和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

町子さん、何が好き?

2022-03-27 | 柳田国男を読む
BS再放送の朝ドラ「マー姉ちゃん」が先週でおわりました。
最後の方に、愛川欽也扮する田河水泡氏も出てました。

講談社学術文庫に田河水泡著「滑稽の研究」がある。
そのあとがきに

「始めは自分の勉強のための研究だったので、
 急ぐこともなく、気の向いたときの調べごとにして、
 何年も空白に過ごしたこともありました。
 
 資料が溜って研究の形がついてくると、
 これを勉強の報告書として出版したい
 欲が起こってきたのですが、
 ぐずぐずしているうちに
 今年は88歳になりました。
 ここらで本にしておかないと、
 もう先がないというわけで、
 これを米寿を記念する出版としました。
            昭和62年7月    著者   」

この田河水泡氏の本には、『サザエさん』の四コマが、
6作品引用されておりました。

「長谷川町子 思い出記念館」(朝日新聞社)の
最後に載っている長谷川町子年譜をひらいてみる
(カッコ内は、長谷川町子の年齢)。

1987年 (67歳) 「サザエさん旅あるき」を連載。
     6月13日 母貞子、死去。享年91。

1989年 (69歳)
    1月      昭和天皇崩御
    12月    田河水泡、死去。享年90。

1992年 (72歳) 冠動脈硬化症による心不全のため死去。

とありました。
もどって、『滑稽の研究』には、連歌や俳諧も出てきますし、
『サザエさん』の四コマ漫画も、田河水泡の漫画もあります。

うん。たのしく『俳諧』と『漫画』とを結んでみます。
最初に、ちょこっと俳諧について
講談社学術文庫の尾形仂著「歌仙の世界」の最後に
那珂太郎氏が書いており、こんな箇所があります。

「連句が想像力の遊び、連想くらべの遊びだとするなら、
 その鑑賞もまた想像力と『知』による・・・・創造、
 解読くらべの高度の遊びだと言っていいかもしれない。」
                       (p282)

はい。この『想像力の遊び、連想くらべの遊び』なら、
容易に漫画へとつながりそうです。

ここは、食べ物の連想ということで、
思い浮かぶ2箇所を引用。

筑摩書房の、「新編 柳田国男集」第八巻。
その解説は、長谷川四郎氏でした。
その解説の、はじまりから引用。

「プールサイドに夏が来りゃ、と始まるワンサカ節があって、
 この、もうけ(コマーシャル)ソングが私はわりと好きだが、
 その作曲家の小林亜星さんがこのあいだ、
 ぴったしカンカンというテレビ番組に登場して来て、

 この亜星は戦時中、疎開していた学童でしたが、その頃、
 学友たちから、やってくれとよく頼まれたことがありました。
 いったい、なにを頼まれたのでしょうか。

 とクイズを出したが、正解は
 『亜星ちゃん、ごちそうの絵をかいて。』
 と頼まれたと言うのであった。

 そこで亜星少年はバナナ、コロッケなどの
 いろんな食品の画像をえがいて、それに
 それぞれの名称を書きそえて配給し、
 学友たちはみなそれを保管していて
 腹が減ると(腹はいつも減っていた)
 取り出してじっと眺めたという。      」

ここから、長谷川四郎氏は、柳田国男を論じてゆくのでした。
さいごに、『サザエさん うちあけ話』の、この個所を引用。
それは、田河水泡氏の家での出来事を、絵と文とで描く箇所。

「また、先生は弟子どもを全部招いて、
 パーティーを、開かれたことがあります。
 じゅん備のお手伝いをしました。

 『モギ店が出るんだ。町子さん、何が好き?』
 『おすしです』

 先生はタンザクに『おすし』と書かれました。
 色とりどりのタンザクに、
 『ライスカレー』『おでん』『みつ豆』『やき鳥』『お好み焼き』
 みるみる15種類ほどの品名を書いてゆかれます。

 『そんなに出るんですか!!』
 私はおどろき浮かれました。
 先生はニヤニヤして、品名の下に 
 『売り切れ』と、赤えのぐで入れてゆかれるのです。
 半分以上もです。

 そして、私に命じて、その紙を全部カモイにつるされました。
 来た人たちは、にぎやかな色彩に一応ワーッとはずみます。
 ・・・・・・                     」
            (p8~9・姉妹社)







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2 コメント

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おはようございます(^^♪ (のりピー)
2022-03-27 11:13:15
連句が「想像力の遊び 連想比べの遊び」なら・・と漫画が楽しく繋がって、ピーマン頭もスッキリ!!いたしました~~(^-^) 
それにしても田川水泡さん、お見事ですね!!
返信する
これで。 (和田浦海岸)
2022-03-27 12:37:15
こんにちは。のりピーさん。
コメントありがとうございます。

うん。これで、芭蕉を語りながら、
サザエさんに登場してもらう手も
ありそうな気がしてくるのでした。

田河水泡氏の水先案内でもって、
芭蕉を読める気がしてきました。
古本には、芭蕉関連がおおくて、
ついつい安く買っておりました。
目出度くそれが読み頃となった。
うん。水泡に帰さないよう注意
しながら手ごたえを感じながら、
のっそりと本をひらくたのしみ。
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