稲葉真弓遺稿詩集刊行記念会 2015年3月21日 於)日本近代文学館講堂
詩人で作家の稲葉真弓は「詩人の聲」の参加詩人だった。出身は愛知県の津島。僕は稲葉の聲を聴いたことがない。だが彼女は「肉聲を撃つ」ことを通じて、聲を鍛え、作品を練り上げ、数々の賞を受賞した。稲葉の体調は悪く、プロジェクトのプロデューサーの、天童大人は、最期の時が迫っていたのを知っていた。稲葉の「最後の聲の会」は、東京平和教会で行われた。その会に天童から誘われたのだが、僕は行かなかった。最後と知っていたら行っただろう。
そんな悔いが残っていたので、遺稿詩集刊行記念会に参加した。
この会では、かつて日本近代文学館で行われた朗読会の映像と音声が流された。見事な聲だった。読まれた作品も素晴らしかった。マイクを通しての聲だったが、肉聲だったらもっと素晴らしかっただろう。
そしてこの会では、8人の人が発言した。
白石かずこが、先ず稲葉真弓を追悼する詩篇を読んだ。次に天童大人が「詩人の聲」を通じて、稲葉の聲も作品も劇的に変わったのを、紹介していた。
また照井良平は、詩人としての稲葉との交流の話をした。照井は陸前高田の出身。稲葉と照井は、出身地が違う。だが海に近く、海が「心の故郷」だ。だから東日本大震災を素材とした、二人の作品は、当事者意識があって、他人事ではない臨場感がある。詩歌は作者の持っている資質の結晶だとつくづく思う。また高校時代の恩師からは、高校時代の稲葉の文芸活動が紹介された。
続いて染色家の林田勇次、詩人の平田俊子が稲葉の、人となりと作品の魅力を語った。また河出書房の編集者は、作家としての稲葉の作品の変化を語った。最後にパートナーが、稲葉の作家としての、人間としての変化を語った。期せずして、この4人の発言は「詩人の聲」での、人間と作品の変化を語っており、「肉聲の力」を改めて実感した。
そのあと有楽町で懇親会があり、僕は白石かずこの隣りに座って、様々な話をした。宮城県の詩人照井良平、北海道の詩人大島龍とも話し込んだ。また参加していた、詩歌梁山泊を主催する、詩人の森川雅美とも話した。
作者の人格と作品が分かち難いのこと、詩人の肉聲は聴けるときに聴いておくべきだと、改めて考えさせられた。
なお大島龍の最新詩集と、稲葉真弓の遺稿詩集は、このブログの書評に書く予定だ。