岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

風の隼の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月30日 18時59分42秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・ひとたびは空駆けのぼり直線に敵ふくす(原作は漢字表記)べし風の隼「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作。この段階の代表歌だ。 「風の隼」は鳥類の「風に羽ばたく隼」だろうか。上の句の勢いが効いている。「敵ふくすべし」は歌壇で闘ってきた作者の「自己投影」だ。 とにかく作者は自分の作品には厳しい批評眼を持っている。そんな作者の作歌姿勢がわかる作品。また「個別具体的」な場所は「捨象」 . . . 本文を読む

現代万葉集の2022年版三首(相聞)

2022年11月30日 00時04分31秒 | 岩田亨の作品紹介
今年は「相聞」を三首出詠した。・お互いの呼吸のさまを感じつつ峠に立ちて琵琶湖見下ろす・住み慣れぬ異国の地にて暮らし居る女(おみな)二人を愛おしむわれは・汝(なれ)はいま大人の表情見せたりき紫式部のいろ淡き日に 難解ではなかろう。知り人を思いやる三首だ。 相手が男女どちらでも、年齢に関わらず「相手を思いやる」のが「相聞」である。 . . . 本文を読む

あぶら菜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月29日 00時11分24秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・あぶら菜に似る黄の花を踏みしだきわれは天空の下の一点「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「あぶら菜に似る黄の花」の「個別具体的」な植物名は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。「天空の下の一点」という「結句」が効いている。「結句で勝負せよ」と言う作者だが、それを実現した一首である。また、上の句から . . . 本文を読む

雨の日の桜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 21時25分01秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・雨の日のさくらはうすき花びらを傘に置き地に置き記憶にも置く「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 「花びら」を主語とした擬人法だが違和感がない。それは下の句のリフレインの効果だろう。「擬人法」はわざとらしく、また俗になりやすい。リフレインの心地よさが、それを帳消しにしている。ここは極めてうまい。「短歌の90%は技術だ」と作者は佐藤佐太郎に言わ . . . 本文を読む

立春の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 00時06分51秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・立春の日を浴みゐたり目に見えぬ花を心に蓄ふるごと「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「目にみえぬ花」とはなにか。「個別具体的」な花の名は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 「目に見えぬ花を心に蓄える」という表現は幻想的だ。「幻想歌」と名づけようか。 佐藤佐太郎に学びながら、全く異なる「感受」。 . . . 本文を読む

三十代の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月26日 01時19分13秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・足早に駆け抜けしわが三十代聖橋散る枯葉ボブ・ディランなど「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「モダンな心理詠」だ。作者は「かまくらもだぁん」という表題の歌集を上梓しているので「モダンな感覚」の持ち主だ。作者の美的感覚を表現した作品。佐藤佐太郎に学びながら、佐藤佐太郎とは全く異なる感覚。独自性とはこういう出方をするのだ。何も突拍子な作品が独 . . . 本文を読む

夕霧峠の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月24日 15時46分13秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・秋草の花みな濡れて霧になびく夕霧岬といふ道を越ゆ「尾崎左永子八十八歌」所収。歌集では「夕霧岬」これで作者は歌壇で最も権威のある賞を受賞している。その歌集の表題歌である。2015年の色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「秋草」の「個別具体的」な名称は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 「夕霧岬」は実際に石川県にある。斎藤茂吉の直弟子の梶井氏の住 . . . 本文を読む

透明の香の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月23日 16時57分14秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・光さへ透明の香を持つならんこの青豁(あおたに)に羊歯ほぐれゆく 「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「光が透明の香を持つだろう」に作者の発見がある。独自性のある「感受」とも言える。「青豁」の「個別具体的」な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、上の句から下の句への転換は「序破急」の . . . 本文を読む

夏炉冬扇の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月22日 18時13分41秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・夏炉冬扇といへどやさしき音に立つは蔵ひ忘れし冬の風船「尾崎左永子八十八歌」所収2015年開催の「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「場所」の個別具体的な「名」は「捨象」されている。佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 上の句と下の句への転換が「序破急」の「破」「起承転結」の「転」である。また「全体」が寂しさを「象徴」しているように感じる。 . . . 本文を読む

花芽幾千の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月22日 00時14分16秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・空渡る風の音して早春の闇にふくらむ花芽幾千「尾崎左永子八十八歌」所収。2115年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。思い出した。この「色紙展」に僕は行ったのだ。「色紙展」といっても「色紙」「短冊」「掛け軸」があった。岡井隆、岡野弘彦、安永蕗子が出品していた。岡井、岡野、安永、尾崎の短冊が即売されていた。尾崎左永子の短冊はいち早くなくなり、僕が行ったときは、他の作家の短冊しか残 . . . 本文を読む

薔薇の模様の傘の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月18日 23時59分25秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・濡るるといふ程もなき街角に薔薇の模様の傘を買ひたり「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「美しい都市詠」だ。 「街角」の個別具体的な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」また下の句への転換は「序破急」の「破」。「起承転結」の「転」である。 . . . 本文を読む

夏椿の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月17日 17時48分08秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・たそがれに蕊伏せて散る夏椿散りてなほ浄し夏至の土の上「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」への出品作。この段階での代表作。 二句、四区に作者の発見がある。「歌が出来なかったら、メモ帳を持って外へ出ましょう」という作者だが。漫然と外出しても「歌」は詠めない。観察眼が必要だ。五感を鋭くして外出するのが肝要だ。 この作品では「個別具体的」な場所が「捨象」されている。佐藤佐太郎の言 . . . 本文を読む

春の雲の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月16日 23時35分44秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・路地曲がるたび相変ふる街空にどの部分にも春の雲見みゆ「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品。この段階での代表歌だ。「句またがり」があるものの気にならない。三句、四区、結句が定型だからだが、「春が来たよりこび」の心の揺らぎ表現する「必然性のある句またがり」だ。又。町、路地の、個別具体的な名前は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し . . . 本文を読む

白椿の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月15日 19時10分21秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・椿白し花には花の影ありて時の記憶を思ひゐるべし「尾崎左永子八十八歌」所収。 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表作。「時の記憶」とは何か。「季節の移り変わり」と解釈した。世がかわり、時代が変われど「椿の白」は不変である。自然の普遍性を歌ったと解釈できる。「時の記憶」の個別具体は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉のそぎ落とし」。感動の中心を絞 . . . 本文を読む

電光のニュースの歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月13日 18時21分28秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・電光のニュース動ける夜の空に垂直に昇る文字の断片 「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「電光のニュース」とは都会の夜に流れる「文字で知らせるニュース」だろう。政治経済などの情報が「電光」で示される。これを「垂直に昇る文字の断片」と捉えた。「都会の夜の情景」が浮かぶ。ニュースの内容は「捨象」されている。吉報かもしれぬし、悲報かもしれぬ。 「 . . . 本文を読む