ワニなつノート

金曜日は「ものがたり」

翔ちゃんがいた(その4)


4 《ナオ》


「今日のごはんはなに?」
ニンジンをきざんでいるお母さんをのぞきこんで、ナオが聞く。
「オムライスよ」
「ふーん」
「ふーんってなによぉ。ナオの大好物でしょ」
「うん…」

包丁の音が一瞬とまり、またすぐにトントントンと音がひびく。

「冷蔵庫にとり肉が入ってるから、出してくれる?」
「うん…」
ナオがとり肉を取り出す。
「これ?」
「そうそう、そこに置いて。ありがと。」
「うん…」


「ねえお母さん、今日ね、良太くんとコージくん、先生に怒られたんだよ。」
お母さんは手をとめずに返事をする。
「また? あの二人はいつもゲンキだからね。」

「うん…」
「今日は何で怒られたの?」
「うん…」
「また、ケンカ?」
「ちがうの。そういうんじゃなくて…」

「そういうんじゃなくて?」 お母さんが首をかしげる。

「わたしもなの。」
「え、ナオも怒られたの?」 お母さんがナオをみる。

「違うの。わたしは怒られなかったの。けど…」
「…けど?」

お母さんが手をふいて、ナオの頭をなでる。
「なにかあったの?」
「わたしも手をあげたかったの」

「手をあげる?」
「うん…」

「……」
「先生が、わからない人はいますかって…」
ナオがゆっくりと、思い出しながら話す。
お母さんがうなずく。
「…先生が分からない人?って聞いたのね」
「うん。わたしもほんとはよく分からなかったの。でも…机を見てたの…」
「そう」
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