたんじゃないかと私は思います(笑)
天野神父がメアリーと袂を分かってローレンと手を結んだのも、教団の討伐により三大教派の崩壊を阻止したいというのは建前で、これまでさんざん見てきた悪魔に憑かれる人間の弱さを赦し、果ては人の原罪すら否定したいという思いからかもしれません。
そのメアリー=グレース牧師は持ち前の美貌で教団の元老3人ともと寝て、ベッドの上で中に出してもいいわよと妖艶に誘惑する。シスター・アメリアは正教の修道士で実は前元老の私生児イリヤの義姉。教団創立者の血を引く、不思議な力を持つ女。
イコンの元老3人の頂点に立つ総帥「預言者」が実は悪魔だったという墜ちっぷりが最高です。あとどうでもいいことですが、漫画の中でのタバコの描き方がカッコイイ。
お薦め度:★★★☆☆
本家が腐敗したから理想を掲げる異端が生まれ、その異端がまた腐敗するという連鎖がたまらん!
自分がクリスチャンなのに私は宗教は阿片だと思ってます(笑)
「イエス様はこう仰ってるわ」とか口にする奴に限ってエセ信者だったりしますからね(本物のクリスチャンならイエスに「様」なんか付けない)。
応援してます、岡崎先生。
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【検索用】十字架の魔術師 岡崎圭 5
まだ無名の新人だけど、映画のように爽快で読み応えがあります。
がんばってほしいです。
580円出す価値があるかどうかの判断はお任せします(笑)
こういうの弱い!
これは是非お店で探してみます。