思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

現代的な便利さに身を委ねるのはあまり好きではないが、PASMO(パスモ)は歓迎する

2007-03-27 21:30:30 | 交通・地理

18日、首都圏(※1)の大半の私鉄・地下鉄・路線バスとJRできっぷを買わずにそれらすべての自動改札や運賃箱を通過できる非接触型ICカード「PASMO(以下、パスモ。写真上の桃色)」が導入され、これまで首都圏のJRで1000万枚以上普及してきたJR東日本のSuica(以下、スイカ。写真下の黄緑色)と同等の機能であることで話題になっている。と言っても、首都圏およびスイカが導入されている仙台・新潟周辺以外在住の方にはなんのこっちゃ? なんでそんなに騒いでいるのだ? と思われる話かもしれない。それに、関西圏では「PiTaPa(ピタパ。紫色)」によってすでにこれ1枚で私鉄とJRの乗り降りができるために(JRのみの場合はJR西日本のICOCA(イコカ。水色))、今回のパスモ導入は遅ぇよ、というツッコミも関西人からいくらか入っているだろう(ただ、これは会員制で「ポストペイサービス」という金融機関からの口座引き落としによる後払い方式)。
だが、日本の総人口の約3割が集中している首都圏の交通事情に関するここ数年でも特筆すべき大きな変化であり、普段よく各種乗り物を利用する僕としても、どうしても注目・利用せざるを得ないICカードである。

で、導入から1週間ほど経ち、僕も19日からパスモを利用してみたうえでの感想を簡単に述べると、あら、いいじゃない、と好印象を持った。カードを1枚買えばあとは現金を適宜チャージすれば繰り返し使えるし、きっぷを買う手間が減るし、そのためにきっぷの廃棄量が減るし、駅構内にある“駅ナカ”の店の大半で買い物ができて電子マネー代わりにもなって財布が軽くなるし、とこれまでのスイカと同様に便利さが目立つ。時間がないときやスポーツ・ライヴなど大勢の利用者で混雑する各種催しを観に行った帰り際なんかに、あらかじめチャージしておけば駅の券売機に並んできっぷを買う手間がなくなるのは助かる。まあこれは従来のスイカや首都圏の私鉄・地下鉄のみ共通のプリペイドカード「パスネット」でも使えた技だが。
なかでも最も大きいのが、私鉄でも地下鉄でも路線バスでもJRでもパスモ・スイカ1枚で乗り降りできるということで、きっぷを買うとどうしても増えていく小銭が減って導入前よりも財布がかなり軽くなるだろう。導入のための自動改札機や券売機の変更などの初期投資で各社ともにかなり出費しているのだろうが、いち利用者としてはこれはとてもスバラシイことではないか、何事においても現代的な便利さが加速することに首を傾げがちな僕も日常でほぼ毎日お世話になる公共交通機関に関するこんな便利さだったら大歓迎ですな、と率直に思う。

ただ、先週の雑誌『AERA』07年3月26日号でパスモを導入するうえでの問題点について触れていて(「便利なパスモの落とし穴」)、この記事にあるようにおおまかには、①2枚のカードを持っていると自動改札を通過するときにエラーが発生するもしくは自分の希望ではないカードから運賃が差し引かれる、②JR~私鉄~Rという複雑な経路で行く場合には通常の運賃よりも割高になる、③返却するときに残額があると210円の手数料がかかる、というような問題もたしかにある。
それらへの対策としては、①は、パスモまたはスイカの定期券ともう1枚別の定期券ではないカードを持つ、という事例が特に考えられるが、2枚持っていると改札を通過できないことは、先週もパスモとスイカを両方持っていくつかの駅の改札を通過して実験してみた結果、実験した駅すべてでたしかにエラーが出た。まあこれは定期券のほうでも定期券の往復経路以外の駅・路線を行く場合にこれにチャージしておけばそれ以外の区間のぶんは自動的に差し引かれるから、定期券ではないカードのほうを返却して定期券のほう1枚に集約すればよい。ただ、定期券の場合はあらかじめ個人情報が登録される記名式になるため、紛失した場合は500円支払って再発行ができるといっても今後はクレジットカード紛失のときのようにスキミング技術の発達によって情報のみ盗まれて悪用される可能性もなくはない。
②は、そういった複雑な経路を利用することがあらかじめわかっている場合はふつうに従来のきっぷで乗り降りする、という方法で対処すればよいのではないか。定期券利用の場合は、これはもう従来のプラスチック製の定期券とパスモ・スイカの定期券を両方持つしかないように思う。引っ越しなどによる経路変更ができればよいが、そんなに簡単にはできないだろうし。これは現在の僕には該当しないことなので、思いっきり他人事ですまん。
③は、券売機でチャージする場合、18日からはチャージ金額は1000円、2000円、3000円、4000円、5000円、1万円、の6択になったが(※2)、5000円や1万円のような高額のチャージはせずに、とりあえず数日間必要な金額をこまめにチャージしていつでも使いきれるようにしておけばよいのではないかと思う。特に僕のように不安定な労働環境に身を置いている場合、来月からいきなり定期券を持つことになる、という事態もちょくちょく発生するので(昨年下半期もあった)、そうなったときのために、また個人情報をむやみやたらと提供したくないというような理由から無記名式のカードを選択して利用している場合、財布ごと1度紛失したらほぼ終わりだから、その被害額を最小限に抑えるためにも、こまめにチャージしていつでもすぐに使いきれる状態にしておく、というのが賢い利用法ではないかなあ。残額とともにパスモ・スイカ購入時のデポジット=預かり金500円も持っていかれるのも悲しいが、それは仕方ないか。

ということで、上記のことを踏まえて僕が今後首都圏の交通機関を利用する場合には、無記名式のパスモ・スイカを選択して、こまめにチャージして(これまでもチャージ金額は1000円か3000円ばかりで、5000円や1万円をチャージした経験はない)、ときにはきっぷも併用する、という方法になる。それに、定期券を利用するほどの長期間ではないが特定の区間を複数回往復する場合にはまだきっぷの回数券のほうが約1割ではあるが割安だし(関西圏では駅前の金券ショップでいろいろな組み合わせで回数券をよくバラ売りしているよね)、近年ICカードが普及しつつあるからといってすぐにきっぷが廃止されるということもないだろうし。でも、「パスネット」や「オレンジカード」のような割安感のないプリペイドカードはやはり近いうちに廃止されるだろうな。
また、僕は首都圏で路線バスに乗る機会も月平均で1~2回あるのだが、その場合もパスモ・スイカではなく従来のプリペイド式のバス共通カードのほうが、1000円券で100円、3000円券で360円、5000円券で850円のプレミアムが付くから、こちらのほうが断然お得である。
あと、クレジットカード会社と連携して残金2000円以下になると自動的に3000円チャージされる「オートチャージ機能」を売りに、最近は各鉄道会社が利用客の囲い込み作戦を展開しているが(利用すればするほどポイントが溜まるようなお得な仕組みの会社もある)、現状ではクレジットカードの契約なんかはとてもできない僕にはまったく関係ないし興味もないことなので、無視。

現在はパスモ・スイカを両方持っていると改札でエラーが出るために逆に不便になり、スイカのほうを返却してパスモ1枚で乗り降りしている。パスモを選択したのは、単に僕が緑色系統の黄緑色があまり好きではない、ということから持つのはパスモになった(そんな理由で一時期、僕が好きな青色系統の水色のイコカを持ち歩いていたこともある)。1枚にした現在は特に不便は感じなくなったから、今後も鉄道の乗り降り以外にもこれのみで積極的に利用していこうと思っている。買い物をすると残額が1円単位になってくるから、これをいかに0円で使いきれる状態に持っていくか、ということも計算しながら利用しないと。というのも、1円単位で残った場合にカードを返却すると、そのぶんは没収されるから。先日もスイカを返却したときに6円残っていたのだが(この場合は手数料210円はかからない。210円以上の残額があるときに手数料を取られるのかな?)、たとえ6円されど6円、この金額でも没収されたのはちょっと悲しかったので、今後は常に残額0円を目指すことにする。

それからひとつ気になるのは、あらかじめいくらかチャージされたパスモ・スイカをまだお金の流通の仕組みがあやふやな子どもに持たせると、携帯電話は(最近は大概は親が支払っている)通話料がかかることを知らずにじゃんじゃん利用することと同様に、買い物のときに際限なく出費して真っ当な金銭感覚が身に着かないかも、このカードを利用することによってある意味人間として退化するかもしれない、つまり教育上よろしくないかもしれない、という危惧はあるな。まあそのさじ加減は各家庭によるから、上手く使っておくれよ、としか言いようがないけど。

現在はパスモのデザインは1種類のみだが、今後はもうちょっと洒落たデザインのものも販売すればより普及するのではないか。有名マンガ家やイラストレーターの力を借りるとか、自分のお気に入りの写真を入れられるようにするとか。18日に限定販売された「PASMOデビュー・Suica相互利用記念カード」のように。とりあえずは各会社限定のデザインとかいうのが面白いと思うが、経費が相当かさむのだろうか。そのへんのサービスも期待したい。


注釈

※1 「首都圏」というと一般的には、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、山梨県の1都7県を指す。これによく似た表現の「関東地方」というと、ここから山梨県を引いた1都6県を指す。山梨県の有無が肝要で、「首都圏で使える」と謳うスイカの場合は山梨県も該当し、最西ではJR中央東線の韮崎駅まで利用できる。ただ、山梨県内の私鉄や路線バスではパスモは導入していないようなので(富士急行とか)、パスモを山梨県まで持っていくという機会は少ないかもしれない。僕は登山などで山梨県にはよく行くので、今度、パスモが山梨県内の駅で利用できるのかどうか実験してみようと思う。あと、仙台・新潟周辺のスイカが利用できる駅でもパスモは通用するのかね。改札機の仕組みが同じだったら利用できるはずだが、ようわからん。山梨県・宮城県・新潟県でそのような実験をすでに行なわれた方の報告もお待ちしております。

※2 パスモが導入される前日の17日までは、(スイカのチャージ金額は)1000円、3000円、5000円、1万円、の4択だった。それに比べると6択になったのはやや便利になったかな、と思う。例えば2000円チャージしたい場合、17日までは1000円の操作を2回繰り返す必要があったが、それが18日以降は2000円の操作1回で済むので、ちょっこっとだけ手間が省けるようになった。まあこのくらいの少額だったら少し奮発して3000円チャージすればいいだろ、というツッコミも来そうだが、普段は1000円の多少でもいちいち気になってしまう低所得者の僕としては、この操作回数の削減というのは結構大きな問題だったりする。1000円は大金で、1000円札で作る、最近持っているとご利益があると噂の“ターバン野口”で遊んでいる場合ではないのですよ。


●2007年4月25日の補足

22日、山梨県北杜市の「第1回シェルパ斉藤トークショー」の帰りにJR中央東線の韮崎駅に立ち寄り、※1のパスモ利用の実験をしてみた(韮崎駅-甲府駅間)。結果は、やはりスイカと同様にふつうに使えた。となると、ほかの地域もおそらく使えるのだろう。


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