草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

草むしりの「幼年時代」その8

2019-01-23 14:42:04 | 草むしりの幼年時代
山茶花 

 私が子供の頃、家の裏庭にはたんぽと呼ばれる、きれいな水溜めの池があった。そこに竹で作った樋(とい)をかけて、谷川の水を引き入れていた。その頃はすでに井戸にポンプを取り付けた水道はあったが、よく日照りになると井戸の水がかれて、お風呂にはたんぽの水をバケツで汲み入れていた。
 
 たぶん井戸の水がかれたかポンプが故障したかだったのだろう。バケツでたんぽの水を汲んで風呂入れたことがあった。私は子供の頃から部屋の掃除や後片づけは苦手だったが、風呂を沸かしたり薪を割ったりするのが好きな子供だった。その日も喜んで水汲みをした。

 たんぽと風呂の間には白い花の咲く山茶花の木があり、この木の下を何度も通ったのを覚えている。それから少ししてあちこちが痒くなり、体全体が腫れたように真っ赤になってしまった。すぐに病院に行って注射を打って事なき得たが、後にも先にもあんな痒い思いはしたことがなかった。
 
 翌朝起きてみると、父親が山茶花の木を切っていた。なんでも毛虫がいっぱいついていて、私はこれに刺されたのだと言うのだ。山茶花の木は日陰にあり、花は少ししか咲かせなかった。しかしその楚々とした白い花が私は好きだった。けれども母は辛気臭いと言って、この木を嫌っていた。

 今では山茶花の植わっていた辺りには椿の木が植わっており、毎年たくさんの赤い花を咲かせる。きっと母がその後に植えたのだろう。私は今でも薪で風呂を沸かしているが、たんぽの竹樋は無くなり、井戸水はボーリングしたのでかれることが無くなった。