乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

壽 初春大歌舞伎  葛の葉 佐々木高綱 芋掘長者 沼津

2008年01月12日 | 歌舞伎

 

(写真上は 一月十日。本戎の日に。藤十郎丈(右)と宝恵籠に乗られた後の三津五郎丈。松竹座の前で。)

 

 

記録だけ

(今回は、昼の部・全演目まとめて記録しています。)

 

  壽 初春大歌舞伎

 

  葛の葉 佐々木高綱 芋掘長者 沼津 

 

 

 一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)葛の葉(くずのは)  

  中村扇雀宙乗り相勤め申し候  

 

  葛の葉姫/女房葛の葉  扇 雀 

  信田庄司  竹三郎            

  安倍保名  翫 雀

 

 この芝居も好きな演目の一つ。

 安倍清明は、陰陽師・安倍保名と白狐との間に生まれた子であるという『信太妻伝説』をもとに作られた、浄瑠璃『芦屋道満大内鑑』の一場面で、大変楽しめた。

 本物の葛の葉姫が現れたため、家の障子に

 

   「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる 

           信田の森の恨み葛の葉」

 

という歌を残して姿を消す。 

 泣く子をあやしながらの『曲書き』する、扇雀丈の筆さばきも見事なもの。 

 

  『恋しくば』を 下から『恋 ばしく(行書・以下全て)』

  『尋ねきてみよ』

  『和泉なる』は左手で書き、鏡文字。

   泣く子をあやしながらの『信田の森の』

   子を抱きかかえ、口で書く、『恨み葛の葉』

 

 人を愛してしまった白狐の悲しみや親子の情愛溢れる名場面は見ごたえがありました。

 

 

   

 

 

   二、佐々木高綱(ささきたかつな) 

 

  佐々木高綱  我 當        

  佐々木小太郎定重  進之介           

  馬飼子之介  吉 弥           

  高綱娘薄衣  新 悟            

  鹿島与市  薪 車          

  高野の僧智山  彌十郎         

  子之介姉おみの  翫 雀

 

 古典歌舞伎の好きな私にとっては、いささか新歌舞伎は苦手かもしれない・・・と、毎回 同じ感想を書いている。進歩のないこと。

 歌舞伎や能楽を楽しむ場合、言葉のリズムも一つの大きな要素だと感じる。したがって 新歌舞伎や ○之○劇団の芝居は、私は馴染むことが出来にくい。

 それでも 昼の部の『佐々木高綱』は、我當丈や彌十郎丈、吉弥丈や翫雀丈も出演とあって、丁寧に観ようと決め込んだ。

 

 沼津では我當丈がはまり役だったが、この芝居では彌十郎丈の台詞の強弱が心地良く、響く。

 やはり彼は、声も良く、上手い。

 

 吉弥丈の男っぷりの良さに、満足。

 女形も良いが、立役はさらに心を揺さぶる。

  

 芝居の筋は、

 宇治川の先陣争いで梶原景季に勝った佐々木高綱でしたが、馬を奪う為に馬士を殺めたことを悔い、今は償いとしてその息子を召抱え、供養を行っています。源頼朝の上洛で世間は慌しさを増していましたが、高綱は、自らが身代わりとなって命を救った頼朝の戦勝後の心変わりに憤りを感じています。馬士の命日、不誠実な主君やへつらい武士に愛想が尽きた高綱は、ついに剃髪し、高野山へ向かうことを決意します。 各登場人物の人間性がしっかりと描かれた、岡本綺堂の初期の代表作です。綺堂作品独特の台詞術や、叙情味溢れる舞台が大きなみどころの新歌舞伎で、剛直な武士、佐々木高綱を我當が演じます。(松竹株式会社・歌舞伎美人より転載)

といった具合。 

 好きな役者も演じていたということから考えると、楽しむことができたといえよう。

 

 

   

 

 

  三、芋掘長者(いもほりちょうじゃ)  

 

 芋掘藤五郎  三津五郎             

 緑御前  扇 雀             

 魁兵馬  彌十郎            

 菟原左内  吉 弥            

 腰元松葉  新 悟          

 松ヶ枝家後室  秀 調           

 友達治六郎  橋之助

 

 待ってましたの『芋掘長者』

 今回の昼の部はなんといっても 『芋掘長者』と 『沼津』、これら 二演目を楽しみにしていた私。

『芋掘長者』は岡村柿紅作のコミカルな舞踊劇。

 面白くてけらけら笑いながら、観ていました。

 

 長唄と常磐津の掛け合いも楽しく賑やかで、リズムに合わせて自然に体が弾んできます。

 三津五郎丈と橋之助丈の息のあった舞に、思わず息をのんでしまう場面も・・・。

 

 何度でも観たくなる 今回昼の部の『芋掘長者』でした。

 

               めでたしめでたし・・・。

 

 

   

 

 

  四、伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)  沼津(ぬまづ)          

 

 雲助平作  我 當

 呉服屋十兵衛  藤十郎              

 お米  秀太郎            

 池添孫八  彌十郎          

 荷持安兵衛  三津五郎   

 

 

「待ってました!!!」  

 

 この演目を我當丈で観たかった私。

 素直に言える、

「よかった。」

っと・・・。

 もう素晴らしいというより他に言葉がない。

 

 我當丈、涙を流し、鼻水を垂らしての大熱演。

 死にゆく表情も見事。

 だんだん先代の仁左衛門はんに、演技が似てきたような今日この頃・・・。

 我當丈の雲助平作は重厚で、深く心に染み渡り、最後まで心をとらえた。

 

 藤十郎丈と我當丈の組み合わせは、私は結構好き。

 藤十郎丈の軽やかさと品の良さが引き立つ感じがする。

 

 秀太郎丈は今回も美しく、素晴らしい。

 品の良い、しかしながら色気を感じさせる仕草は、べてらん芸。

 昔遊郭に勤めていたことを、ほのかに におわす。

 かんざしを抜き取って売り、夫の傷代に当てたという無言の仕草の、色気のあること・・・。

 義太夫の語りが、一層心をつかむ。

 

 この芝居は、人形浄瑠璃『伊賀越道中双六』を歌舞伎化したもの。

 しょっぱな、義太夫の

「♪い~い~~い~~い~い~・・・・♪」

のリズムは心地が良い。

 この『い~』は宿場の数を表していると何かで読んだことがある。

 興味深い。

 

 壽 初春大歌舞伎の昼の部では、私にとっては、『伊賀越道中双六 沼津』が一番の収穫だったかもしれない。

 前半は笑って観ていた『沼津』だが、後半は熟視し、最後には身震いするほどに感動した。

 今回の役者で、何度でも観たくなる『沼津』に出会うことができて 良かったと感じている。

 

 

    

 

 

 

コメント (8)
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