酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

仙台与太郎物語 ほたるからの便り

2011-11-04 09:38:40 | 落語の話?
宮城教育大学落語研究会、その三姉妹。
「奇矯」「つい楽」そして「ほたる」。
落語研究会発足してすぐに集まったメンバーでした。
部長と言うわけではなかったのですが、「翔家からす」君は、仙台向山高校落語部の後輩。
彼が中心となって落研を創設。酔漢も手伝いました。
「あん好先輩。意外に集まったんですよ」
「何人集まったのっしゃ?」
「それがですねぇ、女の子が3人も」
「また、集まったなや」
と、部室(兼教室)に行きました。
揃いも揃って三姉妹の誕生でした。ですが・・・。
「あんだ、本当に落語すんのすか?」
と、酔漢が最初に聞きましたのが「夏家ほたる」と高座名としておりました彼女でした。
「ダメ・・・ですか?」
「んなことはねぇのっしゃ。んだとも・・」
からす君も。
「先輩、あのぉ、落語するって雰囲気がどっからもかんじられないんですよねぇ」
そうなんです、あまりにも、女子大生というよりは、まだ中学生?というような雰囲気を持つ「ほたる」でした。
「じゃあ。座布団に座って」と、僕らの提案に彼女が高座に上がりますと。
「猫の置物みてぇだっちゃ」
これは、全員の感想でした。
高座の座布団がかなり広く見えました。
「落語の経験はあんのすか?」
「少しですけど・・・上方が好きで・・・」
「また珍しいなぁぁ」
と彼女の噺とは、上方落語のメジャー作品「代書屋」でした。


「儲かった日も代書屋の同じ顔」川柳といぅものは、なかなか面白いとこ
ろに目を付けるもんで、そぉ言われてみますと、この代書屋さんといぅ商売
は「今日は儲かった」といぅて、あまり嬉しそぉな顔をしてる人おません。
たいてぇ陰気な顔をして机にもたれて店番をしてる、てなもんで……

「こんちわ」
「はい」
「あのぉ、おたく代書屋はんでんなぁ?」
「へぇ、うちは代書屋ですが」
「あのぉ、あんたとこ、あれ書いとくなはるかなぁ? 紙の上に字ぃ書くやつ」
「うちゃ大抵、紙の上に字ぃ書きまんねん……、何です?」
「いえその、ジレキショとか、ギレキショとか言ぅのん」
「あぁ、履歴書ですか。へぇ書かしていただきま」
「書いとぉくなはるか、さよか。いえ、あんたとこ書いてくれなんだら、ど
ないしょ~かしらん思てたんでへぇ、その履歴書ちゅうのん持って来い言わ
れたんだ。家帰って嬶(かか)に言ぅたら「うちにそんなもんないで」こない
言ぃまんのんで「何やったら、隣り行て借りてこぉか」言ぅて、隣り行たん
だ」
「隣りの人がまた親切な人でな、家中探してくれたんだ。おまけに、仏壇の
引き出しまでひっくり返して探してくれたけどおまへん『確かこの終戦まで
はあった』とこない言ぃまんねん。ひょっとしたらもぉ空襲で焼けてもたか
も分からん……」
「よぉそんなアホなこと言ぅてるわ……、履歴書をあんた隣りへ借りに行く
人おますかい」
「へぇへぇ、そぉだんねんて。それで、人に聞ぃたらな『あんたがよぉ書かんねんやったら、代書屋へ行きなはれ。すぐに書いてくれる』言ぅて教えてくれはったんで、それで来ましてん。えらい済んまへん、ちょっと書いとくなはれ」
「あさよか、へぇ書かしていただきま、どぉぞそこへお掛けやす……。すると何ですか、今度はこのどこぞへ就職でもしなはんのでっか?」
「いや? そんなことせぇしまへんねや。ちょっとこの勤めに行きまんねん」
「それを就職と言ぃまんねん……」
「えぇ~ッと、まず最初は本籍やが、本籍は?」「あの、大阪の日本橋」
「なるほど、大阪市浪速区日本橋」
「三丁目」
「三丁目」
「二十六番地」
「二十六番地」
「風呂屋の向かい」
「そんなもん、どぉでもよろし。向かいが散髪屋でも風呂屋でもかめしまへん」
「それから現住所、いま住んでなはるとこ? あぁ、おんなじとこ右に同じ。それから、あんた戸主でっしゃろなぁ?」
「えッ?」
「あの、戸主でっしゃろ?」
「そんなあんた、人をおだてたらいかん」
「誰がおだててまんねん。いえ、あんたがそこの主人、大将ですかと聞ぃてま……、あぁ、大将。それやったらあんた戸主や、分からん人が出て来たなぁ……。それから名前は?」
「名前は河合浅治郎と、こない言ぃまんねや。ちょっとえぇ名前で」
「別にえぇ名前やない、河合浅……、あぁこの浅治郎のジといぅ字はツグといぅ字ですか? それともオサメルといぅ字ですか?」
「そらもぉ、あんたにお任せします」
「任したらいかん、あんたの名前やがな。それから、生年月日は?」
「生年月日は……、あれ確かなかったんだ」
「あんた無茶言ぅたらいかん。生年月日のない人がおますかいな。あんたの生まれた年月(としつき)を言ぃまんねん」
「そんなこと言ぅたらあんた歳が分かる」
「分かるて、分かるよぉにこれに載せまんねや、歳を言ぃなはれ」

「上方落語って・・・やる奴いる?」
「福祉大にいる。天理高校出の奴がいて・・枝雀が好きだというのが・・」
「でも、女の子でって・・」
「仙台にはいないよね」
「それにしても・・・」
彼女が高座に上がりますと、その小さな身体もさることながら、まず「大丈夫かや」と思うほどの様子なのです。
はっきり申し上げますれば、「女子中学生が大学落研にいて落語をする」そんな雰囲気があるのです。
ですが、一旦落語をはじめますれば、その噺の切れ味に驚くわけです。
「んだ!決まったべ!」
「あん好先輩なにっしゃ?」
「『噺家伝説』トップは彼女にすっぺ」
「『杜の家くるみ』さんでは・・」(東北大学落語研究会部員。この人かなり上手かった)
「ほたるの登場で、客席は驚くにちげぇねぇべ」
となりました。

見かけによらず、度胸もある彼女でした。
見事に大役を果たしております。

「新潟へ嫁に行きます」
教育大学を卒業後、彼女から来た手紙でした。
彼女の住む町は、「見附市」。
先の「新潟中越大震災」では、大きな被害もあったところです。
冬の大雪。そして地震。
宮城と並んで災害の多いところ。
その度に手紙をやりとりしておりました。
そして、一昨日。届きました一個の宅急便。

写真にございますように「魚沼産こしひかり」
予想もしていない贈り物に驚きました。
すかさず、電話をいたしました。
電話で声を聴くのも、もう何十年ぶりだったことでしょうか。
「ほたるちゃんすか?あん好だっちゃ」
「あん好先輩、久しぶりです」
「何だや、こげないいもの贈ってけて。ありがとうござりしたぁぁ」
「新米見てたら、先輩に食べていただこうかなぁって・・送りましたぁぁ」
「地震(新潟中越地震)からもうだいぶたってんけんど、米はだいぶ取れるようになんだすぺ?」
「そうなんですヨ。今年はようやく落ち着いて米農家が揃った感じでした」
地震で被害の大きかった「魚沼地区」。
今年は久しぶりに落ち着いて農業が出来た。そんな話でした。
「塩竈ご実家は?」
「まぁおらいは大丈夫。お袋も元気だっちゃ。んでも、宮教さぁ、いた女川の『みかこ』ちゃんは、今何じょしてんのか知ってるすか?」
「春に手紙が来て、立町小学校へ転勤したって(小学校の先生)聞きましたけど、実家の事(銀鮭の養殖業)を聞くに聞けなくて・・」
僕もこれ以上は聞けませんでした。
局地的な壊滅状態。十年間に二度の大地震。
三陸とは地形的にまったく異なっているとは言え、その被害の大きさは史上最大級のもの。
その中で米つくりが、元通りになったのは、だいぶ時間も過ぎてからでした。
その、喜びも伝わる贈り物です。
彼女の気持ちに深く感謝いたしました。

贈り物の「くだまき」が夏から三話となりました。
「ちー坊」からの「福島伊達の桃」
「ゴエモン様」からの「利府の梨」
そして、「ほたる」からの「魚沼産こしひかり」
夏から秋、冬の初めの、旬の味覚を堪能できる幸せに、ひたすら感謝でございます。

冒頭の写真は宮城教育大学キャンパス内で行われた落語会のものです。
昭和61年に事でした。
思えば、「夏家ほたる」のデビューでもありました。
デザインは、「アタック25」と「タイムショック」でいずれも「100万円」を手にしました、「ほうとく」君。
美術館のシルクスクリーンでの作成です。
「織姫は・・・『ほたる』をイメージしたんだ・・」
彼のコメントを思い出しました。
「娘ですかぁ。今、高校三年生です」
おい待てよ。二人が見附市内を並んで買い物?
「うーーん。親子なのか・・・姉妹なのかぁ?」
そんな事を思いました。

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2 コメント

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関西弁 (ひー )
2011-11-11 19:48:13
読んでいると、何気に関西弁になり読み方も関西弁風のアクセントになりました。
不思議なものですね。
やはり関西弁にはあのアクセントがぴったしなのかも知れませんね。
男性だって若い頃に落語に興味がある人はまれなはず、それが女子ともなればかなりの少なさになるのでしょう 。
とりわけ、東北人は関西弁にはアレルギー反応と言いますか、抵抗があります。
TVで聞く分は普通ですが、関西弁の人と会話をすると違和感がございます。
私だけなのかも知れませんがね。
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ひー様へ (酔漢です)
2011-11-28 08:39:52
コメント遅れました。申し訳ございません。
仙台では、上方落語を演じる学生は本当に少なくて、彼女の存在は、めずらしいものがありました。指導する方もいらっしゃらない状態ですから、自分で工夫しなくてはなりませんでした。
蔵王スキー場で、「関西弁」別にどうってことはないのですが。やはり、ひーさんと同じ、酔漢でございまひた。
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