悠々time・・・はなしの海     

大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

昔懐かしい「セルロイド」の筆入れ

2006-04-26 13:01:51 | 文化・文明


4月20日(木)の朝日新聞27ページ「生活」欄に小さなコラム、
「セルロイドの箱」というタイトルを見つけた。見逃しそうな箇所
に、「モノ」という小さな見出しの中に載ってあった。「モノ」の
隣に薄す~い文字で、「装い」、「旅」という文字が見えるので、
この日は「モノ」に関する記事が載ったのだろう。
筆者は中野 翠というエッセイスト、映画評論家である。

*********************************************
「セルロイドの箱」
このタイトルに惹かれた。セルロイドは私の子供のころの生活
の一部、いや、文房具とチッチャな遊び道具なら生活の全部
だったかも知れないのだ。それが、今や死語に近い。

*********************************************
中野 翠さんは、コラムの中でこのように書いている。

「私の子ども時代にはセルロイドはごく身近なものだった。
 筆箱、セッケン箱、歯ブラシ入れ、・・・。キューピーも
 セルロイド製で、よく脚がもげた。そのたびに器用な祖父
 が直してくれたのを懐かしく思い出す。・・・・・・

 その後に出てきた不燃性プラスチックに較べると、つぶれやす
 く燃えやすい。それだけに見た目もやさしく、おっとりした感
 じだ。
 童謡「青い目の人形」には「アメリカ生まれのセルロイド」
 という言葉が出てくる。この歌が発表されたのは大正10年。
 セルロイドの時代は案外長かったのだ。
 今ではアンティークの店や骨董市でしかみかけないが、
「ノスタルジー」という言葉そのまんまの半透明の甘い色合いに
ウットリしてしまう。昭和初期のアールデコ風の模様だったり、

写真(下に載せた新聞記事の中に写っているもののこと)は
 セルロイドの箱いろいろ。一番大きいのは女の子用の裁縫箱。
 ピンク地にこけしの絵。二段になっている。「あ、昔こんなの持
 っていた!」と懐かしく、買ってしまった。
 ・・・・・・・・・・
 あとの二つには、ピアスや指輪を入れている。

 ********************************

<学生服のエリカラーやピンポン玉>
男の私にとって最も身近なものは、セルロイド製の学生服のエリ
(エリカラー)だったが、学習用の下敷きや、大好きな万年筆や
ピンポン玉や鬼のお面などもそうだった。120年前頃から写真の
フィルムに使われるようになったが、それを開発したのは現在の
イーストマン・コダック社の前身の会社である。世界中を風靡した
セルロイドは便利だったが、とても燃えやすかったために不燃性
の合成樹脂の出現によって取って代わられるようになった。


(高山のホテルで)

******************************

「中野 翠」
著者の中野 翠は、コラムニストだが映画評論家として名高い。
この人の発想は、1946年生まれにしては、感覚が若々しく、
都会的で、辛口なところが特にいい。私のフィーリングにぴった
りだが、「おすぎ」の映画評論が好きだ、という人たちから見れ
ば、その対極にいる人である。

早稲田大学政治経済学部を出て出版社に入り、現在はコラム
ニスト、エッセイスト、映画評論家ということになっている。話は
逸れるが、コラムニストという職業が本当にあるのだろうか。
「column」という言葉は、一般的には、新聞や雑誌の中に書か
れる短い評論などを載せる「欄」のことで、そこからその欄の中
に書かれる「記事」を指すようになったが、大体短い文章が多い
から、見逃さないように罫で囲まれていることが多い。その代表
的なものは、朝日新聞の「天声人語」などであろう。





======================================

「コラムという言葉から、話は少々、横道に逸れる」
     ー「天声人語」の筆者の死 ー

今朝(4月26日)の天声人語に、この欄の前の筆者であった
小池民男さんが食道ガンのため亡くなったことが書いてあった。
小池民男さんは昨年の春から「時の墓碑銘(エピタフ)」という
コラムを連載していたが、ガンで倒れたのはその後である。
自分の運命を知っていたかのような題名だった。追悼の意味で
今日の天声人語の後半の部分の一部をここに引用する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 
 「寺山修司が好きで、ある年の命日には「われに五月を」の
  序詞をコラムに引用している。
     
      きらめく季節に/ たれがあの帆を歌ったか/
      
      つかの間の僕に/ 過ぎてゆく時よ
   
その季節を前にして逝った。享年59歳。
        - 中略 -
コラムに限らず、新聞記者の仕事の一つは、人と時代の営み
から「時の肖像」を描くことだ。小池さんは、最後まで力を振り
絞って、その姿を追い続けた。」

(今日の「天声人語」から)

=============================

「コラムニスト雑感」
天声人語を書いている人のことをコラムニストとは呼びにくい。
コラムニストという表現はおかしいのではないか。枠に囲まれ
た段組に書かれた、短い評論や随筆や感想文などをコラムと
いうが、コラムニストという職業は本来、ないのである。そこに
書く人は、随筆家であったり、新聞記者であったり、主婦であ
ったり、料理人であったり、いろいろであり、与えられたコラム
に、単発かも知れないし、連載かも知れないが、特別に記事
を寄稿している人のことである、と思っている。

中野 翠についていえば、エッセイストであり、映画評論家であ
り、文明・文化・人間学の時評家であり、日記文学家であり、
またあるときはイラストレーターである。つまり、一口では表現
できないため、周囲も、多分本人も「コラムニスト」とい職業名?
を使うのではないかと思う。

また横道に逸れるが、「column」は、古代ギリシャ・ローマ時代
の建築物の代表的なものである、石の「円柱」のことである。
もしかしたら、最初にコラムを書くようになったころは、円柱の
ように、硬くて大事なことだけを書いたのかも知れない(?)。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

<我が家のセルロイド(お宝)・・・筆入れ>

我が家で大事に使っているセルロイドの筆入れである。筆を使
わなくなっても、筆入れという。

半透明で、薄桃いろの、やわらかい、ウットリするような、甘い
風合いである。昔から持っているセルロイド製のものでは、今や
この筆入れくらいになってしまった。シャレた模様の棒線と波線
が入っている。今の時代、こんなやわらかい、ムードのある風合
いのモノが少なくなってきた。

そのため、普段は使わずに、大事に机の奥の方に仕舞ってある。









因みに、ビー玉は使っていないが、我が家では、鉛筆と指でクル
クル回して削る鉛筆削りは日常用具である。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

最新の画像もっと見る

コメントを投稿