和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

絵巻に浮きあがる庶民。

2016-06-18 | 古典
宮本常一著「イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む」
(講談社学術文庫)を読んだあとに手にしたのが
宮本常一著「絵巻に見る日本庶民生活誌」(中公新書)。

この新書は、あとがきによると
「中央公論社刊行の『日本絵巻大成』(全26巻別冊1巻)の
月報に毎号書きつづけたものを読みかえして一通り理解でき
るように排列をかえ、若干補正を行なったものである。」

うん。絵巻のなかの行事や道具や行為には
ちゃんと名前があり、それが列挙されていくのを
読んで活字の醍醐味(笑)。

一箇所だけ引用。

「貴族たちは多くの祭を演出した。『年中行事絵巻』が
それを物語る。いまこの絵巻に描かれた年中行事について
みると・・・・・・・・・・・
その内容についての説明はしばらくおくとして、祭は
おびただしい数にのぼっている。そしてこれで京都の
祭はすべてではないのである。
このような祭の演出者はすべて公家(貴族)であり、
公家の生活がどういうものであったかを教えられる。
そして日本が諸神祭祀のために成立していた王朝で
あったといっていい。この場合、民衆はその見物人
として登場するのである。そしてこのような祭を
見物することによって、日常の精神生活をゆたかに
することができた。民衆は祭の外にあったから
物忌も儀礼も必要なかったはずである。
公家たちの行列を見て笑い、野次をとばし、
そのため追い払われることもある。
決してつつましい見物人ではなかった。
後世になると、民衆は見物するだけでなく、
次第に祭に参加するようになって、
祭そのものがにぎやかになり活気をおびてゆくのである。」
(p4~5)

うん。楽しい読書でした。

コメント
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