芬陀院(ふんだいん・ 雪舟寺)
禅院式枯山水 室町時代中期
一月十四日、夫は締め切り(仕事)に追われ、書斎にこもっている。
私は一人、京都の東福寺山内にある塔頭のひとつである 雪舟寺に行くことにした。
正式な名は芬陀院(ふんだいん)という。
禅院式枯山水が見事に美しい。
苔は青々と茂り、川白く流れる。
これぞ禅寺の日本的美意識、と 感心すること しきりなし。
写真は鶴亀の庭。
右は亀島。
うつってないが、左が鶴島(折鶴を表現)。
こちらの庭は、動く亀石と呼ばれている。
幼少の頃涙で書いた鼠のような出来ばいの良い亀を画くことを所望された 云々の話が、いただいたパンフレットに記されている。
こちらの庭は、それほど大きくはない。
丸窓(写真一枚目)の近くの、自然と調和した庭。
一月の冷たい外気を感じながら、この心地よい庭を見ていた。
もみじの季節でもないのに、東福寺では 結構観光客とであった。しかし、雪舟寺は、私一人也。
枯山水を見渡せるように用意されている座布団が規則性を持って、リズミカルに感じる。
光を、自然をふんだんに取り入れた日本の建築物の美しさに、ただひたすら感心するばかり。
がらんどうに開け放った障子だが、冬真っ只中の寒さを感じさせない満足感。
障子ひとつを見てとっても、庭から採取した草花を押し花にして和紙にはさみ、とって近くの敗れやすい部分に、アクセントをつける。
この細工は、障子のあちらこちらで、違った草花が施されていた。
使い込まれた木魚の、色美しきこと。
溜息が出る。
ここからも 枯山水を眺めることができる。
静かな空気の流れに、満足。
一番奥の部屋は茶室。
この寺は居心地が良い。
一人の静かな時間を満喫することができる。
ここ 芬陀院(ふんだいん)は雪舟寺というだけあって、水墨画或いは色付けで画かれた古い襖が数多く見ることができる。
以前襖絵の書物を読んだことがあるが、この部屋の襖絵も、何枚も絵がつながっている。
一室に応じて、角の部分まで上手く絵をつなぎ合わせているところが洒落ているといえよう。
絵画に感心がある私だが、恥ずかしいことに、どれが雪舟のものか否か、わからずにいた。
今は無き父ならば、難なく見分けることができるであろうに・・・。
残念。
雪舟といえば雪舟鼠(上出・涙で画いた鼠)の話を思い出す。
名前こそ知れ、雪舟の画風がはっきりとはわからない。
私の認識外であることが残念だ。
こちらの襖絵は、上二枚の襖絵の左の部屋。
水墨画ではなく、色を施したもの。
右四枚、左四枚の、合計向かい合わせで八枚の襖絵。
天井を見上げると、墨がついていた。
一瞬、さすがは雪舟寺と思ったものの、天井の板はかなり新しい。
現在私がが見た雪舟寺は、昭和十二年に荒廃状態の寺を、重森三玲という人物が復元修理したとのこと。
早合点もいいところ、いい笑い種だ。
整理された庭や、数多くはめられた襖絵の美しさに、日本のよさを再確認した。
一人で見てまわった適度な大きさの雪舟寺は、大変居心地良く、出来ることなら数時間この寺で時を過ごしてみたかった。
私としては、かなり好みの寺であったことを 最後に付け加えておく。