そしてかつての私の城 緋龍(ヒリュウ)城は
当時 王の他には世継ぎの皇太子も世継ぎを産む皇后も無く
ただ 齢十五の皇女が大切に大切に育てられていた
赤い星が昇る。かつての高華王国の皇女ヨナは、従者と共に凍り付くような寒さの山沿いを往く。
『花とゆめ』2009年17号より始まった、草凪みずほさんの新作です。
「亡国の大河ファンタジー・ロマン」という大きな看板を(編集部に)掲げられていますが、それに負けない、細部まで練られた作品です。
皇后が賊に襲われ殺された高華王国、国王の一人娘ヨナは、緋龍城でただただ大切に育てられていた。国王イルは、娘が望む物は美しい簪(かんざし)に耳飾り、離宮に花の庭園、武器以外の物は何でも与えて溺愛していたが、彼女が慕う従兄のスウォンを夫として与えることはできないと言う。この頃のヨナは、まとまらない赤毛のくせっ毛を気にしながら、従者のハクにからかわれ、3つ年上のスウォンを想い、城の外の寒さも知らずに愛されて幸せに暮らしていた。
ヨナの16の誕生日に合わせて緋龍城に来てくれたスウォン。父の兄ユホン伯父の息子で、王家の血筋であるスウォンをなぜ自分の夫にできないのかと王に訊くヨナ。父の言葉を聞いたヨナは、自分の夫となる人は不幸になっていいのか、自分は幸せになってはいけないのかと自問自答する。その時、既に城に忍び込んでいたかもしれない賊。妹のように思っていたヨナが急に女性に見えると赤面するスウォンは、誕生祝いに簪を贈ってくれ、ヨナの髪をキレイな暁の空の色だと言ってくれる。
皇女の誕生祝いで城中が酔っている夜、やはりスウォンを忘れることはできないと告げようと、ヨナが衛兵の立っていない父の部屋に入ると、国王はスウォンに斬られ絶命していた…!
眼前の光景が信じられないヨナ、自分が刺し殺した国王の返り血を浴び、10年前からこの日のために生きてきたと言うスウォン。次期国王になるはずだった父ユホンを差し置いて王座についた叔父のイル、誇りに思っていた父を殺された恨みを淡々と述べ、自分が高華の王となると言う。これは悪い夢にちがいないと、現実を直視できないヨナを取り囲む、スウォンの率いてきた兵。口封じに殺されようとしていたヨナを助けに参上したハク。涙を流して「ハクは… 私の味方…?」と問うヨナに、ハクは陛下から姫を守れと言われている自分は何があろうとそれに絶対服従するとスウォンに斬りかかる。
高華の雷獣(らいじゅう)と噂される五将軍の一人ソン・ハク、弱い王などこの国には必要ないと剣を抜くスウォン。その場へ矢を射てハクとヨナの退路を開いたミンスは、囮になって二人を城から逃がす。
何もかもを失い、ただハクに手を引かれて森へ逃げ込んだヨナ。汚れや痛みなど知らない姫を昔から見てきたハクは、部族長達の言いなりの情けない王だと評されていたイル陛下のうしろ手の強さを知り、ヨナ姫の専属護衛を引き受けたあの日のことを昨日のことのように思い出す。
「イル陛下 今もどこかで 俺らを見ておいでか…?」。
目を覚ましたヨナは、スウォンとハクと3人で見上げたあの空は、もうどこにもないと泣き崩れる。思い出の中のスウォンの父ユホンは強く厳しく恐い男だったが、幼いスウォンはそんな父をとても誇り、深く敬愛していた。
城では、逃げたヨナ姫に追っ手をかけると言う兵に、新たな城主となったスウォンは放っておけと命じる。それよりも早急にやらねばならない事があると。
これから山道が険しくなろうとしていた逃走の道程、何も食べようとせず、人形のようになってしまったヨナ。そんな姫が、誕生祝いにスウォンに贈られた簪を落としたと、日が沈み毒蛇が出る森の中へそれを探しに行く。
スウォンを許せない、だがそれ以上にヨナに生きて欲しい、山に入って初めて自ら動いたヨナに、ハクはいま自分達が唯一頼れる場所へ向かうと言う。
第1話見開きカラー(『花とゆめ』2009年17号)
第2話カラー扉(18号)
『花とゆめ』2009年17号表紙
お薦め度:★★★☆☆
本格的に面白くなるのはこれから(連載読んでます)。
厳しい言い方をすれば、作者に『NGライフ』という傑作を描いた実績がなければ店頭で手に取られないかもしれない作品です。
前作を知っている人はこの第1巻から草凪みずほ作品の魅力を存分に楽しめますが、知らない人は「絵が上手いだけの人が描いた異世界ファンタジー」という先入観を抱いて読み飛ばすでしょう。もちろん私は前者なので毎回すごく楽しみにしてますよ。
実力と人気との両方を得た作者が「自分の描きたいものを思いっ切り描いている」という点でも嬉しい作品です。
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