道には爆発跡、遺体散乱… 女子生徒誘拐のナイジェリア
ジョス=杉山正
2014年5月27日03時03分
道路には直径2メートルほどの穴が開き、露店が吹き飛び、周囲の建物が100メートル以上にわたって黒こげになっていた。ナイジェリア中部ジョスの繁華街で20日午後、2台の車が爆発し、118人が死亡した。同国ではイスラム武装勢力「ボコ・ハラム」の関与が疑われるテロが多発し、ここ数日で罪のない人々が200人以上も犠牲になった。
ボコ・ハラムは4月、北部ボルノ州で200人以上の女子生徒を誘拐。「奴隷として売り飛ばす」と宣言し、世界に衝撃を与えた。彼女たちの行方は分かっていない。娘ら親族3人を連れ去られた牧師マーク・エノックさん(50)は電話取材に「強く耐え抜いているに違いない」と語った。
中部ジョスは、キリスト教徒とイスラム教徒が混在する。20日の爆発があった現場近くの病院には、下半身などがない遺体が10体ほど並んでいた。
洋裁業ルース・ジョセフさん(30)は近くのレストランにいて爆発に巻き込まれた。娘のドカスちゃん(2)は顔や足をやけどし、皮膚が広範囲にはがれていた。ジョセフさんは「犯人を憎めば悲劇が終わらなくなるので憎まない。テロが終わるように祈るだけだ」と言った。
北部の都市カノでもテロが頻発する。キリスト教徒が多いサボン・ガリ地区で18日夜、車爆弾が爆発して5人が死亡。記者が現場を訪れると、飛び散った肉片や血だまりに無数のハエがたかっていた。
民家の軒先で男性がうな垂れていた。商店主のスティーブン・ヌウォゴさん(43)。娘のマグダリーンちゃん(8)とソニアさん(12)を失った。
2人の娘は露店で魚を売る母親を手伝っていた。母親が店から離れたときに爆発が起きた。ヌウォゴさんが駆けつけると、2人とも足を失うなどして倒れていた。息をしていないのが分かったが、1人ずつ担いで病院に運んだ。
ヌウォゴさんは「娘たちは勉強が大好きだった。テロが娘たちの、私の未来を奪った。まさか自分の娘が被害に遭うとは」と言葉を詰まらせた。
誘拐や爆発……。人々は突然襲ってくる恐怖におののいていた。街中で取材に応じた人々は、「ボコ・ハラム」という言葉すら口に出そうとしなかった。(ジョス=杉山正)
ナイジェリアの女子生徒たちはどうなったのか?
2014.07.09 18:10
西アフリカに位置するナイジェリアで4月14日、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が女子学校を襲い、200人超の女子生徒たちを連れ去った事件 から間もなく3か月。当初は、衝撃的なニュースとして多くのメディアに取り上げられたが、このところ動静はあまり聞かれない。この事件は現在、どうなって いるのだろか?
外務省によると、この事件は4月14日、ナイジェリア北東部のボルノ州チクボ地区で発生。イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が女子学校を襲撃、多 数の女子生徒を連れ去った。州警察の発表によると、連れ去られたのは276人の生徒。このうち53名は脱出したものの,223人が行方不明となっていると いう。
その後、情報は錯綜している。国内外のメディアは、7月4日にボコ・ハラムに拉致されていた女性約60人が脱出に成功した、と報じた。しかし、この女性たちは4月に連れ去られた女子生徒たちとは別の人たち。ボコ・ハラムは、女性の拉致を繰り返していると見られる。
ブルームバーグの報道によると、「ナイジェリア軍は5月に女子生徒たちの居場所をつかみ、6月には拉致に関与したボコ・ハラムの下部組織のリーダー を逮捕した」と発表。ところが、「偵察機を派遣し救出活動を支援している米国は、人質たちの居場所は今も不明のままだ」と発表している。どちらが本当なの か現状では分からない。いずれにしても、女子生徒たちの安否確認について、はかばかしい進展がないのだけは確かだ。
日本政府も、この問題の支援に乗り出している。外務省によると、6月13日、ナイジェリアのために85万5000ドル(約8300万円)の緊急無償 資金協力を実施することを決定。この資金は、国連児童基金(UNICEF)、国際労働機関(ILO)、国連人口基金(UNFPA)などに送られ、被害を受 けたボルノ州チボク地区のコミュニティーで、女性への暴力からの保護対応・心理社会的サポート・保健・医療などの分野で役立てられているという。
この事件に新たな動きや情報はないのか?外務省アフリカ第一課に問い合わせると、担当者は「今後の事件の推移については、各国と意見交換しながら情 報収集しています。いろんな情報が入り乱れていますが、我々としても報道で出ている情報以上のものは裏が取れないので、申し上げることはありません」と言 葉少なに語った。
痛ましいのは、「ナイジェリアからは毎日のように、テロで人が死亡したとの情報が我々のもとに入っています」という話だ。たまたま今回の女子生徒の 事件はセンセーショナルに報道され、SNSなどでも広まったこともあり、世界的に注目を集めている。が、ボコ・ハラムが引き起こしている事件はこの他にも 無数にある。最近も、サッカーW杯の観戦会場やショッピングモールでの爆破テロ事件などが報道されている。
世界有数の人権NGOアムネスティ・インターナショナルの日本支部「アムネスティ日本」(東京都千代田区)は5月9日~6月20日、「ナイジェリア 政府は少女らを救出するための具体的な行動を起こしていない」として、少女たちの早期救出に努めるよう署名活動を展開。1578人分の署名を、在日本のナ イジェリア大使館に届けた。しかし、その後、大使館側から何のリアクションもないという。アムネスティ日本の担当者は「署名活動を行ったりすると、他国の ケースなら大使館の方が来られるなど、何らかの反応あるのですが…」と首をひねる。
ナイジェリア在住の輸出入業・石野香有さんがニュースサイト「ハフィントンポスト日本版」に書いた記事によると、ボコ・ハラムは、イスラム系の政治 家の出資を受ける組織だと、何度も報じられている。ナイジェリアはクリスチャンとイスラム系の対立が根深く、今回の女子生徒の拉致事件も事実ではない「政 治的プロパガンダだ」という主張も少なからずあるらしい。真相はどうあれ、この事件は一筋縄では解決できない根深さがありそうだ。
(文責・坂本宗之祐)
ナイジェリア生徒拉致事件 - Wikipedia
近隣の村々から530名の生徒が後期中等教育認定試験に登録していたことが分かっているが、そのうちの何名が襲撃の時間に現場に居合わせたかははっきりしていない。少女たちは16才から18才の卒業を控えた生徒だった。第一報では85名の生徒が拉致被害に遭ったとされた。週末、4月19日になると軍は129名の被害者のうち100名以上が解放されたと発表したがそれは撤回され、21日になると生徒の保護者たちは234名の女生徒たちが行方不明であると発表した。二回にわたり何人かの生徒のグループがテロリストからの逃亡に成功している。警察によれば5月2日現在、被害者は276名、うち53名が自力で戻ってきているという。 別の報告では329名の少女が誘拐され、53名が逃亡に成功し276名がいまだ行方不明であるとしている。
後にアムネスティ・インターナショナルは、ナイジェリア軍は事件発生の4時間も前に襲撃計画の情報をつかんでいながら、学校を守るに足るだけの戦力の増援に失敗したという報告をまとめている。ナイジェリア軍は4時間前に襲撃計画をつかんでいたことを認めたうえで、限界を超えて広範囲に展開している軍に援軍を送る能力は無かったとしている。
2014年5月26日。ナイジェリア軍のトップ(英語版)は被害生徒たちの所在を突き止めたが、想定される被害の大きさから強行な救出作戦は断念したと発表した。
5月30日、ナイジェリア東北地方バール(Baale)地区の民兵が強姦され半死状態で木につるされている二人の誘拐被害少女を発見した[34][35]。近隣の村の住人は、ボコ・ハラムのグループは2人を置き去りにし従順でない他の4人の少女は殺害し埋めたと証言している。223名がいまだ行方不明となっている。
10月17日、ナイジェリア政府は、ボコ・ハラムとの間で女子生徒の解放について合意に達したと発表したが、翌11月、ボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウは、ビデオレターの中で合意は事実ではないとし、既に女子生徒はイスラム教に改宗した上で結婚させたと説明している。
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