悠々time・・・はなしの海     

大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

久しぶりの出前「寄席」で笑った!

2010-04-18 03:28:08 | 独りごと
<出前「寄席」観賞>

平成22年4月10日(土)、4、5年ぶりに「寄席」に行った。「寄席」といっても
「定席」ではなく出前の寄席であるが、パンフレットの上の方に、「笑って健康!・
・・」と書いてあったことと、地元の落語会によく出ている女性落語家で、本業は
人形劇団の代表を務めている女性が出演する、と書いてあったことを思い出し
たからである。それに、久しぶりに「笑って健康!」になってみたかった。


<私の世代の落語家>

私はこのところ4、5年間「寄席」に行ったことがないので最近の落語家の名前をよく
知らない。私がよく聞いた落語家は、名人といわれた落語家かその時代のお笑いの世界
を席巻した人気者、例えば古今亭志ん生、柳家小さん、三遊亭円生、その次の世代の
円朝、橘家圓蔵(月の家円鏡)、三遊亭円歌(三遊亭歌奴)、鈴々舎馬風(柳家かえる)
桂小金治、三遊亭圓楽などのイメージしかない。それに異質な落語家としては爆笑王と
いわれ林家三平がいた。もっともこの方々は、既に亡くなったか多くは高齢である。

当日の出演者は、柳家権太楼、柳家喜多八、柳家しん平、三味線柳家小菊のほか3人
であるが、私は誰も知らない。その中の一人に「おいけ家金魚」(むかし家今松師匠に
師事。人形劇団の代表と書いてある)という女性がいた。

所用から戻って急いで会場に飛び込んでいったが40分遅刻で、彼女の出番は既に過ぎ
てしまっていた。女性の漫才師は多いが落語家は少ないので聞いてみたかったのだが。


<柳家権太楼>

当日の筆頭は「柳家権太楼」だが、63歳、落語協会常任理事とある。柳家つばめに入
門、その後師匠の死により、柳家小さん門下に。若い頃の受賞歴に・・コンクール優秀
賞、・・ホープ賞、・・若手演芸大賞、とあり、真打ち昇進も数段飛びの飛び級だった
らしく、相当うまいようである。確かに、小さん譲りの芸風であった。柳家権太楼は、
確かに話し方もうまいし表情や声の高低も巧みである。いかにも上手そうな話術に慣れ
てしまったせいか、感心!はしたが、大笑いはほどほどである。


<「柳家喜多八」>

私が注目したのは「柳家喜多八」である。柳家小三治門下で60歳。真打ち昇進が普通
より遅いので調べてみたら、学習院大学(落研)を卒業してから5年くらいたってから
入門していたので、昇進が遅いのではなく元々の入門が遅かったのだということが分か
った。この日の落語で私が一番おもしろかったのはこの人である。

しかし私が注目したのはあまり冴えない風貌の柳家喜多八の冴えない話術であった。
話術に力みがなく、冴えないように聞こえる話し方はかえって全編にわたって実によく
計算されていて、笑いの連続であった。

柳家喜多八は出囃子のときから「けだるそうな雰囲気」で出てきて座布団に座る。やる
気がなさそうに話し始める。どうなることやらと思っていると、低い落ち着いた声で、かつ
さりげないトーンで、「私、柳の宮は、やる気はあるんですが、体力がないんです」と
自虐気味に話しだす。この言い方で笑いが来る。「柳の宮」という言い方は「学習院出
身」を連想させ、その連想から自虐的に「やる気はあるが、体力がない」と持っていく。
そして、その愛すべき雰囲気を保ちながら「このいたいけな風情が、ご婦人方からみると
たまらない、というんですよ」などと、静かに、けだるそうに、とぼけて言うところで、
それまでクスクス笑っていた聴衆が、ここで一気にどっと笑う。やる気がないのではなく
体力がない、いたいけな雰囲気、そしてけだるそうな話し方を聞いているうちにいつの
間にか引き込まれて爆笑を誘う。一歩間違うと笑いを誘わなくなる危険な話法だがこの
落語家は完全に成功している。これはうまさであり、持ち味である。

この話し方と話のうまさで聴衆を引き込み、最後まで緩やかな笑いの連続となる。入門
が少し遅いので、60歳だが中堅と見られているこの落語家は、滑稽噺から古典の大作
までこなす力量を持っていて、そのうまさは玄人好みである。

「笑いは健康のもと」を標榜する聴衆には「病弱キャラ」で爆笑を誘い、玄人筋には描
写のうまさででうならせるこの落語家は大いに「買い」である。当日の聴衆(特に女性が
多かった)は「病弱キャラ」にはまって最後まで大きな声で笑い続けていた。私は可笑しく
て、涙が出てきて仕方がなかったが、聴衆の一番後ろの席に座っていたので、周囲に憚る
ことなく思う存分笑って泣いた。
これが健康の源でなくてなんであろうかと本当に久しぶりに実感した。


<新作の「三遊亭白鳥」>

当日の夜中にBS朝日で新作の人気落語家「三遊亭白鳥」の「戦え!おばさん部隊」を
聞いたが、大きな声でわあわあドタバタとやっている感じだけで、さっぱり面白なかっ
た。酷評する気はないが、この時間までわざわざ起きていることはなかった。



<「NHK芸能花舞台」>

上記の落語が期待はずれで寝る気にもなれず、

「NHK芸能花舞台 ー舞踊・長唄“月”“紅葉笠”ー」を観賞した。

これはついていた。

長唄“月”は、日本舞踊松本流宗家歌舞伎俳優松本幸四郎の素踊り、“紅葉笠”は、
立方藤間蘭景(女性)の素踊りだったが、日本舞踊の重鎮2人の素踊りを観られる
なんて滅多にないことなので、夜中にこれは大いに得をした感じであった(幸四郎
の本名は藤間昭暁)。


幸四郎の長唄“月”の素踊りに、そこには見えない春と「百舌鳥」を連想して、秋の
“紅葉笠”へと季節が流れて行く蘭景の素踊りからの連想が心地よかった。

そのあと快く眠れたことは言うまでもない。

                                  (おわり)






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