<不可能図形>・・・カリフォルニア工科大学下條教授
朝日新聞が、毎週日曜日に「be」という8ページ建てくらいの別刷の
日曜版を折り込んでくれるのだが、beという文字の下に、Wonder
in life 不思議いっぱい と書いてある。これがなかなか面白い。
2月5日の7ページに、「目の冒険 知覚を遊ぶ⑤」という記事があっ
た。書いているのは、カリフォルニア工科大学の下條信輔教授で、
下の不可能図形は下條研究室提供となっている。
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<トリック・アートの先駆者 M・C・エッシャー>
私は、画家の安野光雅さんが水彩画で描く夢のような不思議な絵
を何度か見たことがあるが、トリックアートの先駆者はオランダの
マウリッツ・コルネリス・エッシャーという画家らしい。日本でも長崎
県のハウステンボスと三重県立美術館でエッシャーの絵を所有し
ているが、インターネットでもその他のエッシャーの摩訶不思議な
トリック画を沢山見ることが出来る。
下條教授の上の図形を見てみよう。一見何もおかしな所はないよ
うに見えるが、ジィーと見ていると一瞬自分の目がおかしくなった
かと錯覚する。しかし、やはりこの絵はおかしいのである。
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<図形は描けるが、物理的な実存は不可能>
この絵の右側半分に手を当てると左半分だけが見える。何もおかし
なところはない。次に左側半分に手を置いて右側の絵を見てみると
こちらもおかしなところはない。しかし、手を当てないで全体を見ると
左側の中段と、右側の下段の棚のような部分が摩訶不思議な関係
になっているのである。
図形の中では繋がっているが、現実の3次元の立体では絶対にあり
得ない。つまり不可能図形なのだ。
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<不可能図形と文明の衝突>
今、ヨーロッパの文明と中東のイスラム教信者との間で、イスラム教
の預言者ムハンマドの風刺漫画をめぐって衝突が起こっている。
かつて、80年代末にもインド系英国人が書いた「悪魔の詩」という作
品をめぐって、イスラムを冒涜するものだという理由で、書いた本人
と表現の自由を標榜する欧州諸国がイスラム諸国の激しい攻撃に
曝されたことがあった。
先ほどの不可能図形と同様に、一つの価値観で見ようとするとお互
いに実在不可能な世界の存在がよく分かる。民主主義を標榜する
国の立場から見ると、世界は全て民主主義の世界であるべきなの
だが、イスラム教国から見ると全世界のあるべき姿はイスラムの教
えによらなければならないのである。民主主義といえども、そこには
寛容がないのである。
それぞれの世界を2時限の平面的な世界から3次元の立体図形に
して組み立てようとすると、観念の世界ではお互いが存在していた
にも拘わらず、現実の世界へ通じる通り道がないことに気がつく。
上の図形に描かれている振り子のような丸いボールの位置も、確か
にそれぞれのボールはその位置以外に考えられる場所はないのだ
が、それが「文明」や「思想」や「宗教」ということであるとしたら世界
の文明や思想や宗教は、空想や観念の世界でしか共存できないと
いうことになる。
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<サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」>
30年以上も前に、政治学者のサミュエル・ハンチントンは、世界中
でおきている、あるいは今後激しくなるであろう文明の衝突を分析
した。その中で、日本を含む6大文明の衝突を分析、将来において
はイデオロギーの対立から宗教の対立に発展すると論じた。彼は、
文化的な集団の次元を上げていくと、最も大きな集団として、アラブ
人、中国人、西欧人などの文明圏にたどりつき、これらの集団を結
びつける文化的な絆は存在しないと断定し、そのため「文明の衝突」
が待っていると述べた。その中で、イスラム教と西欧の歴史的衝突
の可能性についても論じている。尤も、現在では良くも悪しくも西欧
が進める民主主義という体制が、イスラム教国との衝突を引き起こ
していることは見通してはいなかった。また、近代化を急げば富と
貧富の格差が拡大して、それが西欧対イスラムに転化して衝突が
複雑化している
文明の衝突が顕在化していることは確かであるが、文明の衝突以
外に、政治的、経済的な要因が複雑に絡み合っていることも事実
である。西欧諸国にも何故このような激しい衝突が起こるのかとい
うことについて、謙虚にかつ真剣に考えることが求められる。
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<日本とイスラム>
勿論わが国も埒外ではありえない。他人事のように考えている人
がいるとすれば、それは認識不足である。たとえば、日本にとって
身近な存在であるアジアのインドネシアは、人口的には世界最大
のイスラム教国なのであり、矢張り今回の件については強硬に反
発している。そのインドネシアのイスラム教国としての精神文明に
ついて、日本国民は充分に理解しているとはいえない。
日本が民主主義国だと思い込んでいる日本人は、中国や北朝鮮
を除けばアジア諸国の体制は日本と同じような体制だと錯覚して
いる人が多い。しかし、今回のイスラム教国の反応を考えると、日
本とてアジアのイスラム教国との間で文明の衝突が起らないとい
う保証はないのである。
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そこを「3方向変身立体」で今年の最優秀不可能立体を受賞したということでした。
このような「錯視」は、一つの方向から見える立体物は無限にあるということらしいのです。
アイデアを方程式に置き換えて、3Dプリンターが形状を造るのだと申します。