『かの人や月』を読んでいくえみ綾さんの作品を気に入ったので購入してみましたが当たりでした。
「プレゼント」「おうじさまのゆくえ」「あなたにききたい」の3作が採録されてますがやはり表題作の「プレゼント」が印象的ですね。
「プレゼント」は
-「13の青い春」編-
-「18の分岐点」-
-「21の………」-
の3部から成っています。「別冊マーガレット」平成14年12月号掲載。
文字通り主人公の川田亜希の中学時代、短大時代、社会人1年目時代の節目節目のストーリーを描いている、一種のオムニバスです。
まず-「13の青い春」編-ですが、やはり中学生にとっては学校が
ちっこい世界
だけど
あたしらの
ほとんど すべて
なのでしょう。
今にして思うと確かに自分も中学生時代は学校の中での生活の比重は非常に大きかったと思います。言い換えれば「外の世界」を知らなかったし、知る機会もなかったのだと思います。
みんな A
でも あの子らとも
さいきん いまいちだったから
ちょうど よかったのかも
そして学級委員に立候補したのは「年上だから」との理由から杉浦好子(ヨシコ)。
ガス爆発で火傷を負い、クラスの皆より1つ年上だった。
ヨシコを「鬱陶しい」と思うクラスの面々、「体にあんな傷があったら人生かわる」と言うクラスメイト達。
近江に「恥を知れ」と一喝される亜希。
きっと亜希はこの時から近江を意識していたのだと思います。ただし中学生だと「恋愛感情」と云う物が本当の意味では解っていないのだと思います。
第2部が井原という彼氏のでき、付属の短大への進学も決まった-「18の分岐点」-。
高校生ともなり、SEX等が描かれるようになりますが嫌らしさとかはあまりありません。
わざと井原が働いているカラオケボックスに井原がいない時に歌いに来る亜希とその友達。
気に入ってなつかしくて読み返してみても結末は同じ
ある日、亜希は近江に「まず謝るわ ごめんっ」
彼はずっと好子と文通していた。持参した彼女からの手紙の束は好子が川田のことを書いてるのだけ選んできた。
亜希が花壇の手入れを手伝ってくれた事が良い思い出になっている、亜希に話しかけたいけど亜希の周囲の子達が怖かった事
最終回の第3部が-「21の………」-。
セクハラで会社を辞めて弱小出版社でのバイトで食いつなぐ日々。
亜希は井原とは既に別れている。
結婚する杉浦は何回か手術してだいぶ元通りになったらしい。
あなたに
あなたに
会いにゆくから
亜希がこれからどうなるのか、誰と恋に落ちるのか、そしてもしかして誰かと結婚するのか…
余韻を残すというか「明確な結末」を描かない事で逆に魅力が増してます。
「予感」というか、希望のような物を感じます。
「おうじさまのゆくえ」、「クッキー」平成12年Vol.2掲載。
阿弥が好きになった晴河。だが阿弥の好きなのは王子様のような生徒会長の島津。
それを聞いて「王子様」になる決意をする晴河。
だが所詮高校生、「人を好きになる」というのがどんな事なのか本質的には理解しておらず、そして互いに臆病です。
「値踏みしにきたんだろ?」と訊かれペタ一色で暗転する演出は巧いと思います。
晴河が7人兄姉の大家族で「所帯染みた」処があるんですが、いくえみさんの場合それがマイナスにならないんですよね。
そしてこの作品も結末を明確に描かずに、でも幸せの予感のするラストです。
「あなたにききたい」、「別冊マーガレット」平成15年4月号掲載作。
主人公の沙英はOLです。
歩からクラス会の案内状をもらっていた沙英。だが従姉妹の結婚式と重なっていて…。
結局高校の時のクラス会に出席しますが、これが逆に正解でした。
恋愛すらした事のない沙英、彼女とずっと話をしてみたかったあゆ、消えた「違和感」だが本当は消えていないのか?
あゆは整形をしていた。
外見を変える事で勇気と自信を持った彼女の行動の先が"自分"だったことで
私の中で尊大な気持ちがあったのかもしれません---
あゆは子供を堕胎していた。
全部 嘘でした
ほんとうにすべて嘘ですか?
あれも?
あれも?
あれも?
今度また会いにゆくとゆうのは
無しですか?
とても哀しい事を描いているんだけど後味はあまり悪くないですね。
いくえみ綾さんは、「人の気持ち・想い」と云うものをとても丁寧に、慈しむように描く人ですね。
他に『潔く柔く』読んでみたいですね。
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