循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

マニフェストに気をつけろ

2009年07月21日 | 廃棄物政策
◆役者が悪すぎた
「馬糞(ばふん)の川流れ」という下卑た警句がある。馬の尻から出たばかりの馬糞はそれなりに固まっているが、それを川へ放り込むと主成分は藁(ワラ)だからバラバラに崩れて跡形もなくなる。ひとつの組織が壊れるとき必ず持ち出される警句であり、ここ10日ほどの自民党のドタバタぶりはまさにそれである。
 過去、自民党は分裂騒ぎが起きるたび党内を引き締める求心力が働いた。新党をつくった連中をいつの間にか呼び戻すなど、却って組織力を強めてきたのである。
 しかし今回の「馬糞の川流れ」状況はもはやこの党には分裂する力もなくなったとしかいいようがない。
 結局麻生降ろしは失敗に終った。当たり前だ。女癖の悪さで地位を追われた中川秀直、加藤の乱でぶざまな涙を見せた加藤紘一、小泉というライオンの陰で威張りくさっていた武部勤の三人がリーダーである。何かことを起こすとき、最後にものをいうのはその人柄なのだ。
 だが今回の騒ぎをめぐる一連の経緯の中で明らかになったことがいくつかある。

◆メッキが剥がれた
 第一に「大物だ、黒幕だ」と畏怖されてきた男が、いざとなると拍子抜けするほど非力な人物だったこと。その典型が古賀誠だ。10年ほど前、福岡の宗像市と古賀市で大型焼却炉導入問題が起きたとき、地元ではこの男の存在が必要以上に大きく伝えられていた。
 悪名高き「ごみ処理広域化計画」によって宗像・古賀両市は近隣の町を含めて「玄海環境組合」を構成しており、計画に従えばその地域のどこかに大型焼却炉(又は溶融炉)を1ヶ所つくることになっていた。しかしメーカー選定で地域に内紛があり、そこへ介入したのが古賀誠だった。結局、宗像エリアは新日鉄、古賀エリアは三井造船で事態を収めたといわれる。実際に古賀誠がどこまで介入したかは不明だが、そんな噂が流れること自体、この男の大物感を漂わせるに十分だった。
ところが今回の件でメッキが剥がれた。ことの真相は自分自身の選挙が危ないからそのまんま東という看板に助勢を求めたということらしい。

◆凡庸な事務屋でも権力は怖い
第二に、普段はただのタイトルに過ぎない「役職」の二文字が、いざというとき絶大な権力を発揮する、当たり前といえば当たり前の怖さである。
 その存在感の薄さにマスコミも昼行灯などと揶揄してきた細田博之自民党幹事長が「麻生降ろしの署名をした者には公認を与えない」という意味のメッセージを発した瞬間、周囲は思わず震え上がったという。
 だが細田自身はたんたんと「幹事長という名の役職」を実務として執行したにすぎない。細田はそのあと、次のようにいい放った。「(署名運動の中心にいる人は)みんな肉食系ばかりですからね、私はご覧のとおり草食系ですよ、ウフフ」。
細田は眠っているような細い目で133名分といわれる署名を一つ一つ点検し、薄笑いしながら切り崩しを図っていたのである。
解散が本決まりになり、自民党の議員は署名どころの話ではなく、一斉に地元へ急いだという。その動きがそのまま民主党への追い風になっていると新聞は報じた。だが政治学者の土屋彰久氏は民主党に対し次のように警告する。
「民主党の人気は敵失を積み上げた結果であり、自分の力で得点したものではない。いざ政権奪取が近づくとメディアはまた民主党の政権担当能力を問題にする。国民の間に『本当に民主党政権で大丈夫か』という不安も出てくる。自民党が(民主党の弱点を)突くとしたらそこしかないから、民主党はマニフェストに気をつけることです」(日刊ゲンダイ7月20日号)。

◆まず過去の清算だ
 マニフェストについてはその性格と定義づけのあいまいさから多くの誤解やスリ替えが行われてきた。まだ政権を担った経験のない民主党に「政権担当能力が整っているのか」などのイヤミがぶつけられる。だがそんな用意が出来ている野党など、如何なる国にも存在しない。
 いま必要なのは料亭の献立のようなマニフェストではなく、政権政党として60年以上もこの国を支配してきた与党が「これまで何をしてきたのか」の実績表を出すことである。そして野党の側がそれを吟味し、その罪科を指摘することである。この国の戦後史を書けというのじゃない。とりあえずは小泉が登場してからの8年間の総括でいい。
 2001年4月26日に発足した小泉純一郎内閣の政治とそれがもたらしたこの国の歪みは予想以上に深刻だ。ざっとあげただけでも、福祉・医療の切り捨て、累進課税構造の変更による大企業優遇、中小零細企業への税制的圧迫、非正規社員の増加、明治以降、日本の社会と国民の生活を守ってきた郵政事業を解体し、その膨大な富を市場経済の渦中に放り投げたことなど、際限がない。
「実は郵政民営化に俺は反対だった」などと麻生太郎はアリバイづくりに懸命だが、政権与党として小泉政治をどう政策化し、実行に移してきたのか、いま自民党に求められているのはその総括と反省である。
 だが馬糞が川流れしようが、生き残るためには何でもアリの自民党だ。すでに読売が「農水のヤミ専従」問題で大特集を組んだ。あとの材料は鳩山献金問題だが、忙しい与党議員(旧)に代わって読売、産経、日経あたりがここを先途とあと40日、鵜の目鷹の目で「民主の弱み」を抉りまくることだろう。

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