だれのものでもないことば Ⅱ

ほんとうのこと　（だれのものでもないことば　Ⅱ）



わたしたちは　だれのものでもない　ことばに
かこまれて　くらしてる
だれのものでもない　ちしきやけしきや
ものがたりに　まもられてくらしてる

わたしのことばが　うまれるのは
あなたが　わたしに
みみを　かたむけてくれるとき

わたしのものがたりに
みみをか　たむけてくれるとき

だれのものでもないことばが
わたしのことばにうまれかわる

もしも　ことばをなくしたときにも
あなたが　わたしに　みみをかたむけてくれたら
わたしのことばは　あなたにとどく

わたしは　あなたに　であえる


　　　　　◇


だれのものでもないことばを
どれだけおぼえたか
かぞえてあげる

だれのものでもないことばを
どれだけつかえるか
てんすうをつけてあげる


それはいらない
わたしはいらない
わたしのたからものはそこにはない


だれのものでもないことばは
わたしだけのことばにはならない
わたしはそれをつかうのがちょっとにがて

だれのものでもないことばを
わたしのことばのようにしゃべるのがにがて

だれのものでもないことばを
わたしのことばのようにつかおうとすると
わたしのおもいがとどかなくなる


　　　　　◇


だれのものでもないことばをつかって
みんな　おもいをつたえあう

だれのものでもないことばをきいて
おもいをたしかめあう

わたしは　だれのものでもないことばが　
ちょっとにがて

だれのものでもないことばでなくても
きっと　おもいはつたわる

だれのものでもない　けはいや
まなざしや　
こえや　
しぐさで
おもいを　つたえあうこともできる
おもいを　たしかめあうこともできる

わたしのおかあさんは
わたしのけはいを　きいてくれた


　　　　　◇


わたしたちは　だれのものでもない　ことばに
かこまれて　くらしてる

だれのものでもない　ちしきやけしきや
ものがたりに　まもられてくらしてる

わたしは　だれのものでもない　ことばのうみで
この子だけのことばに
みみをかたむけることができる

この子の　いきづかいやまなざしに
みみをかたむけることもできる

この子の　おもいに
たましいをかたむけるとき
この子のことばが
わたしに　とどく