和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

上映会。数十人の観客。

2018-03-16 | 短文紹介
「正論」2015年12月号をひらく。
そこにある八木景子さんの文を読む。
古い雑誌なので、ほとんどの方が、
もう読むこともないでしょうね。



 時   2015年9月上旬の一週間
 場所  カナダのモントリオール世界映画祭
 作品  八木景子監督映画「ビハインド・ザ・コーヴ」


映画祭のドキュメンタリー部門に
この作品の、プレミアム上映された様子が
八木景子さんの文の始めに綴られております。
はい。私には、その記述が貴重に思えるのでした。
はい。どなたかに読んでもらいたいほどに(笑)。
では、以下に引用させてもらいます。
 

・・・1回目の上映会は9月4日。
大手配給会社がバックアップしているわけでもなく、
事前のPR活動は皆無だった。しかし、
情報を聞きつけ、数十人の観客が見に来てくれた。
・・・・事前に事務局から連絡があった。
上映後に観客からの質問タイムを受けるかどうか
の確認だった。する、しないは自分の意思だ。
この質問タイムで私自身がシー・シェパードを
はじめとする活動家の矢面に立つかもしれない。
私の映画は、彼らに対する反論だからだ。・・・
卵を投げつけられる自分の姿を想像し、
予備の服も持参した。

しかし、結果は予想と相反するものだった。
質問タイムには、観客からたくさんの
好意的な声があがった。
質問は設定時間を上回り、
私は劇場を出てからも囲まれた。
依頼したベテラン通訳の方は昨年、
女優・吉永さゆりさんの通訳を担当された方だった。
彼は『長年、日本の作品の通訳を担当してきたが、
ここまで質問が出されたものはなかった』
と驚いていた。

意外にも現地のカナダ人からの反応も良かった。
『活動家はまだ来ているのか』と太地町を心配する声。
・・・カナダ人の夫とともに会場を訪れたある日本人女性は
『主人にぜひ観せたかったのです』と話しかけてきた。
捕鯨問題になると家庭内でも意見の対立があったらしい。
この映画を通して、日本の捕鯨に関する理解への
歩み寄りがあったと感謝してくれた。
・・・・
そして、9月7日の最終上映会。
1回目の上映会の様子が日本で報じられたこともあって
会場は大入り。海外の映画祭では、つまらなければ
途中で席を立つことが一般的と聞いていたが、
ほぼ全ての観客が最後まで座って鑑賞していた。
エンディングには大きな拍手が湧き上がり・・・・

そして、観客からの質問が始まった。
最初に勢いよく手を挙げた西洋人の女性は
『これはプロパガンダ映画だ』と批判した。
私が冷静に言葉を選んで説明し始めた途端、
彼女は会場から出て行った。
会場からは失笑がもれた。
・・・・・

次に別の観客から
『活動家が来るかもしれないのに、
質問タイムを設定したことは勇気がありますね』
と声があがった。
捕鯨問題の映画制作自体にも『勇気ある作品』
と指摘する声が相次いだ。
『鯨の歴史の部分が興味深かった』
という感想もいただいた。

こんな一幕もあった。
映画祭の閉会式典が終わったときのこと。
あるスイス人の女性が近寄ってきた。
上映会では質問することができなかったと
彼女は言った。『アメリカでザ・コーヴを見て、
日本側の意見を聞いてみたかった』のだという。

和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米映画
『ザ・コーヴ』は米アカデミー賞を受賞している。
『ザ・コーヴの裏側』と題する私の映画は、
『ザ・コーヴ』への反証作品でもある。
彼女は『米国は世界のポリスと思っているけど、
あなたの映画に米国の一般人のインタビューも
あった点も良かったわ』などと
率直な感想を伝えてくれた。

映画祭の最中には、
海外在住の邦人から、多くの激励もいただいた。
その中には、この映画が海外で披露されたことに
『思わず涙した』と記されたものもあった。
・・・・


注:
DVD「ビハインド・ザ・コーヴ」には
冊子がついています。
そこに、この正論2015年12月号の八木景子さんの
文章が掲載されているのですが、
私が引用した箇所は、冊子の
紙面の都合からか省略されておりました。
それが、私にはとても残念と思えたので、
こうして引用させていただきました。

ということで、
このDVD(発売元・八木フィルム)
を買って下さい(笑)。
そして、あなたも数十人の観客の、
そのひとりとなった気分になって、
この映像を鑑賞してみてください。


コメント
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