〈川俳会〉ブログ

俳句を愛する人、この指とまれ。
四季の変遷を俳句で楽しんでいます。「吟行」もしていますよ。

拾い読み備忘録(170)

2016年09月25日 20時18分33秒 | エッセイ
仲間に山野という男がいて、彼はぼくの顔を見るたびに、姑娘(クーニャン)の話をするのだった。 姑娘とは、中国語で”娘さん”というような意味だが、中国大陸で戦った兵隊にとっては、なんとなくなつかしい呼び名である。
ある日、山野氏が例によって姑娘の思い出を話しはじめた。
―そうやなあ、わしが分隊長で、ある村に行ったときのことや。村長の娘がえらいベッピンやと聞いたもんやから、兵隊連れて、早速おしかけたんや。なにしろ、そのころは、娘探すのが仕事みたいなもんやったからな。
ところが、村長は「そんなもの、おらへん」といいはる。あたりまえやな、いるちゅうと、日本兵は娘をつれていってしまうんやから。それから、どうされるかは、いくらノンビリした中国人でもわかるわな。・・・・・
(第16話 予期せぬ出来事)より
「不思議旅行」水木しげる著 中央公論社 昭和59年
                      富翁
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