乱鳥の書きなぐり

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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 4「つらやあらぬ 鼻やむかしの鼻ならぬ 吾身ひとつハもとの身にして」 二丁裏 三丁表

2020年06月05日 | 在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語

 

 富田高至 編者

 

恩頼堂文 

庫旧蔵本  『仁勢物語』 4 二丁裏 三丁表

和泉書院影印業刊 65(第四期)

1998年 初版

1997年 第三版

 

左右

4 二丁裏 三丁表

◯をかし東の五條に扇子屋のかゝわつらふなりけり、西

の洞院にくすし有けり、それハ本堂にはあらて

針に心ふかゝりけるゆへ、行とふらひけるを、む月

の十日ハかりの程に、ほかと腫にけり、腫所ハ聞けと

人の見るへき所にもあらさりけれハ猶うしと

おもひつるなん有ける、又の年の む月にハ目と鼻と

の間に出て腫て立てみゐてみゝれど、去年に

にるへくもあらす、打笑て肋(あハら)骨もいたきに、つらのゆ

かむまて笑て去年を思出てよめる

  つらやあらぬ 鼻やむかしの鼻ならぬ

  吾身ひとつハもとの身にして

とよみて、夜のほの/″\と明るに、なく/\おきにけり

 

4 二丁裏 三丁表

◯おかし 東の五條に扇子屋のかか 患うなりけり、西

洞院(にしのとういん)に医師(くすし)有けり、それは本堂には有りて(あらて)

針に心深かりける故(ゆえ)、行き弔いけるを、睦月

の十日ばかりの程に、他と腫れにけり、腫れ所は聞けと

人の見るべき所にも有らざりければ猶(なお)憂しと

思いつるなん有ける、又の年の 睦月には、目と鼻と

の間に出て腫れて、立てみ居てみ、見れど、去年(こぞ)に

似るべくも有らず、打ち笑いて肋(あばら)骨も痛きに、面(つら)のゆ

かんまで笑いて、去年(こぞ)を思い出して詠める

  面(つら)やあらぬ 鼻や昔の鼻ならぬ

  吾身(わがみ)ひとつはもとの身にして

と詠みて、夜のほのぼのと明(あく)るに、泣く泣く起きにけり

 

あらて

 有りて

む月  岩波古典文学大系

 睦月陰暦正月。)

うし

 憂し

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊   

  つらやあらぬ 鼻やむかしの鼻ならぬ

  吾身ひとつハもとの身にして

 とよみて、夜のほの/″\と明るに、なく/\おきにけり

『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す

  月やあらぬ 春や昔の春ならぬ

  わが身ひとつはもとの身にして

 とよみて、夜のほの/″\と明(あく)るに、泣く/\帰りけり

  

 

 

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