「秋」の音が「飽き」に通ずるということから、古くから男女の情がさめていくことに「秋」の凋落の感じをダブらせて表現することが多かった。平清盛ははじめ白拍子の妓王を寵愛していたが、仏御前の出現によって情を移し、妓王を追放してしまう。その時妓王が障子に書き残した歌は「萌えいづるも枯るるも同じ野辺の草いづれか秋にあはではつべき」だった。「あなたも同じ運命なのよ」という警告の意をこめたもので、平家物語の中でも女心の悲しさを感じさせる一コマである。・・・・・
「ことばの歳時記」金田一春彦 新潮文庫 昭和48年
富翁
「ことばの歳時記」金田一春彦 新潮文庫 昭和48年
富翁