青空ーすべてはバランス

遺伝子への影響

昔は、「くそ面白くもない」と思っていた生物の授業。高校では生物は選択してないから、ほとんど知識がなかった。しかし、最近、普通に暮らしている環境の中にある合成化学物質と食品の中に添加されている合成化学物質が、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)として、私たちのホルモンバランスを乱しているという角度からいろいろと調べるようになりました。今は、遺伝子にも影響があるかも?と思うようになっていました。

偶然ネットで見つけたのは、こちら。9年前当時の
名城大学薬学部助教 植田康次氏が平成20年度日本薬学会東海支部学術奨励賞の受賞を記念して記述した総説に出会いました。実物はこちらです。「化学物質の遺伝子及び遺伝子発現への影響」 PDFになっています。

私は、生物学はほとんど勉強していなくて何を書いているか分からなかったので、「生物学の遺伝子」の基礎を勉強して、随分時間が経過しましたが、ようやく大まかに理解できるようになりました。要旨は次のとおりです。

「発がん性化学物質の多くはDNAに結合し、付加体を形成するとされている。」えっ?もう通説になっているの?びっくりしました。

「金属との相互作用で発生する活性酸素種による損傷作用も無視できない。」化学物質単体で考える以外に相互作用・化学変化によって生まれる化学物質のことも考えていくべきだということがよく分かりました。

「DNA損傷の影響は転写・翻訳などの遺伝子発現を含むDNAを起点とした様々な生体反応に及ぶ。RNAにも注目・・・。」はっ?転写?翻訳?遺伝子発現?RNA?なんどす?・・・こんな感じだったので、基礎を勉強してみました。私ごときが説明するのも何ですが、

{細胞は絶えず損傷したり、死んだりします。細胞を修復したり、新たに作らねばいけません。細胞の中には、遺伝子があり、その本体であるDNAがありますが、このDNAは自分の遺伝情報の設計図を正確にコピー(複製)しなければいけません。今までの自分と違う遺伝情報を伝えるこわけにはいきません。もう一つ重要な作業がある。細胞内のタンパク質も以前と同じものを作ることが必要です。設計図を写しとりながら具体的にタンパク質を作り出し機能させることが必要です。この過程は、DNA⇒RNA⇒タンパク質 DNAをRNAに写し取る過程を転写、タンパク質を製造する過程を翻訳と言います。そして転写・翻訳までの過程を遺伝子発現と言います。}

これでDNA損傷の影響は理解できるでしょうか?

内分泌かく乱化学物質と呼ばれる一群の化学物質には、核内受容体への結合を介して遺伝子発現を変動させる作用がある。当初問題とされたのは、生殖系への影響が種の存続に係るという点であるが、実際の作用点は、神経系なども含め多岐にわたる。」私が最初に読んだ本も生殖系への影響についてでした。実際には神経系なども含め、色んな影響を考えなければいけないですね。今までの自分のタンパク質と違う形質のタンパク質がつくられたらどうなるの?

最後に、化学物質が太陽光照射により化学変化し、内分泌かく乱物質として働いたり、DNA損傷に至ることを具体的に例を挙げていますので紹介します。

「・プラスチック可塑剤のフタル酸エステル
光照射による反応は・・・ベンゼン環の水酸化が起きる。これによりER(エストロゲン受容体)への高い結合親和性を獲得し、明確な女性ホルモン用活性を示すようになる。」
「・紫外線吸収剤ベンゾフェノン
日焼け止めの主成分として水辺で大量に使用され・・・効率よく紫外線を吸収するため光酸化反応を起こしやすく、その結果生成する環水酸化ベンゾフェノンは、ERに作用し女性ホルモン様作用を示す。」
「・界面活性剤の環境微生物分解産物ノニルフェノール
内分泌かく乱化学物質として最初に国の指定を受けた。フェノール性水酸基を有し、ER活性化作用が認められる紫外線照射による活性の変化について検討したところ、新たな活性としてDNA損傷活性が現れた。」
「・保存剤メチルパラベンは、化粧品などに広範に使用されている。
皮膚に塗布されたメチルパラベンは、まず太陽光照射により環水酸化を受け、次に皮膚細胞のエステラーゼによりメチルエステルが加水分解されてプロトカテキュ酸となりDNA損傷活性を発揮する。」
「・エチルベンゼンは、塗料溶剤や燃料添加剤などに汎用されている。
太陽光照射により生じるパラ又はオルト型のジオール体がDNA損傷作用を示すことを明らかにした。」

 

この総説は、私にとって本当に興味深いもので、一語一句見逃せない内容でした。

地球上の生物はこれまで、激烈な地球の環境変化にも遺伝子の突然変異により適応力を身につけ乗り越えてきた。人間と地球上の生物が、人間の作り出した合成化学物質とどのようにつきあっていくべきかを考える時、この方のような研究がさらに進むことが必要です。できるだけ早く。このような研究者の方々のより一層のご活躍をお祈りいたします。


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