ワニなつノート

《ものがたり》サクラハクテン (予告編)

《ものがたり》サクラハクテン (予告編)


「ぼくは、おかさんの涙のもとになりたくないんだよ。
ぼくは、ぼくがぼくじゃない、新しいこどもに生まれ変わるといいと思うんだ。」

「もし生まれ変われたら、カズキは何になりたい?」

「なれるの?」

「なれたら…、だよ。」

「どうしたらなれるの?」

こうなると、私の話はカズキの耳に入らない。とりあえず、答えておくしかない。

「…魔法が使えればなれるかもな。」

「まほう?」

「ほら、ハリーポッターみたいにさ。」

「そだね。じゃ、生まれ変わったら魔法使いになって願いをかなえよっと。」

……それじゃ順番がへんだけど。
「で、結局カズキは何になるんだ?」

「さくら」

「さくら?」

「さくらになって、いっぱい花を咲かせて、おかさんを笑わせるんだ。」

「そっか。」

「さくらなら学校行かなくてもいいし、先生にも怒られないよ」

「…そうだな。」

「それでね、おかさんもぼくの隣で咲いていたらいいな」

「そうだな」

「でも、そしたら、おかさんのさくらは笑うかな。ね、サクラって笑う?」

「笑うさ。桜が満開で笑うから、みんなお花見したくなるんだよ。」

「そっか。じゃ、ぼくが桜になっていっぱい咲くから、となりでおかさんの桜もいっぱい笑うね。」

「そうだな。おれは、その下でビールを飲もうかな。」

「うん。ぼくとおかさんの下で、ライオンはお花見だね。」

「そうだな。」


カズキと話していて、昔つきあっていた彼女に聞いた言葉を思い出していた。

「生きてる意味は、生きてるだけで、
自分を大切に思ってくれる人を、寂しさから守ることなのよ」
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