岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

東日本大震災、人と神との歌。『東日本大震災歌集』(現代歌人協会編)より。(4)

2021年11月27日 21時41分49秒 | 私が選んだ近現代の短歌
 ・どこまでが人の領域どこからが神の領域弥生11日               沖ななも「燠」 東日本大震災は自然災害である。原発対応の問題で人災とも言われるが、ここは自然災害と捉える。 震災の映像は、どれも衝撃的だった。防波堤を怒涛のように越える波、陸にのりあげた大型漁船、浜にのこった一本松、被災地に容赦なく降る雪。 自然災害ではあるが、「神の手」が働いたと感じた人も多かったことだろう。この作品 . . . 本文を読む

2021年を終わるに当たって(近況報告)

2021年11月24日 12時57分03秒 | 紀行文・エッセイ
 2021年も終わりに近づいた。ここで近況報告をしておく。 創作活動では「相聞」が新しい表現分野となった。これからは「心理詠」「社会詠」「相聞」が作品の主流になりそうだ。『星座α』誌上ででの「体験的・尾崎左永子論」も書き続ける。 体調は最悪の状態。腸閉塞の初期症状を頻繁に起こし、米飯、パン、豚カツ、麺類など以前は食べられたものが、食べられなくなった、炭水化物を摂取しにくくなったのは、痛 . . . 本文を読む

短歌研究が選んだ3首(相聞)

2021年11月23日 21時01分53秒 | 岩田亨の作品紹介
・夕暮れに汝(なれ)の家より帰りゆく散りし桜の敷積む道を 北原白秋の「君帰す朝の敷道さくさくと雪よ林檎の香のごとく降れ」を意識した一首。相聞だが、アララギならこう詠むぞと、勢いて詠んだ一首。・逃れ得ぬジレンマ重く抱えつつ爪切ることも忘るる日々よ 心理詠である。だがこの一首は相聞と連動している。ジレンマがあるから恋をするのだ。そしてこれは相手と会う前日に詠んだ作品。・湧きあがる雲には秋があると言う汝 . . . 本文を読む

東日本大震災の液状化現象の歌『東日本大震災歌集』現代歌人協会編より(3)

2021年11月19日 17時41分36秒 | 私が選んだ近現代の短歌
・あちこちで泥噴き上げてゐたりけり液状化現象わが家の周り                         池田はるみ(未来) 地震による地盤の液状化現象は話に聞いたことはあった。だが身近の目の当りにするのは、あまりなかった。 新潟地震で鉄筋コンクリート造りのアパートが倒壊した写真を見たのみだった。マンホール、地割れ、下水。あらゆるところから、土砂が大量の地下水とともに、噴き出す。これが建造物の下で . . . 本文を読む

東日本大震災の、瓦礫の上に降る雪の歌。現代歌人協会編「東日本大震災歌集」より(2)

2021年11月18日 16時52分26秒 | 私が選んだ近現代の短歌
現代歌人協会編「東日本大震災歌集」より。崩壊の景に降る雪映しおり瓦礫の山に踏ん張るテレビ                   秋葉静江(白南風) 東日本大震災の時の雪の映像は衝撃的だった。 地震と津波で、家を失った人々と、廃墟となった街とに、容赦なく白い雪が降る。これほど震災の被害の大きさを、実感させるものはなかった。 「朝日歌壇」にも、被災地に降り続く雪を詠った作品があった。  東日本大震災の被 . . . 本文を読む

東日本大震災の漁師の歌(現代歌人協会編)『東日本害震災歌集』より(1)

2021年11月12日 10時58分21秒 | 私が選んだ近現代の短歌
・結界はいずこぞ妻子奪いたる青澄む海に漁師頭(ず)を垂る                    青木陽子作(国民文学) 2011年3月11日の東日本大震災は12都道府県で18.425人の死者、行方不明者を出した。 掲出の一首は死者を悼む作品だ。結界とは「ある特定の場所へ災いを招かないために作られる宗教的な線引き」(注連縄や葬儀の幕がそれにあたる)。 震災に妻子を奪われた漁師。男性だがその漁師が、青 . . . 本文を読む

電子書籍『モノクロの現実』を刊行しました

2021年11月11日 11時54分34秒 | 作歌日誌
『剣の滴』電子版あとがきこの度『モノクロの現実』と改題して、第3歌集『剣の滴』を電子版として発刊することとした。幻影はなべてモノクロ現実のものと異なる形象もありの一首による命名。 この歌集は思い出深い。前歌集『オリオンの剣』は自信作を並べ『剣の滴』はその拾遺だった。しかし、その方が力みのない作品が集まった。 また、『オリオンの剣』『剣の滴』はともに「横浜歌人会」の表彰の候補作となったが、選考委員に . . . 本文を読む